笑話集 その二 ☆
「社長、また会議をすっぽかして麻雀? 好きだねえ」
「はい、相当いかれています」
「社長、今度は競馬だって?」
「はい、もういっちゃってます」
「社長、将棋を始めたんだって?」
「いつも小学生相手にやられています」
「社長、いつもあの人に勝負を挑むよね」
「勝ちたいみたいですけど、かなわないようです」
「社長、また美人秘書をデートに誘ってるぞ。諦めてなかったの?」
「いつもああいう言葉を笑顔でかわされています」
「社長、まだ料亭の女将を口説き落とせてないんだって?」
「彼女、何を言われてもにっこりと微笑んでいやがるんです」
「社長、こっぴどく振られたんだって?」
「ほら、泣き声が……、だんだんや(病)んできましたね」
「玄関にある奇妙な像は何だ。社長か?」
「宗教関係の知り合いができて、おかされているんです」
「うちの社長は慈善事業に熱心で、募金を求められると社員は断れないんだ」
「えらいお人だねえ」
「この空になった酒瓶の山、社長が一人で? 大丈夫なのか」
「はい、先程召されました。今は安らかにお休みです」
「社長を眠らせたよ。いつもの方法でな」
「しなれているのですね」
「美男美女の社長夫妻、とても仲が良いですよね」
「いつも甘々べたべたな様子、見(魅)せられていますよ」
「忙しそうだね。ちゃんと休めているの?」
「週末はいつも、仕事、おわれます」
「あいつ、最近大きな仕事を成し遂げて自信を付けたらしいな」
「社長に気に入られて、かなり調子に乗っています」
「あの車、のろのろしてやがるからあおってやったぜ。愉快だろ」
「うん、とってもおかしいよね」
「昨日初めて夫と喧嘩しまして。この結婚指輪、売りたいんです」
「そいつはいただけないね。仲直りしなよ」
「田んぼの土手が崩れかかっていると聞いたけど、水位は保たれているの?」
「もってるよ」
「あの人を公園に呼び出して交際を申し込もうと思うんだけど、雨が心配だ」
「やめておいたら。きっとふられるから」
「私が彼を好きだとどうして分かったの?」
「いつも目がいっているもの」
「珍しいヘビだって。肩に乗せてあげる。……顔が引きつってる?」
「いや、いやされているよ」
「この薬、かゆいここに塗ればいいのよね?」
「お知りでしたか」
「デートなのに腹痛で行けなくなったの? で、誰と?」
「あのきれいな人だよ。あ、いてー」
(相手。あ、痛え。会いてえ)
「あのお客さん、たくさん酒瓶を並べてつっぷしていますね」
「ええ、弱いのにお好きで、よくのまれています」
「そのお酒、おいしい? まずい?」
「こたえられない味だねえ」
「あのお店のお饅頭、何度食べてもまた買いたくなるね」
「よい商い(飽きない)をしているね」
「パン作りコンテストは、あんパンの老舗が優勝か」
「アイデアの奇抜さで勝負した職人たちは、こてん(古典)パンにやっつけられたね」
「香辛料たっぷりの料理だって。辛い?」
「とってもスっパイっス」
「彼氏と海水浴に行く予定なの」
「いいなあ、やけちゃうね」
「ひっく、君は常識を知らんなあ。物事のことわりってやつを教えてやろうか」
「酔っぱらいは相手にしないものだ。それこそ、おことわりだよ」
「植物園、雨でも行くぞ。そういう日はまた違った趣があるからね」
「雨天けっこうだね」
「あの生徒会長、いつが一番かっこいいと思う?」
「壇前、全校生徒に語りかける時だね」
「あの噂、耳にしていないのは本人だけらしいよ」
「知らぬはほっとけい」
「あいつの屁理屈には腹が立つね」
「まさに牽強付会(不快)だね」
「駐車場、車がごちゃごちゃに置かれていて動けないよ」
「しゃれつにならないひどい状態だね」
「あの横綱、かっこよかったね」
