かくかくしかじかあったって訳よ
「お話聞かせてくれるんですよね?」
「勿論。あ、これお土産」
「わざわざありがとうございます」
「ツマラナイモノですが」
「え、オーロラちゃん自ら!?」
ここは戸中山ダンジョンの隠しエリア。謎の古風な口調の視聴者について、須藤さんはLineとか電話ではなく、直接会って話したいとのことだったので、隠しエリアに来ている。ここなら俺かオーロラに認められた者しか入れないし、内緒話にはピッタリだ。強いて欠点を上げるならば冒険者じゃないと来れないことか。
隠しエリアに入って早々、須藤さんにお土産を渡しているが、これに関しては別に戸中山ダンジョンじゃなくても良かったとは思う。まぁでもここじゃないとオーロラも直接手渡せないし?ちなみにオーロラは自費(俺からのお小遣い)で親しい人へのお土産を買っていた。なお、購入自体をしたのは俺だ。
「わ、吟嶺にスイートポテト饅頭?ありがとうございます、大事にいただきます!」
――良かった。内心冷や汗ダラダラだった俺は人知れず安堵のため息をついたスイートポテト饅頭はオーロラのチョイスのため甘味は避けた方がいいと思い、須藤さんも酒を嗜むことを思いだして酒を選んでみたのだが、家に帰ってから気付いた。これ、女性への贈り物的にいいのか?と。まぁ実際には杞憂だったようで、須藤さんは嬉しそうに受け取ってくれた。
さて、お話ということで突っ立ったままというのはいただけない。Aカードから机と椅子を取り出して、キンキンに冷えた酒――は、止めて玄米茶をコップに注いでお茶請けに筒に入ったポテトチップスと出す。座るように促し、互いに玄米茶で喉を潤しお話が始まる。
「それで、私の配信に現れましたユーザー名"才口千"なんですけれど。あっ、才口千って書いてさぐちって私は読んでます。声に出したのは初めてなんですけど」
「あいつ、そんな名前で登録したのか……」
なんというか、隠す気があるのかないのか分からないネーミングだな。いや、譲二をジョージとして配信者名にしている俺が言えた義理ではないが。そういえばこの鶏皮にんにくの時の配信にもそんな名前の奴がいたような……気のせいか?
しかし、そんな名前で古風なコメントなら十中八九ヤマダで間違いないだろう。
「才口千ってのは俺が東荒ダンジョンで出会った……なんだろう、超常的な存在」
「え、超常的って?」
「まずは俺が冒険者組合から依頼を受けた所から話をすると――」
そんな出だしで俺は今回の経緯を話し始める。ダンジョン調査の依頼を受け、ホテルに泊まって、東荒ダンジョンに潜って、なんかすごい奴がいるかもしれないとオーロラが気づいて、翌日それを調査してたら酒蒸しにできそうな目玉を見つけて、追いかけたらなんかヤバそうな女に会って、それがヤマダを名乗って、腹減ったからと料理することになって、ビア缶チキン食べさせて、巫女の話になって、ドラゴニュートが巫女と聞いて、曙りゅーたんを教えて、ヤマダはV沼にハマって、隠しエリアに俺の家再現して、今は暇さえあれば曙りゅーたん過去配信を見ている――こんな感じかな。勿論、こんな大雑把なものではなく、出来るだけ詳細に話している。
「って訳」
「なるほど」
「オイシイオイシイ」
話し終えた後の須藤さんはと言うと、思った以上に冷静だった。少なくともドラゴニュートになった時よりもずっと落ち着いていた。それよりもオーロラさん、あなた話していないからってポテチに掛かりきりにならないでもらえます?俺だって食べたいんだから。
「私が見たあの夢は、そのヤマダ様?さん?からのメッセージみたいなものだったんですね」
「かもしれないな。名前で契約したり隠しエリアに人の記憶から住居をコピーできるんだ、それくらい容易い事なんだろう」
「それに実はあの夢見た後、ダンジョンに行くことがあって、Aカードを更新したんですよ。そうしたらスキルの所に【巫女】だなんてものがありまして」
「マジか」
エルフになったことで【エルフ】というスキルを得た俺同様に、須藤さんも【ドラゴニュート】というスキルを得てはいたらしいが、まさかさらにスキルを取得していたとは。須藤さんの資質によるものか、はたまたドラゴニュートの信仰の対象?であるヤマダが目覚めたからこその出現なのか、もしかしたらヤマダなら何かわかるのかもな。
「ま、そんなこんなで結果須藤さんもとい曙りゅーたんは強力な後ろ盾を得たということになるね。やったね!」
「ヤッタネ!」
「後ろ盾強力過ぎません?守るどころか自立式固定砲台になりません?」
「ヤマダ的にはどちらかというとイージスの盾かな?」
「上手い事言ってるんじゃないですよ」
「でもあの熱狂ぶりなら本当に守りそうだもんな。それも俺のように対価も求めずに」
「というか私が敬うべき人?にファンになられるの結構困るんですけど」
うん、それはもうその通りだろう。だが、相手はそういうの全く気にしないと思うし言ってもどこ吹く風だろう。そういう手合だ。隠しエリアなら他に見られることは無いからと服から出した尻尾をピロピロと揺らしながらお茶を飲む須藤さんに俺はこう言葉をかけた。
「頑張って。俺じゃどうにもならない」
「ファイト!」
「ファイトれないです!」
「多分、そう遠くない未来、コンタクトとってくると思うから」
「えっ、ちょっとそれどういうことですか!?」
「ほら、そろそろ帰らなきゃ。俺、秘蔵の酒に合う料理考えなきゃだから」
「待って!考えるのお手伝いしますから!そうだ、夏ですから逆張りでクーラーガンガンに利いた部屋で辛い鍋とかどうですかね!」
おっいいじゃん。




