さて、起きよう。まだ僕は生きているから。
目をあけると明るくなっていた。
どうやらまた、朝を迎えたらしい。
しかし、今日で世界は終わるかもしれない。
あの年を越えた今となってはいつ世界が終わってもおかしくない。
強く思ったはずなのにどこか空虚な気持ちがそんな想いを掠めていく、それならそれは僕を含めてこの星に生きるあらゆる生命の責任であってそれから免れる生き物はいないから……。
また、分かりきったことを考えてなにかおかしな気がした。
さて、起きよう。まだ僕は生きているから。そう心でつぶやくと、フローリングの床に敷いた灰色のホットカーペットから起き上がりユニットバスに向かった。
真理とか自然とかそんなことばかり考えている変わった人に設定され、生きていても、現実には仕事をしないとお金を稼ぐことは出来ないし、真理のために清貧を好むように設定されていても、金がないと食べる物も寝る所も失う。
だから今は小中学校の警備をして糧を得ている。
僕は日々の仕事が嫌いだ、出来れば仕事などしなくて真理のことだけ考えて生きていきたいと思っている。
ユニットバスの扉を開くと顔を洗うために洗面台に近づく。
嫌な仕事に向かうというわりに、それほど嫌そうな顔は鏡には映ってなかった。
寝起きでぼんやりとはしているが、表示用の顔としての表情は素直だ。これまでにして来た仕事よりかは楽しい気持ちを隠す事なく現している。
子供たちの無邪気な笑顔を見るのは嫌いではない。
いくつか浮かんで来た無邪気な顔に少女の端正な笑みが重なった。
あの子は検索しただろうか、検索して見つけただろうか不透明な薔薇の王冠を。
あの子はゆりになるだろうか、僕の、彼の語ることが理解出来るだろうか。
「どう思うかな」
鏡に映った彼に問いかけると、彼は微かに笑った。
彼の表情はまったく動いてなかった。それでもそんな気が、笑った気がした。