「うん、立派な押し出しだった」
「どうしてお祝いの時に昆布を食べるの?」
「こんぶラッチュレーションという英語があるんだよ」
「わあ、お寿司だ。どれをくれるの?」
「いくら食べてもいいよ」
「説得は成功したんだね」
「社長が合意んに持っていったよ」
「小柄なあの子と付き合うことになったのか。大事にしてやりなよ」
「うん、とってもめでたい」
「こふき芋、上達の道は険しいぞ。修行あるのみ」
「まさに、いもふかしだね」
「木枯らしに乗って目に砂が飛んでくるよ」
「もう、ふゆかいな」
「あの寿司屋の板前、俺の店に招こうとしたのに独立しやがった」
「のれんわけがあったんだね」
「サンタクロースだよ。大きなつづら、中くらいのつづら、小さなつづら、どれがいい?」
「えっ、一つを選ぶの?」
「そうだよ。三択ドースル?」
「サンタクロースだよ。煙突から、じゃじゃーん! あっ、かまどだった」
「サンタのローストだ」
「お正月、ご馳走を食べましたか?」
「もちだよ!」
「もう営業は終わりました。シャッターを下ろします」
「遅かったか。しまったあ!」
「あれ、手土産に持っていくはずの菓子折りは?」
「あっ、さっき子供のおやつにした。やっちゃったなあ」
「どっちが先に橋の向こうまで行けるか、競争したって?」
「互角に渡り合っていましたよ」
「これ、手を触れちゃいけないの?」
「ええ、さわりがあると困りますので」
「日が沈むのはそろそろかしら」
「もうちょっとくらいかな」
「このところてん、おいしいね」
「うん。ところでん、もう一杯頼んでいいかな?」
「あの熱心な裁判官、魚料理が好きなんだってね」
「うん、次々にさばいているよ」
「最近、ホットケーキが売れないねえ。不況だからかねえ」
「お母さん、お小遣い増やしてくれない?」
「ほっと景気がよくなったらね」
「夕食はてんぷらだよ」
「本当に?」
「ほら、エビでんす」
(evidence 英語で「証拠・根拠」)
「ラッパが聞こえる。走って一丁買ってきて。絹ごしじゃない方だよ」
「分かってるよ。もう、めんどう! ふう……」
「この古書、外国語で読めないけれど絵が素敵だね。値段は?」
「それはうらない本だよ」
「おばさんのご飯、やっぱりおいしいです。おかわりがなくてよかったです」
「もっと作ろうか?」
「ダイエット中なんです」
「お代官様に越後屋が贈り物を持っていったって?」
「なんと小判だそうだよ」
「彼女の遅刻の理由、迷子の女の子を親のところへ連れていったからだってさ」
「彼女のそういうところ、スキですね」
「あのドライバー、しこたま飲んで他の車に嫌がらせをしたんだって」
「まさにあおり運転だね」
「かき氷にこんなに練乳をかけたの?」
「もっともっとって言うから」
「あなた、娘に甘すぎるわ」
「君の言った通り、日食があったよ」
「そら見たか」
「食後の片付け中に悲鳴が聞こえて床に血が!」
「さらわれたか!」
「あの立候補者、ロングコートを着ていたよ」
「街頭演説だからね」
「選挙結果は?」
「政権交代だよ。汚職の多発に国民が怒ったんだ」
「与党の退廃か」
「政治家に便宜をはかってやったら、金一封を渡されて税務署には内緒にしろと言われた」
「その金、裏がねーかー?」
「賄賂を受け取ったのですか? 簡潔にお答えください」
「よろしい、問題の核心からおはなししましょう。このダムがようやく着工に至り、地元には大変感謝されております。そもそもの始まりは五十年前の洪水により……」
「見事に核心からはなしているね」
「五人に結婚を申し込んだですって! うそつき! 浮気者! 誰を選ぶのか答えてよ!」
「俺は誰に対しても本気なんだ。口説くために全力だっただけなんだよ」
「あれは全くこたえていないね」
