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聞いて欲しい

 学校に着いた俺達は一緒に教室に入る。


 登校途中に話をしていたことで、少し遅れてしまい、教室ではすでに一限の授業が開始されていた。


 俺と愛花が一緒に登校してきたことに気づいたクラスメイト達は一様に驚いた表情を見せる。


「貴方たち、遅刻ですよ。早く席に座りなさい」


「「はい、すいませんでした」」


 俺と愛花は先生に向かって謝る。そして、すぐに自分の席へと向かった。


「それじゃあ、また後でね」


「ああ、またな」


 それから授業は再開され、先生の話が開始される。その間中向けられるクラスメイトの視線を感じながら、俺は鞄から教科書を取り出し、該当ページを開いた。


「それでは今日はここまで。各自しっかりと復習しておくように」


 先生がそう言って授業が終わる。すると、すぐさまクラスメイト達は行動を起こした。


 愛花の方は、同じテニス部のクラスメイトを始め、多くのクラスメイトによって囲まれていた。


 一方で俺の方は、真司と華城が集まってきた。そして、少し離れた所で篠宮がチラチラとこっちを見ていた。


 クラス委員である彼女は多分、あまりクラスメイトのプライベートに干渉してはいけないとでも思っているのだろう。


 その結果が、席に座りながら、一見興味ありませんよという体を装うことに繋がったようだ。


「おい、天成。お前一鈴と一緒に来てたけど、どういうことだよ」


 最初にそう聞いてきたのは真司。その言葉には戸惑いと共に少しの怒りのようなものを感じた。


 真司の問いかけに華城も耳を傾けていた。思った通り聞きたいことは同じようだった。


 自分の席に座りながら離れた所で耳を傾けている篠宮の方を見ると、篠宮の耳がピクピクと動いていた。


 彼女の反応を見れば、簡単に確信することが出来た。


「ああ、それについてはしっかりと話そうと思っていたのだ。みんなには迷惑もかけたし、世話にもなった。だから聞いて欲しい」


 ここにいるみんなは俺が落ち込んでいたときに励ましてくれた。クラスメイトとして一緒に笑ってくれた。だからこそ、自分の選択を聞いて欲しかった。


 それからしばらく経って昼休み、俺達は教室から少し離れた所に移動した。昼休みまで待ってもらったのは、全て話すだけの時間が欲しかったからだ。


 授業間の短い時間ではゆっくり話す事は出来ない。だから、時間がたっぷりある昼休みに話したいと伝えた。


 それをみんなは快く受け入れてくれた。


 ちなみに少し離れた所で聞いていた篠宮にも声をかけた。少し迷ったけど、彼女にも話を聞いてもらいたいと思ったからだ。


「俺、学校に来る前に愛花と話したんだ。自分のこと、これまでのこと、これからどうしたいかってこと。色々話した」


 俺はみんなに向けて登校中の出来事を話した。話している途中、何度か恥ずかしくて詰まってしまうこともあったが、三人は静かに聞いてくれた。


 だから俺も偽ることなく、全てをさらけ出すことが出来た。


「……ということがあって、もう一度愛花と幼馴染みとして向き合っていきたいって、そう決めたんだ」


 全部を話し終えると三人は各々の反応を見せた。


「まあお前がそう決めたんなら俺は何も言わねーよ。お前のやりたいようにやってみれば良いんじゃねーの」


「うむ、私は佐伯くんの覚悟に感服したぞ。自分自身と向き合うというのは簡単なようで実はとても難しい。それが出来る人間は一握りだ。私はクラスメイトとして誇りに思うぞ」


 真司と篠宮は俺の考え、想いをくみ取ってくれたのか、そう言ってくれる。


 一方で華城だけがジッとこちらを見つめたまま口を開くことはなかった。


「……舞?」


 隣に立っていた篠宮が声をかけるも反応はなく、そのまま沈黙の時間が流れる。


 5秒、10秒と時間は流れていく。そして、ついに華城が口を開いた。


「……佐伯くん。うん、佐伯くんにどういう想いがあって、これからどうしたいのか、よく分かったよ」


 いつもの元気な声とは似つかない、聞こえるかどうかギリギリの声量で華城は話す。


 その声を聞き逃さないように、俺は華城の声にしっかりと耳を傾けた。


「ありがとう華城。分かってくれて……」


 そうお礼を言うと、華城は首を横に振る。


「でもまだ納得は出来ない。こんな少しの時間で、一方的に話されて、納得することなんて出来ない」


 華城に言われ、俺はまた同じ事をしてしまっていることに気付く。一方的に話す、俺の事情だけを伝えて納得してくれってのは間違いだと、そう理解していたはずなのに。


「ごめん華城、俺、一方的に話すばっかりで……」


「ううん、謝って欲しいわけじゃないよ。私は……私の気持ちだって佐伯くんに知って欲しいの。だから佐伯くん、今日の放課後に時間を作って欲しい。私の気持ち、私の想いも佐伯くんに聞いて欲しいの」


 そう言われて、俺は断ることなんか出来なかった。


「分かった。じゃあ、今日の放課後あの公園で」


「うん、ありがとう」


 頷いた華城はいつもと変わらない満面の笑みを浮かべた。

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