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異世界転生からの異世界召喚~苦労人系魔王の新人冒険者観察~  作者: へたまろ
第4章:役不足だからとパーティを追放されたミコとカナタの観察記

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第2話:A級冒険者英雄戦線のリーダー、リチャード

「本当に良かったのか、リーダー?」


 いま私たちの少し前を、さっきまでパーティを組んでいた人たちが歩いている。

 先頭を歩いているのは、リーダーのリチャードさん。

 金髪碧眼のキラキラとした美青年。

 17歳とまだ若いけど、腕は確かだった。

 ちょっと浮世離れしたところがあるけど、未来を夢見る若者。

 

 装備は金属製のライトアーマーと、やったら高そうな剣。 

 実家の倉庫から持ってきたと言ってたから、きっといいとこのお坊ちゃんだと思う。

 有名な冒険者の子供とか……

 宝物庫を倉庫に言い換えていたから、貴族かも……

 プライベートを詮索されるのを嫌がるから、詳しくは聞けてないけど。


「何がだ?」

「ああ、ミコを置いてきたことに決まってんだろう」


 剣士のフーガさんが、後ろを振り返って親指でこっちを指し示している。

 てか、これ見られる!

 慌てて隠れようとしたけど、カナタさんが手を振ってそれを押しとどめてきた。

 バレたらどうするんですか! 

 声も出せないから、睨むしかできない。


「大丈夫だって! 【完全存在遮断(ステルス)】と【音漏れ防止(サウンドプルーフ)】のスキル発動させているからさ」


 そう言って、わざわざフーガさんの目の前で手を振ったりしてるけど。

 本当に見えていないみたい……ああ、この人はマジシャンなのかな?

 魔術師じゃなくて、手品師の方の。


「知るか、あんなやつ!」

「うわっ、冷たいんなあ」

「良いんだよ! これで良かったんだよ……あいつのためにも……」


 徐々に声が小さくなっていき、最後は呟くような自分に言い聞かせるように言うリチャードさんに首を傾げてしまった。


「どういうこと?」


 カナタさんが不思議そうにこっちを見てきたけど、私が聞きたいのですが?

 私のためというなら、このまま変わらずに仲間でいさせてくれたらよかったのに。


「俺たちの風向きが変わって、調子が上向いてきたのはあいつが入ってからだ」

「だから、いいのか? って聞いたんだが?」


 リチャードさんの言葉を受けて、カナタさんだけは合点がいったような顔をしているけど。

 私にも教えて欲しい。


「役不足って言ったでしょ?」

「アシュリーは、何か知ってるのか?」

「そりゃそうよ! あの子のことをリーダーに話したの、私だもん」


 私が居ない間に、何か話し合いが行われていたのかな?

