剣王イカと切り結ぶ
「ギュワッ!」
「っとぉ!」
頭上から剣王イカが2本――じゃねぇか。2匹の真剣先イカを振り下ろし、更に挟み込むように左右からも真剣先イカを横払いしてくる。俺はまず跳躍することで左右から迫る攻撃を避け頭上の2匹のイカは吽形で払い除ける。オイ、なんで金属と軟体動物がぶつかった音が「キンッ」なんだよ。
「アレ?ジョージ、"矢"は使わないの?」
「危なくなったら使うさ。武器は潤沢にあるし、ヤドリギの矢ばかり頼りにしちゃヤマダクラスが出てきた時に下手をこきそうだからな」
ふわっと地面に着地した俺に近づいてきたオーロラの言った通り、俺は今必殺の一撃を放つことのできるヤドリギの矢を構えていない。ヤマダの一件から壊れたのではないかと危惧したが、東荒ダンジョンから帰った後の戸中山ダンジョンや今いる相模浜ダンジョンでも問題なく使用できた。疲れやすくなったとかも無かったので、あの時ヤマダに向けて放つことが出来なかったのは単純に俺が支払える代償ではヤマダを討ち取ることは出来なかったのだろう。
正直、あの時は矢を撃てなかったことで少なくない衝撃が走り、次の攻撃手段に移すことができなかった。――まぁ、結果下手に攻撃をしていたら死んでたかもしれないんだが。そう考えるとあの時のヤドリギの矢の不発は矢からの警鐘だったのか?
そうした反省からまずはヤドリギの矢には頼らずそれ以外の武器で剣王イカに挑むことにした。硨磲の盾は……止めておこう。防御力はピカ一だけど結構視界を阻むからな、アレ。
で、オーロラなんだが、出来れば今回は1人で戦いたい。でもオーロラも何かしらをしていたいだろうし。そう思ったところで視界にあるものが映った。それは剣王イカの後ろでこちらをジッと見ながら泳いでいる真剣先イカが群れを成していた。なるほど、武器の貯蔵は十分って訳か。
「オーロラ、あの後ろで泳いでる奴等を相手してくれるか?」
「オッケー!マカセテ!」
俺の頼みにビシィッと効果音が出そうなほど勢いよく親指を立てたオーロラはさっさと真剣先イカの群れへ飛んでった。聞くところによると剣王イカのような使い手がいれば、途端にその身を鉄の硬度と変え、相応に厄介な真剣先イカだが、それがいなければ少し硬く突撃するくらいしか能がないイカとなる。その程度であればオーロラ1人でも余裕のよっちゃんだろう。
さて、大切な武器たちに襲い掛からんとするのを剣王イカが許す道理はない。オーロラを止めようと触手を伸ばそうとするが、それは俺が許さない。こちらに意識を向けるべく、剣王イカの眼前向けて大きく跳躍し、両手で吽形を握り締め、振り下ろす。これで決まっても良かったのだが、そこは剣王と頭に付くだけあり、触手を総動員させ、受け止めんとする。
「ッラァ!」
気合の一声を上げて力を籠めるが……奴の体までは届きはしなかったか。6匹の真剣先イカの胴を折ることは出来た。胴を折られた真剣先イカは硬度を失い、締めたわけでも無いのに、まるで絞められたかのように力を失い、剣王イカの触手から離れ海底に落ちていった。
奴の力を削いだことに喜びたいところだが、まだ武器は5本ある。勢いを失った俺に四方からの攻撃が迫るが、体を捻り回避することに成功。そのまま着地し、一度距離を取る。
うーん、我ながらよく動けているな。ヤドリギの矢に頼らずとも、ソロでここまでボスモンスターに善戦すれば十分だろう。いや、善戦なんてものじゃないな。このまま完勝できるか?
俺が距離を取ったことで剣王イカ自身も体勢を取り直す必要があると思ったのだろう、空いてしまった触手を振るい次なる武器を求め、鳴き声を上げ、子分である真剣先イカを呼び込もうとするが、しかし だれもこなかった。その代わりに返ってきたのは別の声だった。
「ジョージー!終わったよー!」
「おー、お疲れー!」
その声の主というのは勿論オーロラだ。流石というべきか、彼女は真剣先イカを余すことなく凍らせて身動きが取れないようにしていたのだ。しかも、まとめて1つの塊として凍らせるのではなく、器用にも1匹ずつ丁寧に凍らせていた。確かにその方が力を消費はしなくて済むだろうが……よくやるよ。
さて、残念ながら王のもとに駆け付ける武器もとい兵士はいなくなったということになる。正確に言うとあと5匹は残っているが大した障害ではない。地を蹴り奴に迫る。剣王イカは残った5匹の剣で立ち向かおうとするが、僅か数振りで残った剣も使い物にならなくなってしまった。
最後は何も持っていない触手を鞭のようにしならせ、攻撃してきたが――吽形によって簡単に斬れてしまった。そしてそのまま両目の間に吽形を刺し貫かせ、剣王イカのその身は白く染まった。ピクリとも動かなくなった剣王イカを真剣先イカ同様オーロラに氷漬けにしてもらい、今日は撤収した。グフフ、配信が楽しみじゃ。




