【竹々しい】1日で1m【竹々しい】
結果から言うと、バンブートレントのタケノコは大豊作だった。獲れすぎたもんだからバンブートレントを主食としている、どすこいパンダがポップしてきたのは驚いた。本来のパンダに近い、可愛らしい見た目をしているが、そこはモンスター。
相撲の取組に挑む力士の様に怒涛の勢いで、ぶちかましや突っ張りなどを繰り出してくる。馴れていない冒険者の場合、その勢いに呑まれて叩きのめされてしまうことがよくある。
俺達も初見とは言え、以前斃した四つ腕熊に比べると普通に弱く、今回はオーロラが1人で引き受けてくれた。どすこいパンダの掌が届く前に指先ひとつで瞬間凍結。いやはや、タケノコ採りに来て肉まで手に入るなんて一石二鳥だな。
そんなこんなで大量に採れたタケノコの一部とバンブートレントのほとんどを冒険者組合に納品し、どすこいパンダを解体してもらった俺達はすぐに帰宅。荷物を降ろした後、用事のため手土産を持って巣守さんちにお邪魔させていただいていた。その用事というのは――
「で、沸騰したら落し蓋をして弱火で1時間くらいかしら?茹でたら火を止めて半日ほど置いたらアク抜きできるのよ。あっ、湯が足りなくなったら差し湯しなくちゃダメよ?」
「なるほどなるほど……勉強になります」
花子さんにタケノコのアク抜きの方法を教わる事だった。ネットに上がっている記事や、解説動画を見ても良かったのかもしれないが、やはり詳しい人に直接教わったほうが分かりやすいだろうと前日にお願いしてみたら快く引き受けてくれたのだ。
当然、タダという訳ではない。手土産は採れたて新鮮タケノコだし、ダンジョンで獲れた肉も渡している。お2人とも遠慮していたが、こういうのは大事だからね。ちゃんと受け取ってもらった。
「かんぱーい!ガハハ!」
「カンパーイ!アハハ!」
ちなみにオーロラは昭文さんと一杯やってもらっている。花子さんをお借りしている間、お互いに暇だろうしね。おつまみにと塩だれキャベツを提供。
「それにしても立派なタケノコねぇ。ジョーちゃん何作るつもりなの?」
「そりゃ思いつく限り作るつもりですけど、やっぱりアレは外せないですねぇ」
・
・
・
「そういう訳で今日の配信はタケノコメインなんだよね」
「ネー」
『挨拶抜きの開口一番でそういう訳言われましても困るというか』
『配信開始からの数秒でジョージ達の頭の中で回想流れてた?』
次の日の夜。いつものようにぬるっと始まりました、酒飲み配信。確かに昨日のことを思い返して挨拶をすっぽ抜かした気もするが、そんなことは些細な問題だ。視聴者達も困惑しているが、問題ですらない。
『タケノコってことはバンブートレント?』
「正解。昨日かってきました」
『買ってきましたじゃねぇよな。狩ってだよな、絶対』
『狩れれば実質タダだけどポーションとかの支出考えるとなぁ』
本来冒険者がバンブートレントを狩る時、人によるが大体は全身鎧に身を包んで挑むことが多い。ガッチガチに身を固めておけば仮に気配を察することに向いていない人でもバンブートレントの一撃を防ぐことが出来、その方向に攻撃を振るえばダメージを与えられるからな。タケノコは結構痛いが鎧を貫いて人体を貫通するほどではない。
ただ、全身鎧を揃える資金が無かったり、重装備を好まない故軽装で挑む人もいるが、そういう人は致命的な一撃を回避することは出来ても生傷が絶えないという。タケノコは受け止められないので、避けて障害物にぶつかったところを回収だっけ?ポーションの支出について書いた視聴者は恐らくそれに分類するのだろう。
『ジョージはどうやって狩ったん?』
「気配避け&気配斬り」
『タケノコは?』
「こうペシンと」
『そっか』
『そうなんだ』
『すごいね』
『リアクション薄くて草』
『いずれお前もこうなるんだよ』
『怖い』
「怖」
『おめぇが元凶なんだよ!』
そう言われましても。俺は端的にバンブートレントの狩った方法を説明しただけであってだな……
まぁバンブートレントについてはもういいでしょう。今日のメインはタケノコなんだよ、いつまでも竹のことばっかり構ってられるか!
「えーっと、今日の料理はこちらから。タケノコの刺身にバター醤油焼き、自家製メンマにたけのこご飯に若竹煮、丸ごとホイル焼きに青椒肉絲となっております」
『その結構なデカさの塊、丸ごと焼いてたのか……』
「頑張りました」
そう、机の上に並べられた料理たちの中でひときわ異彩を放っていたのが、煤で黒ずんだアルミホイルで固められた物体だった。中身はもちろんタケノコで、オーブントースターとかではなく庭で焚き火を起こして、じっくりと焼いた。折角なんでマシュマロを焼きながら出来上がるのを待っていたが意外と楽しかったなぁ。
『相変わらず料理に対するモチベが高いなこのエルフ』
『ひいては酒を美味しく飲むためになるからな』
『ところでジョージはきのこ派?たけのこ派?』
『あっ』
『おい馬鹿やめろ戦争を起こす気か』
おっと、皆が料理に対してコメントしている間、空気を読まない誰かが火種を投下し始めた。おいおい、折角和やかな雰囲気のこの配信に何をしてくれているんだ。まぁ、タケノコを出す以上、一種の様式美なのかもしれないが――おぉおぉ、段々熱を帯びてきたなぁ。アカンアカン、ここは配信主として場を収めなきゃ!
「ほらほら、みんな落ち着きなさいよ。きのこもたけのこも美味しい、それでいいじゃないか!オーロラもどっちも好きだよな?」
「ウン!」
「それに喧嘩すると酒が不味くなるからな!ちょっといじり合うのはまだいいが、それも過ぎると拳になっちゃうからその辺でな!」
『すまんやで』
『ウィッス、反省します』
うんうん、だいぶコメント欄の勢いも収まってきたな。ここいらで乾杯と行こうじゃないか。
今日の酒は日本酒から。"魔女の一撃"ではないが、十分に美味しい物を枡になみなみと注いで――オーロラと共に乾杯の音頭をとる。
「「乾杯!!」」
「まぁ俺キノコ派なんだけどね」




