面白いな、不意におもった。
いつものように電車に乗り、いつものように想像で生み出した仮想の敵対者達を地に這わせ、蒸せるような血の臭いの充満した車内から外に歩き出すと、奇声を発している本物が近づいてきた。
頭を振りながら不規則に手を上下動し、遠い目をしてぼくの前を塞ぐ。半開きの口が何かを呟いてぶつかって来……咄嗟に身をかわし、視線で相手の動きを捉える。
空いた喉に指先を突き込みながら薙ぎ払えば立ち続けることは出来ない。思った刹那、肩に違和感を感じ、視線を揺らすと肩が掴まれていた、相手の目を見つめると薄笑いを浮かべ掴んだ手に力を込めた。
蒸発したように理性がきえ、肩を掴んでいる腕を巻き落としながら手首に肘を叩きつけていた。肘に走る鈍い感触に理性を取りもどし、相手の顎を跳ね上げる前に動きをとめた。男は何事か言葉にならない喚きをあげながら逃げるようにエスカレーターに乗って背を向けた。
そうか、まだ動ける。警戒を解くと瞬間的に、不意に対処出来た結果にうれしくなったが、思考が感情を打ち消した。
異常者の手に刃物が握られていたら肩を刺されていただろうことは明白。
肩や太腿は狙われると避けづらい、知っていたのに……。
これから向かう先、学校には精神病院に入れられていた本物の狂人がくる、ほんとにいつ刃物を握りしめて校門から入ってくるかわからない。
相手は狂人、殺しても罪になることはない。
殺されるなら、殺す。心を病んだ者を赦せるほどぼくは人を愛していない……。
面白いな、不意におもった。追いつめられると本音しか心を叩けないか……。
なぜか、少女のはにかんだ顔が心に映った。




