艱難辛苦は遠く栄達に及ばない
艱難辛苦は遠く栄達に及ばない。
あなたは知っているはずだ。
誰もいない暗闇で僕は誰かになり語る。
自問自答ではない、それを超えた問いかけと答えを求めて僕が出した答えがこれで、問いかける者は遥か高みから答えに導くように語りかける。
これは、僕が生み出した二つの癖の一つで、もう一つは夜空を見上げ星を見る時、輝く光の近くに微かな光を探すこと。
微かに光る星は遥かに遠くにあるのかもしれない。
そう思うと可能性の扉が開くような気がして感情が高ぶり、少しだけ優しい気持ちになれる。
僕は遥か高みから射して来た光のような言葉を浴びるように身に受けながら心で繰り返す。
艱難辛苦は遠く栄達に及ばない。
確かにぼくは知っていた。
でも、だから、それでもやはり艱難も辛苦もそれを受け入れ赦せるほど僕の心は真紅ではないから……。
栄達に、栄光に達するまでに真夏に炎天下を求める太陽のような艱難には身も心も乾涸びて夜露の潤いを与える間際、垣間見せる落陽を象ったような美しい理性の光を放つこともままならないよ、たとえ器としての言葉は形を保とうとも、注がれる真意の色は深紅や真紅には届かない偽物の赤に過ぎない、そのことはあなたが、僕が最もよくわかっていることでしょう。
あなたは見上げて微笑んだ。
僕は見下ろして、泣いてしまった。




