清廉なる解き
レーン式の扉を引き開き、学校の敷地内に入ると古い木造小屋である体育用具室の横に自転車を止めた。
自転車を降り、カゴから鞄を取り出し、用具室の扉を引き開ける。
奥の椅子に鞄を置くと、バインダーとペンだけ手にして古い木造小屋から出た。
校舎内に入り、副校長室に挨拶に向う。
ドアを開けると副校長はいなかった。
校舎から出て学校の周りを歩いて巡回する。
不意にあの女の冷たい笑顔が浮かんで、消えた。
あの女に憑いているのはおそらく男。幾人かが取り憑いているが最も強い怨みを発しているのはあの男だろう。あの女が事を起こした時、子供達を守るために殺り合う必要が起こるとしたら、女に取り憑いたあの男と殺り合うことになる。校内に入られると子供を盾にされるおそれがあり圧倒的に不利になる。取り憑いているのがまだ若い女というのも闘い難い要因。それも考えているとしたら……。
考えながらスクールゾーンを歩いていたら校庭側の門に着いた。
午前中はグランドのフェンス側で立哨する。
門の前の道路は一方通行になっていて車の通りはそれほど多くない。
あの心を病んだ女から憑いた者を祓っても、また似たような者が憑くだろう、女が心を変えない限り病みは闇をもたらす。
人はほんとに迷惑な生き物だ。愚かにも判断を誤り、誤解して生きて、誤解して死んで、その後に尚も誤解しながら生きる者から正解の機会を奪い、道連れにあちらに引きずり込む。生きている間に誤解を解かなければ死んでからでは自力で解けることはない。生きる者に未練や無念を消してもらうしか正解に辿り着くことは出来ない。欲に執着した結果が怨みでは、何のために苦しい思いして生きているのかも、わからない……。
立哨しながら思案していると可愛い声が聞こえた。
「警備さんがいるよ」
「あ、ほんとだ」
振り返ると体操着を着た女の子が数人僕の後ろに来ていた。少女は上着の裾を引っ張りながら明るく微笑みながら言った。
「体育の授業なの。あ、先生が出て来た。また後でね」
少女達は僕の側から走り去って行った。
午後は次の学校だから……会うのはいつになるかな。
穢れは何処から入り込むのか、願わくばあの光を失うことなく……祈るような想いが心を満たす。染み込むように消えていく、清らかな魂の響きに安らぎを感じながら、次の学校を巡回するために古い木造小屋へと向かった。




