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TSエルフさんの酒飲み配信~たくさん飲むからってドワーフじゃないからな!?~  作者:


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【カクカク】ジョージ+?の酒飲み配信【シカニク】

「ハロー、皆の衆ジョージの酒飲み配信のお時間だ」

『ハァイ、ジョージィ画面が見えないだけど?』

『初手放送事故は草』


 うん、コメントの通り今画面が真っ暗なんだよね。でも、機械の故障という訳じゃないんだよこれ。

 初めて見るカメラに興味を示した妖精が零距離でのぞき込んでいるから何にも映していないんだよね。


「ほら、こっちゃ来いこっちゃ来い。紹介できないでしょ」

『紹介?』

『何、だれかとコラボしてんの?』

「――♪」

『ん?何の音?』


 手招きする俺に返事をし妖精はカメラから離れ私の肩に乗る。そこでようやく、画面の向こうの視聴者にその姿をお届けすることになった。ちなみに今妖精が着ている服は帰り際に友風さんに頂いた、フリルのついたお姫様みたいなピンクのドレスだ。妖精、よっぽど気に入っているのか、ドレスの裾を持ち腰を回してフリルを舞わせている。


『妖精?』

『マ?』

『えぇ!?すごい!可愛い!』

『凄い服着てんね』

『(・ワ・)』

「今日ダンジョンで出会ってね。ご飯あげたらついてきちゃった」

『餌付けかよw』

『何食べさせたん?』

「昨日のブラウンシチュー。ほら、挨拶練習したんでしょ?皆さんに見せたげて」

「――♪」


 コクコクと頷き、妖精は両手でスカートの裾をつまみ、軽くスカートを持ち上げ挨拶をする。ヨーロッパでカーテシーと呼ばれる伝統的な挨拶だ。何の気なしにその動画を見せてみたらそれはもう乗り気で練習し始めた。その練習の成果は


『は?可愛い』

『やっぱ妖精連れてる人ってみんな着飾るんすねぇ』

『これはフェアリークイーン』

『うわすご』

『あー、この服有名メーカーのやつじゃん。良い物着せてるねぇ』

「これは知人からもらったからね、服はよく知らんのよ」


 素人目からしても上等なものだと思ったからね、支払おうとしたんだけど友風さんは頑なに受け取ろうとはしなかった。「配信を楽しみにしてますからね!」とだけ言い、しっしっと追い払われてしまった。後日、しっかりお礼させて貰おう。


「さ、そんな訳で今日の酒のお供は木々鹿肉のローストだ!」

『今日はもう妖精さんの配信でよくない?』

『(・ワ・)<われらのじだい』

『(・ワ・)<エルフさんはすいたいしますか?』

「エルフ的に29歳はまだ衰退するような歳じゃないのでは?」

『(・ワ・)<作品によってはまだ赤子』


 クソッ!懸念していたことが当たりやがった!妖精のインパクトが強くてみんな今日のおかずに目が行ってない!結構手間かかってるんだぞこれ!

 まぁ初出演だからね、仕方ないところではあるんだけど。妖精は妖精で、視聴者の反応が嬉しいのかコメントに反応して色んなポーズをとっている。……当然のように反応しているけれど文字理解してんのね。

 俺は放っておかれてるので、鹿肉ローストと妖精のスクショ大会を肴に今日は日本酒でも飲んでよ。

 まずは何もつけずそのまま――うん、匂いもしっかりとれてるな。ローストビーフにも引けを取らない美味さだ。ホースラディッシュにもよく合う。そんでもって日本酒!ッカァ、美味い!


『1人で飲んでて草』

『置いてけぼりにしたのは俺だしまぁ』

『鹿肉美味いよな割と癖無いし』

「――!――!!」


 コメントに反応して妖精は後ろを向き、信じられないものを見る様な目でこちらを見る。うん、何言ってるか分かるよ。抜け駆けすんなって言いたいんでしょ?

 弁明しようと口を開こうとしたところで、顔面に強い衝撃ぃ!


