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人国記を読む  作者: 三河
西海道11ヶ国
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肥前國

肥前国は今の長崎県(壱岐・対馬を除く)と佐賀県です。

挿絵(By みてみん)

肥前(ひぜん)

肥前国の風俗山陰を合たるより猶勇国にして、勇に趣く時は義を知て怯む色なし。

(肥前の風俗は山陰を合わせたよりもなお勇ましい国で、勇ましさが必要な時にそれが正義であれば怯む気配は無い)


誠に其国の湿土を生得るとは云ながら、百人にして九十九人如斯なり。

(誠にその国の風土を生まれながらに得ているとはいうが、百人に九十九人はそのようである)


若一人不勇の人あるは珍敷事ともなり。

(もし一人でも勇気が無い人が居るのは珍しい事である)


武士の風俗猶以如斯と可知也。

(武士の風俗は猶を以て斯くの如しと知ることができる)


雖然無風に勇を行うが故に、温和の志を不知也。

(そうではあるが、自然体で勇ましくあるから、温和の心を知らない)


されども上としては下を哀み、下としては上を敬い、主君の為に命を捨ん事を常に願いて志すこと士より国民に至るまで皆如斯なれば、百姓町民と云えども、義理強くして、身に難遁罪科ありて、死に究ると知る時は、男女に不限致死事露程も惜しまざる也。

(それでも上は下を哀れみ、下は上を敬い、主君の為に命を捨てんと常に願い志すこと、武士から国民にいらるまで皆そのようであるから、百姓町民と言っても、義理強く、自分に逃げ難い罪科があり、死が決まっていると知る時は、男女に限らず死する事を露程にも惜しまない)


音声卑劣なり。

(声色が卑劣である)


風儀は信州にして、智の少なき国風なれども、人の一和する事は信州に超えたるべし。

(風儀は信州のようで、智恵の少ない国風だが、人の一つになる心は信州を超えている)


・超意訳

肥前の国は山陰地方を合わせたよりも勇ましく、それに義が加われば何事にも怯まない。

99%がそんな人で、勇気の無い人なんて珍しい。


人の性格は生まれ育った土地に左右されると言うが、実にその通りだ。

武士になるとさらにレベルが上がるけどね。


勇ましくあるのが自然体だから、穏やかさとか優しさが足らないかな。

そうは言っても、上司と部下の関係は良好で、武士のみならず民に至るまで、主君の為なら命を捨てる覚悟なんて当然のように持っている。

百姓町民男女を問わず、もし自分に罪があればそれを受け入れ、命を露程にも惜しまない。


声色が下品だね。

性格は信濃に似ており、智恵は足らないけど団結力は信濃以上だ。


・私評

絶賛、賛美、称揚、何があったんだ人国記!

酷評と言えば『声色が下品だね』程度の軽い物。

作者のお気に入り、信濃と肩を並べるほどの高評価である。

いやぁ驚きも驚き…

・一言要約

信濃に比肩する

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