まさか仕込んだ……!?
突然気になることを言い出したオーロラ。焦った様子が微塵も見られないことから、本当に命がかかわるような何かが起こっているわけでは無さそうだが……気になるな。しかし、こういう時のオーロラを追及しても決して話そうとしないから大人しくユグドラシル料理に向き合おうじゃないか。……鏡を見るのは?あ、駄目すか。
次の料理は新芽の天ぷらと若枝、大小の葉、根っこ、を刻んで揚げたかき揚げだ。てんぷら粉特有の黄金色の衣を纏った具材たちは、まさに宝石のようだ。箸をつけるのに少し時間が経っているのにも関わらず、湯気はまだ立ち昇っていてその香りは食欲をそそる。
「おぉ、食感が軽い軽い」
「デモ、満足感スゴいね!」
かき揚げはいくつもの具材が積み重なっているはずなのに、歯を通すのに一切の抵抗を感じられなかった。さながら、何層も重ねた極薄ポテトチップスを一気に食べているような感じだ。しかもそれでいて味はしっかりと感じられる。そのままでも十分美味いが、具材の味をさらに引き締める塩も、さっぱりとさせてくれるめんつゆも抜群に合う。
新芽の天ぷらも、かき揚げに負けていない。いや、かき揚げがドリームチームなのに対して新芽は単独でそれに並び立っているのだから相当だ。まず食感だが、かき揚げと違って柔らかく歯触りが心地いいくらいだ。味はほんのりとした苦味があるが、それだけじゃなく甘みも感じられる。嗚呼、これは炭酸割りが合いますわ……
さて、お次のエントリーは――おにぎりだ。おっと、シンプルなおにぎりを作ったわけじゃ無いぞ?これももちろん、ユグドラシルの素材を使っている。さっき食べたきんぴらユグ根っこを混ぜたものと、高菜巻きおにぎりよろしく浅漬けした大きい葉でおにぎりを巻いたユグ巻きおにぎりだ。ちなみに具材は刻んだ浅漬け。本来なら浅漬けじゃなくしっかりと漬けた方が美味しいのだろうが、食べたかったからね。
「アンシンする味~」
「そうだなぁ、箸休めや〆に持って来いだな。朝食にもいいな……味噌汁と一緒に食べてもいいな」
あっさりとした味わいは、オーロラが言うようにどこか安心感を与えてくれる。これは食欲のない朝でも食べられそうな味だ。まぁ最近は食欲が失せるなんてことは滅多にないが。
きんぴらユグ根っこ混ぜおにぎりも甘辛い味付けと白米がマッチして何とも言えない。今日はもう台所に立つつもりはないが、ごま油を引いて焼きおにぎりしても美味いかもな。
続いては鮭のムニエル。このムニエルでのユグドラシル素材は、メインではなく調味料として用いている。葉っぱをオリーブオイルと塩と一緒にミキサーにかけることでペースト状にする。それをムニエルに掛けて食べようという魂胆だ。
「うわ、合うなぁコレ」
「トウフにのせてもいいかも!」
結果として、ユグドラシルペーストはムニエルにものすごく合った。比較的ムニエルは濃い味付けをしているのだが、ペーストと一緒に食べることでそれが全くと言っていい程気にならなくなった。ただ、オーロラの言うように、主張の少ない豆腐と一緒に食べてもコイツは力を発揮するだろうな。
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「ふぅ、食った食った」
「オイシかったね!」
満足感に口角が上がるのを感じながら俺はお腹を擦り、オーロラも名残惜しそうに既に空となった皿を眺めながらそう言った。
確かに目の前の料理は無くなってしまったが……食事が終了した訳ではない。そうオーロラに対して告げると俺は席から立ちあがってキッチンに向かい冷蔵庫に入っていた、ある物を取り出して俺の席とオーロラの席にそれを置いた。そのある物とは――!
「ナニコレ?」
「ユグドラシルの果実を半分に切ったものに砂糖をかけたものです」
皿の上に置かれているのは、オーロラに説明したそのまんまでユグドラシルからもらった透明の果実を包丁で半分に切ったものだ。透明な皮をした果実の断面は透明ではなく、真っ白な果肉だけが詰まっていた。そう、果肉だけ。本来果実にあるはずの種子は見当たらなったのだ。まぁ食う分には良いかということで砂糖を振りかけて今お出しした訳だが、実はこれまだ完成していないのだ。
「オーロラシェフ、これを断面目掛けて火魔法で炙ってもらえるかな?」
「アブる?ダイジョウブなの?」
「多分」
「エェー……マァいいけど」
困惑しながらもオーロラは人差し指を俺の皿の果実に向けてその先からバーナーの如く火魔法を発動させる。するとどうだろう。香ばしくも甘い匂いを立てながら、表面の砂糖が熱で溶けてカラメル化していく。ここら辺でオーロラも俺の意図に気付いたようで断面全体を満遍なく炙ってくれた。
「デキタ!」
「おー、完璧。流石オーロラシェフ」
「フフン!ジャア自分のもやる!」
ってな訳でオーロラの分も炙り終えて――ユグドラシルのブリュレの完成だ。デザートスプーンでいただこう。スプーンをカラメル部分に当てて少し力を加えると、パキっと小さな音を立ててカラメルにひびが入る。水たまりに氷が張ったのを踏みつける楽しさを少し思い出しながらもスプーンを果肉へと沈めていく。そうして掬い上げた果肉は雪のようだ。……ではいただきます。
「おー、嫌じゃない甘じょっぱさだ」
「お布団の中でタベタイ!」
オーロラの感想はなんだそれは。あれか?病気の時に食べたい的なやつか?まぁ……確かに?言わんとしていることは分かる。しかし、あれだけ食べた後の筈なのにスイスイと食べられちゃうなこれ。もう食べきっちゃったよ。そしてこれをもって、ユグドラシルからもらった食材は全て食べきったこととなる。(まぁ浅漬けとかきんぴらは一部残してるけど)今度会った時、ユグドラシルにはちゃんと礼を言っておかないとな。こんだけ美味い物を貰ったんだから相応のもので返礼すべきだよな……おっと、忘れてた。
「それでオーロラ。俺に何が起こってるんだ?」
「ンー、説明するより鏡見た方がいいカモ」
「鏡?――いや、鏡じゃなくてもインカメラがあるか……んん!?」
早速カメラアプリを起動し、インカメラモードにする。そうすれば鏡を見ずとも自分の顔が見れる。そこにはエルフの自分の顔が――あれ?おかしいな?何か毎日見ているはずの俺の顔の筈なのに色々違わない?
いや、全体的な顔の構造は変わってないんだよ。男に戻っているとかじゃないんだが……おかしいよな。俺の耳、ちょっと伸びてない?俺の髪、なんか発光してない?なんか俺の目……光ってない?
え、目からビームとか出るの?
没案
①幼女化→属性盛り過ぎだろ
②見た目ユグドラシル化→人類ユグドラシル化計画!?
③髪ツートンカラー化→何か違う
④男に戻る→作品が終わるぅ!




