出張、ジョージ居酒屋?
翌日、加藤さんから調理器具や大量の食材を受け取った俺達は再びヤマダの元へ訪れていた。案内人はやはり昨日同様、謎の目。基本的に彼ないし彼女が先行していたのだが、ちょくちょく器用にも冷や汗を浮かべながらこちらに視線を移していた。昨日の奴ほど喋りはしなかったが、目は口程に物を言うというのは真実のようで「タベナイデクダサイ」と語っていた。いや、流石に案内役を食べようと思うほど野蛮じゃないぞ。
案内された先はやはりあの祠のある開けた空間。ヤマダは祠の屋根にタオルのようにだらしなく寝そべっていた。あなた割と際どい格好してるんだから止めなさい。俺達に気付いたヤマダは祠から降りると、蛇のように厭らしい笑みを浮かべて俺の前に立った。
「うむ、約束通りじゃの。よう守った」
「よく言うよ。守らなかったら殺すとか言っておきながら」
「呵々、そうでもせねば、このような人外の身の言うことを聞かぬだろう?特に人間の……お主はエルフじゃが。ほれ、わえは空腹じゃ。美味いものを頼むぞ?」
「へいへい、それじゃまずこれに座って待っててくれ」
前回来た時から気になっていたが、この空間、祠以外に本当に何もない。嫌々とはいえ、料理を振舞う相手を地べたに座らせて地面に皿を置く――というのはよろしくないので、これまた加藤さんに用意してもらっていたアウトドアチェアと料理を置くためのテーブルとキッチンテーブルとバーベキューコンロをAカードから取り出し、チェアにヤマダを座らせる。
「ほほー、中々に良い座り心地じゃの」
「鶏肉を焼きはするけど、火が通るまで時間がかかるから、まずはお通しを出す」
「うむ。まぁ、わえは生焼けでも食えるが、そこは任せる」
生焼けでも食っても問題ないのか……腹を壊さないという意味では羨ましいかも知れないな。
さて、お通しに取り出したのはキャベツ。東荒ダンジョンには自生しないため戸中山ダンジョンの物を持って来れればよかったが、今回はスーパーのごく一般的なキャベツだ。
「オーロラ、ビールグラス冷やしておいてくれるか?」
「ハーイ」
オーロラには別の作業を頼み、俺はキャベツの葉っぱを適当にざく切りにする。それを木で出来た深皿に盛って、こちらもやはりスーパーで購入した某焼き肉チェーン店の塩キャベツのたれをさっと振りかける。これで一気にお店の味――だが、まだ俺のおつまみキャベツフェイズは終了していないぜ!
たれをかけたキャベツに塩昆布をひとつまみ入れて軽く混ぜる。タレと塩昆布が馴染んだ後は、コンロで軽く炙って磯とごま油のいい香りを放つ韓国のりを両の手で握りつぶし、そのまま振りかける。
「はい、おつまみキャベツの完成。オーロラ、ヤマダにビール注いでやって」
「ウーイ」
「おぉ、手早いのぉ。妖精女王もすまぬの」
「ソウ思うなら、さっさと満足して寝て。モウ1万年程」
「わえ十分寝たんじゃが……?」
悲報、オーロラさん、まだヤマダに対して怒りが残っているようで当たりが強い。まぁ上位者故の余裕なのか、ヤマダは気分を害した様子は見受けられないからいいのか?
機嫌が悪くてもオーロラはしっかりと仕事はこなしてくれて、氷魔法のおかげで冷気を纏ってやや表面が凍り付いたビールグラスに俺一押しのプレミアムなモルツをなみなみと注ぐ。あ、もちろんビール缶の蓋を開けたのは俺です。
とりあえず、ヤマダの相手はオーロラに任せておいて、焼き鳥に取り掛かるか。
「えーっと、もも串・ぼんじり串・ネギま串・ヤゲン軟骨串・皮串・せせり串か」
萩原さんに買ってきてもらった焼き鳥たちだが、中々に種類が多い。流石萩原さん、色んなスーパーを巡ってくれたようだ。これを早速焼いていくわけだが……ふむ、少々彩が足りないな。せせり串に大葉を巻いておこうか。うん、大葉は美味しいし問題ないね。
「ほおっ!?美味い!」
ビックリしたぁ。ヤマダの方から喜色の混じった驚きの声が飛んできた。どうやらおつまみキャベツとプレモルのコンビネーションは気に入ってくれたようだ。ウケずとも黙々と食べてくれれば万々歳だと思っていたが、結構な好感触のようだ。思わず俺の口角も上がると言うもの。
「なんじゃ、ただの葉物かと思うたが、このタレか!黒いペラペラしたのも美味いし、この酒もよい!酒精は少々物足りぬが喉ごしが良いの!イッキに飲めてしもうたわ!女王、もう一杯!」
「アジわってる……?ジョージ、多分キャベツお代わり入るカモー」
「りょうかーい」
マジかよ。確かにおつまみキャベツは軽く食べられるお通しだからスイスイと行っちゃうけど、提供して数分も経ってねぇぞ?予想はしていたが、あいつ俺と同じでかなりの健啖家だな?こうしちゃいられねぇ!オーロラの勘に従って次のおつまみキャベツを作り、いつでもオーロラが持って行けるようにキッチンテーブルの隅っこに置いておく。
これは焼き鳥ともう1つの料理も急がねばな!俺は焼き鳥をバーベキューコンロに並べ、焼きを入れ、火が通るまでは次の料理の準備に取り掛かる。取り出したるは、コカトリスの丸鶏とビール缶だ。