「おぶぇ!」

『妖精ちゃん抗議の頭突き』

『そら1人で満喫してんだぞ?ギルティだわ』

「悪かったって!ちゃんと分けてあるから!」


 腰に手を当て、ぷんぷんと怒って見せる妖精の前に、小皿に小さく切り分けた鹿肉ローストを乗っける。当然、ホースラディッシュも付けている。これで妖精の機嫌は元通り!……になるはずだったのに、その目は「まだ足りないんだけど?」と訴えてくる。

 俺にあって取り分けた鹿肉ローストに足りない物?……え、もしかして


「日本酒飲むつもり?」

「――!!」


 はい正解だそうです。


『まさかのw』

『飼い主と同じものを食べたいペットかな?』

「大丈夫なのか?」

「――!」

『あんだって?』

「本人は大丈夫だから寄越せって言ってる」


 妖精の意思は固いようで、俺の日本酒が入っているグラスをがっしりと掴んで諦めそうにない。しょうがない、俺は願いを受け入れ、あるものを取ってくるために席を立つからと妖精に場を持たせるように言っておいた。ねぇ、敬礼はどこで学んだの?


「はい、お待ち」

『ペットボトルのキャップか』

『それなら妖精ちゃんに丁度いいね』

「――♪」


 とりあえず今は愛飲している特定保健用食品の緑茶のペットボトルのキャップでお許しいただきたい。キャップを両手で受け取る本人は嬉しそうだからいいか。勿論、ちゃんと洗ってる。

 妖精はキャップをこちらに向け、注いでと促してくる。本当に飲むつもりなんですね……


「はい、お客様どうぞお飲みください」

「――♪」


 なみなみと注がれた日本酒が零れそうになると、おっとっとと言わんばかりにキャップのバランスをとる妖精。


『動きがちょっとおっさんっぽいなw』

『ってか服そのままでいいん?』

「服脱がしてもいいけどその場合妖精はフェードアウトするけどいいの?」

『妖精ちゃん、服は汚さないようにな!』

『紙ナプキン付けたれや!ティッシュあるやろ!』

「視聴者ナイス」


 全く失念していたよ。やはり持つべきものは視聴者!一旦キャップを下ろさせ、ティッシュで作った紙ナプキンを装着。本当なら汚さないように脱がさせるべきなんだけど視聴者がそれを許さないからな。

 さて、気を取り直して……妖精初日本酒に挑戦!キャップを持ち上げ、口を付け、飲み始める。


『お、噴き出さない』

『ニッコニコで飲むなぁ』

『かわいい』

『妖精ちゃんいける口なんやね』

『あれ?まだ飲むの?』

『止まらないね?』

『止まるんじゃねぇぞ……』

『え、一気しようとしてる?』

『僕たち強要してませんよ!?』

「――♪」

「うわ、飲み干したよ。妖精、大丈夫なん?」

「――!」


 まさかの一気飲みに焦ったが、当の本人は満足そうに笑っている。そして日本酒の美味しさに喜んでいるのか、はたまた酔っているのか上機嫌で飛び始めた。ただ、その飛行は一切のブレを感じさせないので泥酔しているという訳ではなさそう。


「どうやら妖精も酒に強いようだね……」

『いや、飼い主にそこまで似なくてもよくない?』

『まぁ飲み相手が出来て良かったんじゃない?』


 確かに。ずっと1人で飲んでたもんなぁ。いや、たまに武道さんとも飲んでたけど。エルフになった今じゃ気軽に飲めなくなるよね。武道さん奥さんいるし。

 突然出来たモンスターの飲み友達。ジョージの酒飲み配信の楽しみが増えたかもしれない。


「――!」

「あ、おかわりですねすんません」

『おかわり催促にほっぺ叩くの可愛いね』

『ところでさ、妖精ちゃんの名前は?』


 …………


「あ゛」

『こーれは忘れてましたね』

『ずっと妖精妖精言ってたから変だと思った』

『はい、名付け配信に変更しまーす』


 俺と視聴者たちから飛び交う妖精の名前案。

 最終決定権があるのは勿論妖精だ。彼女が選んだのは――"オーロラ"。酒言葉で『偶然の出会い』を意味するカクテルだ。

 ふっ、いい名前じゃないの、飲んだことないけど。

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― 新着の感想 ―
[一言] あの作品 最初はケラケラ笑いながら読んでたけど ラストの展開にゃあ驚きましたね…
[一言] 妖精さん懐かしすぎる…
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