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男だけど期間限定でアイドル♀活動してます  作者: ソラ・ルナ
第二部

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23/35

8話.皆の前で言っちゃいました

 金曜日。

 この日はうちの事務所と提携しているテレビ番組から、『スターナイツ』のライブ生放送を行う事になっている。

 学校が終わった後に向かう為、場所によってはいきなり開始になる(先週がそうだった)のだが、今日は割と近場なので時間に余裕はある。

 午前の二時間授業が終わり、文化祭の準備に切り替わってから、僕達に特別令が降りた。


 その内容は以下の通り。


①僕達で踊りを作るのだから、騒がしい学校でより、やりやすい場所で作業に当たって良い(要は家に帰っても良いって事)


②何か手伝って欲しい事が出来たら遠慮なく相談してほしい


 との事だった。

 いや、令というか、僕達に滅茶苦茶配慮してくれている。

 そしてこれは、僕にとってはとても助かるわけで。


「い、良いの? 皆」

「ああ、皆で決めたんだよタクト。特にタクトにはすげぇ期待を背負わせちまってるしさ。センセにも許可取ったんだぜ」

「おー。流石に校長先生の指示を仰ぎに行ったら、即OK出たから気にしなくて良いぞ姫咲」


 博人と先生がそう言う。

 もしかしてだけど、昨日校長室に呼ばれたのってこの件の話もあったのだろうか?

 そう思ってユリアとユナを見ると、笑っていたので察した。


「ふふ、愚民共にしては良くやったと褒めてあげるわ。あと、今日のライブは必ず見なさい。面白い事が起きるから」

「「「「「!!」」」」」


 皆が驚き、歓声を上げた。


「おおおっ! めっちゃ楽しみですユナ様!」

「うわ、今日は準備早めに切り上げなきゃだね!」

「うんうん!」

「19時からだよな!? 18時までやってたら間に合わない奴も出るだろうし、電通の奴は速めに帰れよ!?」


 なんてわいわいしだす。

 にしても、面白い事ってなんだろう?

