お祭りグルメってワクワクするよね
「アッハハ!流石木原さん!あのおじさんの顔見た?鳩が豆鉄砲を食ったようってああいうのを言うんだね」
「すごい顔ではあったな」
翠ちゃんは先程の射的の店主の顔を思い出したのか、楽しそうに笑う。俺も釣られて笑ってしまったではないか。
射的にて獲得した菓子類をオーロラに提供するべく、巾着袋に仕舞っていく。この巾着袋も汚して構わないと花子さんは言っていたが、中で食べるならラムネ類とか出来るだけ汚れないようにしてね……?オーロラの事だから分かってくれているとは思うけど。
「でも、木原さん。木原さんならそのパワーでゲーム機とか獲れたんじゃないの?」
「無理無理。どこに狙えばいいかってのは分かるけど、銃ってその人の力で打つわけじゃ無いからな。弓の的当てってんならワンチャンあったかも知れんけど、土台無理な話だ」
あの高額景品たちなぁ、間違いなく細工されていた。あのコルク銃じゃどこを狙っても精々ずらすのが関の山。店主がずらされたものを直す前に連続で打ち込めば可能性が無いわけではないが、それをするには弾が足りないし、倒した後に無効と言われちゃ意味が無い。後目立つ。
それなら他のお菓子やら狙った方が建設的と言えるだろう。――子供の時だったら楽しかったで終わるけど、大人になったら損したと思っちゃうのは悲しいなぁ……
「次はどうする?何か食べる?」
「そうだな、そうしよう。――お、たこ焼き見っけ」
流石お祭り定番ともいえるたこ焼きだ。少し辺りを見渡しただけですぐに見つかった。小規模な列が出来ているがこれくらいなら問題ないだろうと翠ちゃんと一緒に並ぶ。ちなみにオーロラはと言うと、たこ焼きでいいか伺いを立てたところ、巾着袋の口の所から腕が出てきてサムズアップしてきた。
さて、たこ焼きは無事に買えたが食べる前にもう1つ買わなければいけないものがある。そう、酒である。そして暑い祭りの中、飲む酒と言えばビールですよね。たこ焼きの屋台に置いてなかったのは残念だったが、すぐ近くにドリンクを取り扱う屋台があったので、そっちで購入した。次は食べる場所だが……
「あ、木原さんアレも良くない!?」
「良すぎるな。買おう」
やはり祭りはいけないな、誘惑が多すぎる。
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「ここまで来れば大丈夫か?」
「ジョージさん、そんな追手から撒くみたいな」
俺達が食事に選んだ場所は祭り会場から数分ほど離れた所にある、以前オーロラの進化祝いに居酒屋に行った際に萩原さんと待ち合わせをしたあの公園だ。更に人目につくことを危惧して、半球にいくつもの穴が開いており、その中に入れる正式名称を知らないあの遊具の中に入って食べることにした。流石に暗いので、スマホのライトで周りは照らしてある。
こういった場所で食べることを見越して用意したレジャーシートの上に、屋台で買った料理を並べて彼女を呼ぶ。
「さ、オーロラ。出てきていいぞ」
「ハァイ!」
巾着袋の口を広げると、オーロラが待ってましたと言わんばかりに勢いよく飛び出る。巾着袋は疲れるのではないかと思っていたが、案外平気でよかった。
「ジョージ何買ったの?」
「タコ焼きにフランクフルトに焼きそばにトルネードポテトにはしまきにイカ焼きに焼きとうもろこしにピザだな。勿論ビールも。」
「大分買ったよね、ジョージさん。まぁあの配信を見ている身からすると、少ない方だよね?」
「勿論。余裕だよな?」
「ウン!お釣りが来るくらいダゼ!」
「ちょっと使い方違うなぁ」
それでは3人揃って両手を合わせて食事の挨拶をして、各々好きな料理に取り掛かる。俺が最初に手を付けたのはフランクフルトだ。フランクフルト自体はそこらの業務用スーパーに売っている物だろうが、これのミソは焼き方にある。鉄板で焼いているのではなく、炭火で焼いているのだ。それだけなのだが、普通で焼いたよりも何倍も美味くなるのだから炭火というのは偉大だ。
そしてこれがビールに合う!残念ながら、手に持つ関係で1人1カップずつしかないので一気飲みは出来ないが、グイっとのどを潤す。
「っああ゛ッ!美味いっ!」
「おぉ、本物のジョージさんの飲みっぷりだ……」
「やめて気恥ずかしい」
ただ酒飲んでいるだけだから!そんないいもんじゃないから!そんな翠ちゃんのキラキラとした視線から逃れるように次の料理に……オーロラさん?
「何してんの?」
「タコ焼き、ケッコウ熱かったから冷ましてるの」
せっせと箸でたこ焼きを小さく切り分けているオーロラがそこにいた。切り分けられたことで、中に入っていたタコがゴロンと出てきた。作っている光景を見ていたが、やっぱり買った店のタコ大きいな。切り分けたことで多少は温度が下がったであろうタコ焼きに、オーロラは追い打ちとばかりに息を吹きかける。魔法使えばいいんじゃねと言ってはいけない。可愛いからいいじゃないですか。翠ちゃん、写真はNGですよ。
「ハフッハッフ……オイシ!」
「そりゃよかった」
別に苦労はしていないが、オーロラが喜んでくれたのなら並んだ甲斐があったと言うものだ。うむ、このはしまきも中々イケる。俺的にはもう少しマヨネーズが欲しいところではあるが、中に入っているキャベツが熱でいい具合にしなしなになって、噛む度にキャベツの甘みが出て美味い。
そうして、買ってきた料理の内、半分ほどが俺達の腹の中に納まったところで、オーロラが浴衣の袖を引っ張ってきた。何やら欲しいものがあるらしい。
「欲しいもの?」
「キンギョ飼いたい!」




