亜人2人の変化
久しぶりに相まみえた須藤さん、すごい特徴的な帽子を被ってきた。いや、ファッションと言えばそれまでだが……Vtuberとしてではない須藤さんにしては珍しいチョイスと思わざるを得ない。もしかして、その帽子の下……何かあったりする?
というか、須藤さん自身も俺の方をジッと見つめてはアッと何かを思いついたような顔をした。恐らく、彼女もなんとなしに行き着いたのだろう。須藤さんは、万が一のためだろう扉の方を振り返って誰もいないことを確認してから、被っていた帽子を脱いだ。その下にあったものとは――
「Oh……立派な角で……」
「木原さんもその……さらにお美しくなられて……?」
互いに互いの変わったところを褒め合うが、ぶっちゃけ俺だけじゃなくて須藤さんも複雑だろう。
そう、須藤さんの頭には立派な角が生えていた。角自体は須藤さんがドラゴニュートになってから初めて会った時点で生えていた。しかし、その時はあくまでも髪の中に隠れた突起物な様なもので大して目立ってはいなかった。それが今ではどうだろう。しっかりと髪から2本の角が見えてしまっているではないか。形状としては鹿の角に近いが……蒼いのね。
「いやぁ、須藤くんも大した変貌っぷりだ!その角は触っても問題ないのかい?」
「は、はい。感覚はありますが触った程度では痛みは感じません」
「ふむ、それでは失礼して」
その運動して無さそうな見た目からは想像もつかないほどの反射力とスピードでずずいと須藤さんに迫った粒源先生は本人から許可をもぎ取り、彼女の頭の角をまるでガラス製品を扱うかのように触れ始める。この空間でただ一人の普通の人間なのに一番アグレッシブだな、あの人。
おっと、カバンの中に隠れていたオーロラが顔を覗かせて須藤さんを視認した。
「スドウだ!スゴイことになってる!」
「わ、オーロラさんお久しぶりです」
「ワタシも触ってもイイ?」
「えぇ、どうぞ」
あぁ、オーロラも須藤さんの角の魔力に惹かれてしまったか……俺?そりゃ触りたい気持ちがないとは言わんが、元男的になぁ……みだりに触るのも宜しくないだろうし。いや、粒源先生は節操なしだから。
「なるほどなるほど、一見宝石な様にも見えるが温度は確かに感じるな。体温よりは……少し高いくらいかい?世間一般に動物の角とは武器としての役割が大きいが須藤くんの角は武器として用いるにはあまりに短い……」
おぉ、知的好奇心全開の表情から一気に研究者然とした顔つきになったかと思えばつらつらと語り始めた。確かに角って武器として使われがちだよな。戸中山ダンジョンにポップする"木々鹿"も角を滅茶苦茶に振り回して身を守る。普通の鹿の角よりも折れやすいが鋭利で尚且つ折れてもすぐに――本当にものの数秒で生えてくるからドツボに嵌れば厄介なモンスターだったりする。俺はもう慣れてるけど。
「となると、体に出来たブレスを吐くための内臓と一緒で何かしらの力を行使するための器官と捉えるのが正しいかねぇ。うーむ、困った。ドラゴンにはあんまり知見がないんだけどねぇ……候補としてはセンサー、避雷針、別のブレスを吐くため……同族と交信するというのもありかねぇ。須藤くんは何か出来ることが増えたというのはないかい?」
「あ、いきなり話振るんですね。えぇと、私の方はさっぱり――あの方も……あ」
「あ」
「ア」
「あ?」
須藤さんが漏らした"あの方"と言う単語。慌てて口を塞いだようだが、時すでに遅し。俺が反応しちゃって粒源先生が首を傾げてオーロラも声出しちゃった。さて、そんな俺達の反応を見た粒源先生は――
「ふむ、少し話しづらいことのようだねぇ。私は部屋から出ているから存分に話すと良い。あぁ、部屋内からノックでもしてくれれば戻るからねぇ」
と言って軽い足取りで部屋から出ていった。……嘘、話が早すぎる……だとっ!?もうちょっと追及するものかと思ったのだが、何かしら察したのだろうか。なんにしても助かるからいいんだけども。
とりあえず、部屋の中にあった椅子にそれぞれ対面するように座り俺から話を始める。
「単刀直入に聞くけど……それ、ヤマダが関係してる?」
「そう、ですね。関係してますね……ちなみに木原さんは?」
「俺はその……うん、話すわ」
みだりに人に話すべきではないというのは分かってはいるのだが、やっぱり少しは吐き出したい。人間だもの、エルフだけど。まぁ須藤さんは同じ亜人仲間だしね、苦労を共有する仲として是非とも聞いてもらわねば!
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「え、嘘ユグドラシル?あのユグドラシルなんですか?世界を体現する巨大な樹?宇宙樹とも呼ばれる世界で一番有名なファンタジーな木食べたんですか?」
「いや、食材としてお土産に持たされたものだし……!ってか須藤さんだって、ヤマダに言われてドラゴン討伐して調理して、ヤマダに貰った"八塩折の酒"で晩酌したって――」
「それが原因じゃないですか!」
「それが原因じゃん!」




