【にんにくの味は】帰ってきた実写配信【罪の味】
「ジョージの酒飲みチャンネルの時間だあああああああああああ!!」
「ィヨッシャアアアア!!」
『テンション高くて草』
『おかしい……ラジオ配信があったはずなのに久々な気がする』
『分かる2か月見てない気がする』
無事、東荒ダンジョンから自宅へと戻った俺達は早速配信を始めた――訳ではない。ホテル並びに帰路につく車中では疲れは感じていなかったはずなのだが、愛する我が家に到着した途端、どっと疲れが襲ってきた。動けないほどではないが、配信をするほどの元気はない。というかそもそも、帰宅して最初に配信に使おうと思っていた素材は明日到着予定なので、帰宅した当日は、親分マンドラゴラに挨拶して即寝た。
翌日、ぐっすり寝たことで体力を8割方回復した俺達は、まず畑の世話をしてくれた巣守老夫婦にお土産を持って御礼と帰宅の挨拶。育てている野菜について聞かれたが、ダンジョンで見つけた蕪みたいなものを実験的に育てているとはぐらかしておいた。自分で言っておいて実験している最中に遠出するなよとは思ったが、納得してくれたのでとりあえず一安心。
その後は戸中山ダンジョンに赴き、武道さんや友風さん並びにお世話になっている職員の方々にお土産を渡して東荒ダンジョンにて狩りまくった素材を回収した。武道さんには「色々難儀やったみたいやな」と肩をポンポンと叩かれ、しみじみとそう言われた。もはやもうヤマダのこと周知されてる?
あ、ヤマダについてだが、滅茶苦茶当事者である須藤さんには「少しコアなファン出来たから頑張って」ととりあえずメッセージを送ってきた。案の定「どうゆうことですか!?昨日から妙に古めかしいコメントの人いるんですけどなんか関係あります!?」という返信が来たので、「後日話すね^^」と返しておいた。すまん、許せ。
そして現在に至る。あぁ、やはり自宅での配信はいい。何にも縛られず自由に配信できることのなんと素晴らしい事か。ラジオ配信も悪くは無かったが、やはりこう……美味そうな料理を映像でみんなと共有して酒を飲むというのは楽しい。それが久々ってんならテンションが上がるのも仕方のない事だろう。オーロラも俺と一緒に大声を上げて楽しそうだ。
『卓上コンロ?』
『その上はスキレットか』
『なんかグツグツしとるな』
「ふふふ、気づいてしまったか。まぁその角度じゃ見えにくいよね。ほら、これで見えるか?」
『なにこれ鶏皮?』
『にんにくデッカ!』
『このにんにくまさかハラペーリックプラントか?それっぽい輪切りもあるし!』
配信画面を見てみると、視聴者視点ではどうにもスキレットの中身まではよく見えていない様子だったので角度を少しずらしてやると一気にコメントが加速した。流石に鶏皮がコカトリスとまでは分からないようだが、早い段階で気付かれた。まぁ、明らかに普通のにんにく一欠けらのサイズじゃないもんな。加えてほんのり赤みかがってるし。
「今日の肴一品目は鶏皮にんにくだ!ちなみににんにくと唐辛子っぽいのはお察しの通りハラペーリックプラントだ。鶏皮はコカトリス!」
『はぇーコカトリス』
『すごい量のにんにくだけど、ジョージ明日は人に会わないつもりだな?』
「そうだな、明日は家でゆっくりだ」
「ニートにナルよ!」
『やめてオーロラちゃん、仕事している人が家にいることは休むであってニートじゃないんだ』
『何気ないオーロラちゃんの一言が俺達を傷つけた』
『おかしいな、煙に含まれる唐辛子の成分で目が染みてるのかな。涙が出てくらぁ』
映像だから煙で目が染みるなんて無いと思うのだが、ここは触れないでおこう。
さて、鶏皮にんにくだが、火が通るまで少し時間がかかることから配信の少し前から調理自体は始めていた。と言っても難しい工程なんてものは無く、ハラペーリックプラントのにんにくの皮を剥いて唐辛子の細いところを輪切りにして、小分けにしたコカトリスの鶏皮と共にスキレットにぶち込んで火にかけるだけだ。この料理の素晴らしいところは鶏皮から勝手に油が出てくるので植物油を入れる必要もないし、なんならこの油ににんにくや唐辛子の辛味が染み出て色んな料理に使うことが出来るのだ。欠点はにんにくということだ。つまりはそう言うことだ。
「さて、そろそろいい具合だな。オーロラは……直接スキレットから取ろうとすると油が飛び跳ねて火傷しかねないから取り分けるな」
「アリガト!」
軽くスパイスを振り、ひょいひょいと鶏皮とにんにくをオーロラ用の小皿によそう。盛ってて思うが、にんにくはオーロラには少し大きいかな。皿に置くことで程よく冷めるだろうし、そこはオーロラ自身に調整してもらおう。
「鶏皮にんにくに合わせるものと言えば、勿論こいつ!プレミアムなやつ!」
『待ってた』
『ジョージがプレモル持ってくる……これは勝ったな』
「いや、どの酒でも割と優勝だと思うが?」
「ジョージ!グラス冷やしておいた!」
「助かる!」
流石オーロラ、そういう気づかいを平然とやってのける。そこに痺れる憧れる!感謝して2つのビールグラスにプレモルをコポポと小気味いい音を立てながら注ぐ。ビールと泡の割合は7:3!完璧だ。
「それじゃ、各々方、グラスは持ったかな?」
『任せろ』
『オレンジジュースやけど』
『子供ビールうおおおおおおお!』
『やべぇ近くに醤油しかない』
『醤油ニキガンバレ』
『持った!』
「それじゃ乾杯!」
「カンパイ!」
『kp』
『カンパイ!』
『乾杯』
『Cheers!』
『Za vashe zdorovye Ha здоровье!!』
乾杯を取ったことでまずはグイっとビールを呷る。この苦み、この喉ごし……至福!そしてその潤った口内に飛び込ませるは、にんにく!従来のにんにくに比べ一回り大きいハラペーリックプラントのにんにくはまるでフライドポテトのようにほくほくしており、ピリッとした辛みに加え、その中に溜まった熱が口の中にあふれ、おもわずはふはふと、外の息を求めて温度調整を図ってしまう。が、それを黙らせるようにさらにビールを流し込んで……あぁ、天国。
鶏皮もまた卑怯だ。噛む度に油が溢れてくる。スキレットの中は結構な量の油の海のはずだが、まだ出し足りないのかこいつは!アカン、罪の味だわ……
オーロラは……?あぁ、彼女も満足そうににんにくを頬張って……あの、オーロラさん無理なさらないで。カメラでは上手い具合ににんにくの大きさにあなたの顔隠れてますけど、俺視点から見えるあなたの顔、愉快なことなってますよ?あ、諦めて小分けにしてる。
「ウマー!」
『相変わらず食レポせんなこいつら』
『ジョージの酒飲みチャンネルは初めてか?力抜けよ』
『割と最初から食レポしない定期』
『俺ら美味そうに食う顔見に来てるから……』
『明らかにラジオ配信の時より同接増えてて笑う』
うま、うま……しかしなんだ頭の中を渦巻くこの感覚は……何かを求めている……?はっそうだ!
ある事を思いついた俺はおもむろに立ち上がり、困惑のコメントを流す視聴者や一心不乱に鶏皮に取り掛かるオーロラを置いてその場を後にする。
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『あ、戻ってきた』
『5分か何してたんや?』
『なんか持ってるな』
『あ、あれは……!カリッカリに焼かれたバゲット!?』




