俺と幼馴染と妹と
久しぶりの投稿です。よろしくお願いします。
ちゅんちゅんというスズメの鳴き声とともに目が覚める。
「……なんか懐かしい夢を見たな」
夢の中で、愛花のことを守っていた。
小学生時代、まだ愛花に対して劣等感や引け目を感じていなかった頃のことだ。
その頃の愛花はとても弱々しくて、俺が守ってあげなきゃなんてカッコつけたことを思っていた。
「それにしても小学生だからって女子の顔面殴るとか……今にして思うと凄い事してたな俺」
あの時のことは今でも鮮明に覚えてる。
確かあの後、大泣きしてる女子のリーダーが先生に言いつけに行って、親も呼び出されてめっちゃくちゃ怒られたんだった。
学校内でもかなりの話題になって、みんなしばらく俺のこと避けるようになったもんな。
まぁそのおかげもあって愛花がいじめられることは無くなったし、真司とも知り合えたから結果的には良かったけど。
あの頃の俺は、愛花の隣に立っても恥ずかしくない人間だったんだと今は思っている。
「いつからかな……こんな風に考えるようになったのは」
日に日に明るく綺麗になっていく幼馴染、そんな幼馴染と比べて自分が劣っていると思うようになった。
人気者になっていく彼女の隣に立つ資格は俺には無いんじゃないかと思うようになってしまった。
恋心を自覚しても動かないでいる自分が情けなくて、自分自身が嫌いになっていった。
それでさらに劣等感は増大していく。
まさに負のスパイラルだな。
「っと、いかんいかん」
愛花のことは諦めるって……そう決めたじゃないか。
華城と話して気が楽になったのは確かな事実で、あの時の華城の言葉はきっと、俺が欲しかった答えだった。
諦めること、考えるのを放棄すること、その道に進むために背中を押して欲しかった。
結局俺は、こんな風にしか生きられない。
俺は本当に、俺自身が嫌いだ。
◇◇◇◇
「お兄おはよー」
リビングに向かうと、一足早く起きて学校に向かう準備を済ませていた妹の可奈がソファーに座っていた。
「ああ、おはよう。今日は早いな可奈」
「うん、今日日直だからさ。早く行かなきゃ行けないんだよねー」
「そっか、大変だな」
「……あれ?」
「ん? どうかしたか?」
いつも通り可奈と会話をしていると、訝しむような顔で可奈が俺を見てきた。
「なんかお兄元気ない?」
「は……?」
「いつものお兄とちょっと違う気がする。ううん、そうじゃない。いつもよりも私が嫌いなお兄って感じがする」
急に訳の分からんことを言い出す可奈。嫌いな感じとはなんの事だろうか。
「何言ってんだよ、俺はいつも通りだぞ」
「ううん、そんなことない……その感じすっごく嫌い。私基本的に人を嫌いになることなんて無いけど、今のお兄のことは大嫌い」
「大嫌いって言い過ぎだろ。何が気に入らないんだ」
心当たりは無い……いや、あるいは無いと思いたいだけなのかも知れない。
本当は分かってる。
「その顔、その雰囲気、悲劇の主人公ぶったその態度がマジでキモい」
「おい、言い過ぎだろ」
もっとオブラートに包んでくれるものだと思っていたが、さすがは自慢の妹。
言いたいことはズバッと言う真っ直ぐな子に育ってくれたようだ。
「こんなの私のお兄じゃない。昔のお兄はすっごくカッコよくて優しくて、私と愛花姉のことを一番に考えてくれて、そんなお兄が私は好きだった。きっと……愛花姉だって」
「昨日帰ってきたときは少し昔に戻ったのかなってそう思ったの。それが愛花姉じゃなくて他の人でってのは少しムッとしちゃったけど、それでも昔のお兄に戻ってくれるんじゃないかって、そう思った」
可奈は体を震わせながら、涙を流す。
「もうホント、いい加減にしてよ。お願いだから、お兄はちゃんとお兄でいてよ」
その願いを言わせてしまっていること、可奈を泣かせてしまっていること、その事実は俺の胸を深く深く抉っていく。
妹の前を歩くのが兄、尊敬される姿を見せてこそ、兄を名乗れる。
だが、今の俺はどうだ。
情けなくも、妹を泣かせている。
可奈の言うとおりだ。傷つきたくないから目を背けた。目を背けたことを仕方ないことだと納得したかった。だから俺は、悲劇の主人公ぶった。
本当にその通りだ。
俺は両手を目一杯広げて、そして自分頬を思いっきりひっぱたいた。
バチっという音がリビングに響く。
「えっ……お兄何やってんの? 頭おかしくなったの?」
「いやなに……自分のこと嫌いすぎて殴ってやりたくなっただけだよ」
ジリジリと痛みが広がっていくのを感じる……けど、その痛みが俺の視界を広く、気持ちが晴れやかになっていくのを感じていた。
「ありがとな可奈。可奈がそう言ってくれたおかげで自分のこと本当に嫌いになる前に踏みとどまることが出来そうだ。可奈のおかげでお兄ちゃん、まだやり直せる」
そう言った俺はもう、迷いなんかなかった。
今日見た夢、それはきっとこうするために……いや、俺自身が自分に向き合い、行動するために見せられたものなのかも知れないな。
なら、俺のすべき事はたった一つだ。
「俺、もう一回愛花に告白しにいこうと思うんだ。今回は恋人になって貰うためじゃなくて、またもう一度愛花の隣に立てる幼馴染みになるために」
そう伝えると、可奈は涙で赤く腫らした目を細めながら、「うん」と大きく頷いた。
これから少しずつ投稿していきたいと考えています。また、更新が止まることがないように気をつけたいと思っていますので、応援よろしくお願いします。