 アシュリーさんが、私を追い出そうとしてたのか……

 仲良くさせてもらってたと思ったのに、私の勘違いだったんだ。

 悲しくなる。


「あの子のサポートを受けるだけの資格が、私たちにあるのかなって」

「どういうことだ?」

「私たちに、あの子のサポートは勿体ないってこと」

「意味分かんねーよ」


 二人の会話を、リチャードさんが下唇を噛んで地面を睨みつけながら聞いている。

 ごめん……私も、全然分かんないや。


「フーガってやつ以外は、ミコちゃんの価値に気付いてるのかな?」

「私の価値ってなんですか? ああ、見た目より力が強いとか?」


 そう言って、クルリと回って背中を見せる。

 背負った荷物をアピールしながら。

 これ、80kgあるんですよーなんて言いながら。

 ちょっと、可哀そうな子を見る視線を向けられてしまった。

 解せぬ。


「俺は認めない……けど、試してみないとわからない」

「まったく、リーダーは素直じゃないねぇ。いいよ、ちょっと戦闘したらすぐに分かるから」


 そう言って道の先に、チラリと視線を向けるアシュリーさん。

 うん、私の気配探知の圏内にはとっくに入ってる。

 職持ちゴブリンが3匹。

 ナイトが2匹と、メイジが1匹。

 楽勝でどうにかできる魔物だ。


 アシュリーさんが緊張した様子で、黒いとんがり帽子を被りなおす。

 それから、後ろに手を出す。


「ミコ、ロッドをちょうだい!」

「あっ、ごめん……俺が持ってる」


 アシュリーさんの呼びかけに、フーガさんが申し訳なさそうに腰から杖を抜いて渡していた。

 うん、アシュリーさん手が塞がってると、危ないからっ手ぶらなんだよね。

 悪路とか杖があった方が安全かもしれないけど、地面をカンカン音を立てながら歩くなんて魔物を呼ぶだけだし。

 なにより、ババ臭いって言って嫌がるんだよね。

 まだ、23歳だもんね。

 杖をつく歳じゃないもんね。


「あっ、ありがとう」


 気まずそうにフーガさんから杖を受け取って、目の前に突き出して構える。

 リチャードさんも、ご自慢の剣を抜いて構える。


「えっと……敵か?」

「じゃないと、杖を頂戴なんて言わないでしょ」


 どうやら、フーガさんの方はまだ察知できていなかったのか。

 結構抜けてる人なんだよね。

 だから、色々と心配なんだけど。

 腕は確かだから、戦闘になると凄く頼りになる。


「大丈夫だと思う?」

「勿論ですよ! A級冒険者パーティですよ?」


 相手になるはずがない。

 瞬殺だと、思ってた。


「魔法の発動が遅くないか?」

「普通は、こんなもんよ! ほら、そっちのナイトをお願い!」

「分かったよ! って、いつもより硬いぞ!」

「く、身体が重い……」

「リーダー、しゃがんで」

「チッ!」


 あれ?

 めちゃくちゃ、手こずってる。

 フーガさんとリチャードさんが、それぞれ1匹ずつゴブリンナイトを受け持ってたけど。

 すぐに倒すかと思いきや、拮抗してるし。

 そうこうしてるうちに、メイジの放った火球がリチャードさんの肩を掠めていった。

 アシュリーさんの指示がなければ、顔面に直撃していたかも。


「肩をやられた! ミコ、ポーショ……」


 いや……私、あなたについさっき、クビにされたんだけど?

 

「チッ!」

 

 なんで、リチャードさんが不機嫌になるんだ。


「ウケる! あいつ、自分でクビにしといて忘れてたのかな? てか、要らない子扱いしてるのに、めっちゃ頼ってるの笑える」

「あー……ああいった、雑用は私の仕事でしたから」


 なにこの人。

 何がおかしいのか分からないけど、めっちゃ手を叩いて地面を笑い転げてる。

 ちょっと、馬鹿にしすぎじゃないかな?

 クビになったパーティだけど、よく知りもしない人に笑われると何故か腹が立つ。

 

「どうにか、なったわね」

「もっと、早く撃てなかったのかよ! 結構、被弾しちまったじゃん」


 それから少しして、アシュリーさんの放った氷弾で戦況が一変した。

 ゴブリンメイジは、頭と胸を貫かれて即死だったし。

 ナイトも盾で受けて腕を骨折したっぽく、その後の動きは精彩を欠いていた。

 それでも、数合は打ち合っていた。

 もしかして、特殊個体だったのかな?


「ないない、普通のゴブリンナイトとゴブリンメイジだったよー。マジ、あんなん見ただけで倒せるわ」

「カナタさんって、B級冒険者なんですよね? 職業はなんなんですか?」

「ん? 無職だよー」


 無職って……さっき、隠密系の上位スキルというか特級クラスのスキルを、二つも使ってましたよね?

 それで、無職って。

 まだ、手品師とかって言ってくれた方が、納得できるのですが?


「じゃあ、手品師」

「さっきから、ちょいちょい私の思考に返事してますよね? あまりに自然すぎて、スルーしてましたが」

「じゃあ、メンタリスト」

「メンタリストってなんですか!」


 よく分からない職業が出てきたけど、真面目に答える気が無い人に問いただすだけ無駄かな?

 とりあえず、それで納得しておかないと……話が終わる気がしないし。


「ミコ、み……」

「はい、水な……すまんな、俺で」


 リチャードさんが剣を振って血糊を落とすと、右手でそれを前に突き出しながら左手を差し出していた。

 フーガさんが、水筒を渡していたけど。


「剣の手入れは、自分でな」

「おい、そのまま鞘にしまったら、ミコに叱られるぞ!」

「ミコは、もういないって」


 リチャードさんの剣を押し返しつつ、自分の剣をそのまま鞘にしまっていた。

 いや、ぱっと見で血糊は落ちたように見えるかもしれないけど、血脂が付いたまま鞘にしまわないで。

 鞘も洗わないといけなくなるし、二度手間というか……大手間になるんだけど。

 なぜか、何べん言ってもフーガさんは、たまに忘れてそのまま鞘にいれちゃうんだよね。

 せめて、拭いてから入れてくれたらいいのに。

 てか、そのための布を渡してるのに……


「鞘も内側が腐る原因になるって言ってたし、しっかりした方がいいと思うぞ」

「ああ、俺のはリーダーのと違って、数打ちの安物だからな」

「といっても、タダじゃないんだから、大事にしろよ」


 リチャードさんは、しっかりと剣を布で拭いてから鞘に入れていた。

 うん、リチャードさんの方は、鞘込みで一級品だからね。

 血糊やら血脂が付いた状態で鞘に入れちゃうと、次使う時に抜けにくくもなるし。

 その辺りは最初からしっかりしてたから、安心できた。


「こんなものか……」


 リチャードさんが複雑そうな表情で、呟いていた。


「ざまぁ」


 カナタさんが、楽しそうな表情で呟いていた。


「って、展開じゃないのか……」


 とガッカリした表情で、付け加えながら。

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