「この貯金箱、底を開けると『よく頑張ったね。えらいえらい!』って大好きな声優さんの声でほめてくれるんだよ。毎日聞いているんだ」
「それはたまらないね」
「親が決めた相手と結婚しろって。あなたに稽古をつけるのはこれで最後。でも……」
「さらってほしいんだよね。そのつもりだ」
「君の兄さんに久しぶりに会いたいな。今はどこにいて何の仕事をしているの」
「実家に帰省中(寄生虫)よ」
「十月のページは菊の写真にしたんだね。可憐ダー。誰の庭のものなの?」
「彼ンダー」
「富士山が大好きで、毎年登りたくなるんだ」
「それはもう不治の山い(病)だね」
「いらないものの片付けは進んだかい?」
「さっぱりだよ」
「このたくさんの名画、どれが模写なの?」
「全部だよ」
「そっくり、なんですね」
「かっこいい冗句を言おうか」
「おっ、しゃれー!」
(※洒落。おしゃれ。おっしゃるの命令形)
「望遠鏡は直ったの?」
「まだだけど、少し見通しは改善したよ」
「大きな鐘! ついていい?」
「それはなりません」
「昨日月まで行って、ウサギにニンジンをやってきたんだ」
「ほら話しはやめて。先生が来たよ」
「おばあちゃん、寒い。お腹空いた」
「台所に行って肉まんをお食べ。……あったかい?」
「うん」
「見て! 雪の中、池に大きな白い鳥がいるよ」
「あれは、は、は、ハックチョウ。彼等も寒いだろうねえ」
「その窓を開けて」
「えっ、どれ?」
「もう、まどろっこしいなあ」
「どこへ行くの? 外は嵐よ」
「あら、しらなかった」
「駅へ行くのはこの道?」
「その通りです」
「失礼な。尾瀬は沼地じゃないよ!」
「湿原でした」
「あの動物はカバではないよ」
「サイですか」
「温泉付きスポーツジムに就職したんだって?」
「毎日汗を流して働いているよ」
「あの湯上りの男性、浴衣の帯がほどけそうだよ。肩が半分ずり落ちてるし」
「しまらない格好だねえ」
「あなたの旦那さん、さっきお友達の女性と腕を組んで歩いていましたよ」
「大丈夫、そんなことは、おこらないから」
「足の手当ては終わった。車で送っていくよ」
「まだいたいの。今夜は泊まっていい?」
「あなたの彼氏、浮気相手とドライブ中に事故を起こしたんだって?」
「これからお見舞いしにいくの。あの馬鹿にね」
「思い切って相談したら、びっくり仰天の意外な作戦をあっさりと教えてくれたよ」
「彼は奇策な人だからね」
「海藻の生えた岩の上で歌って踊っているよ!」
「ノリに乗っているね」
「木製の洗面器が欲しいって言うから、作って持っていくついでに一泊してくるよ」
「木の桶ない友人なんだね」
「いい気分だなあ」
「ああ、そうかい」
「俺、腹の真ん中でゴマを生産しているんだ」
「へえ、そう」
「もしもし。寝ては駄目ですよ」
「おや、すみません」
「エイエイ・オー! エイエイ・オー! ……はあ、はあ」
「随分いき(意気)が上がっているね」
「猫が走って逃げている絵を描いたよ」
「口に魚をくわ(加)えたら、もっとよくなるよ」
「この肖像画、目の中に外の風景が映っている」
「本当だ。目がいいね」
「いい詩だね。誰かが曲を書いて歌にしていそう」
「うん。しらべは付いています」
「ぞくっとするほど美しいメロディーだね」
「この作曲家のあだ名は、戦慄の魔術師だからね」
「あそこが王様のお住まいです」
「おおきゅうございますな」
「昨日食あたりで首相が亡くなりまして」
「ご愁傷様でございます」
「大臣の私も体調がよくないのです」
「お大事んになさって下さい」
「総理大臣閣下。汚職の疑惑を新聞が報じておりますが」
「全て否定し、堂々としているぞ」
「いな(否)オールというわけですね」
「すぐに騒ぎも収まり、胃の痛みも治るだろう」