 僕も知らないんだけれど。

 ユナとユリアを見ても、笑ってるだけで分からない。

 何か、嫌な予感がするけど、気のせいだよね。


 というわけで、僕達は家に帰る事にした。

 まだお昼前、ライブに備えて少しゆっくりしようかな。

 そう考えていた時が僕にもありました。


『拓都、時間が出来たのだからこちらへ来れるわよね?』

『拓都君、ライブで一緒に出るんだし、こっちに居ようよ!』


 この二人は一緒のマンションだからなぁ。

 そのうち僕にもそっちに住めとか言ってきそうで怖い。

 まぁ姉さんが許可しないだろうけどね。

 とりあえず返事を送っておくか。


『了解。どうせする事も無かったし、構わないよ』

『excellent! 後藤にはこちらから言っておくわ』

『やった! 楽しみにしてるね!』


 さて、着替えるとするか。

 今日はお昼から夜までずっとレオナで居ないといけないし、メイクの手直しも必要になるな。

 金曜日はいつもの事だから美香にメモを残しておく必要もないだろう。



 それから後藤さんに送ってもらい、マンションに入る。

 まだ昼間からこのマンションに入るというのも変な感じがするな。


「いらっしゃいレオナちゃん!」

「Thanks for comingレオナ」

「ああ。時間はあるし、ライブのリハーサルを一度したらゆっくりするか」

「うん!」

「ええ、そうしましょう」


 荷物を置いてから、ライブの練習を一度だけしておく。

 何度も練習している事なので、失敗などしないけどね。


「そういえばユナ、聞きたい事があるんだが」

「何かしら?」

「今日学校で言ってた面白……」

「ユリア、お腹が減ったわね。何か頼みましょうか」

「そうだね! レオナちゃんは何が良い?」

「……」


 露骨に話を逸らされたので、これは話してもらえないと悟った。

 まぁ良いか、どうせ後で分かる事だし。


「ピザで」

「了解! ユナちゃんは?」

「私もレオナと同じで良いわ」

「ん! それじゃ電話しておくね!」

「いえ、私がしておくわユリア。いつも貴女が率先してやってしまうから、つい任せてしまうけれど……貴女は召使いではないのよ?」

「あはは! 私がしたくてしてるんだよー! 私はレオナちゃんもユナちゃんも大好きだからねっ! やってあげたいんだっ!」

「そ、そう。それなら良いのだけど」


 流石のユナも正面からまっすぐにそう言われると弱いようで、横を向いてしまった。

 顔が真っ赤なのは突っ込まずにおこう、私も多分赤いから。


 そうして三人でゆったりとした時間を過ごしていたら、時間というものはすぐ過ぎるもので。


「そろそろだな。『スターナイツ』、出るぞ」

「うん! 今日も頑張ろう!」

「OKレオナ」


 後藤さんに送ってもらい、今日のステージへと上がる。


「「「「「ワァァァァァァッ!!!」」」」

「レオナちゃーん! 今日もカッコイイー!」

「ユリアちゃーん! 可愛いよー!」

「ユナ様ぁぁぁっ! 踏んでぇぇぇっ!!」


 会場のざわめきはとても大きいが、それでも一部の声は聞こえてくるんだから不思議だ。

 そうして曲が始まる前に、ユナが手を上げスポットライトが当たる。


「こんばんは愚民共。今日はこの私から、報告があるの」


 湧き上がる会場、ユナがスッと手を動かすと、まるで天使が通ったかのように静かになる。


「この私とユリアが私立鶴見川高等学校に転校した事を知っている者は居るでしょう? そこで今から13日後に文化祭が行われるのだけれど、私とユリアはライブを行う事にしたわ」

「「「「「!?」」」」」


 会場がザワッとしだす。

 成程、学校で言っていたのは、ライブでその事を言うからって事か。

 なんて納得していたら、とんでもない事を言い出した。


「その舞台は二部構成。前半は私とユリアが踊り、後半はaudience達も一緒に踊れるようにするつもりよ。その際の踊りはSNSで事前に公開する予定だから、来て踊りたい愚民達は練習をしておきなさい。そしてここからが本題よ。私とユリアが踊る、それは良いわ。けれど、『スターナイツ』のスターが来ないなんて、ありえないわよね?」

「「「「「!!」」」」」


 会場が更にザワッとしだす。

 私は今ポーカーフェイスで無表情だけど、心の中では滝汗をかいている。

 ちょっと待とうかユナ。

 その後の言葉は言っちゃいけない。


「ねぇレオナ。この私とユリアがこの場で頼むわ。どうか、私達と共に踊ってはくれないかしら?」

「お願い、レオナちゃん!」

「……」

「「「「「……」」」」」


 これ、逃げられないやーつ。

 観客達も静かに見守っている。

 あー! もう! 仕方ないな!


「OKユナ、ユリア。行ってやる。私達は三人で『スターナイツ』だからな」

「「「「「ワァァァァァァッ!!!」」」」


 凄まじい歓声が耳を襲う。

 やってくれたなぁユリア、ユナ!

 こうして、今日の歌と踊りが終わり、いつもの熱気より更に熱い会場を後にした。


「ユリア、ユナ、後で覚えておけ」

「ふふ、ごめんなさいレオナ。けれど、普通に言ったらレオナは逃げるでしょう?」


 当たり前である。姫咲拓都としての参加がこれで出来なくなったのだから。


「ごめんなさいレオナちゃん。でもどうしても、レオナちゃんと一緒が良かったの。私達、三人で『スターナイツ』だもん」


 そう言われては、何も言えない。

 最大限姫咲拓都としての配慮もしてもらってる事だし、これくらいは許容しよう。


「はぁ、月曜日が憂鬱だよ」

「そう? 私は楽しみだけれど」

「あはは! 絶対皆騒ぐよね」

「間違いないわ。レオナが参加するんですもの」


 そんな事を会話しながら家に帰ったら、美香からも詰め寄られて大変だったよ。

 どうして嫌な予感は当たるんだろうね。

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