周防國
・周防国
周防国の風俗は健儀第一なれども、吉敷・佐波・都野三郡の者は義理少なく、昨日まで傍輩と肩を双ふる人をも今日は仕合よければ、主君と仰ぐ風俗にして、常の健儀も利欲の為に無になり、法を背く人百人に七八十人如斯。
(周防国の風俗は律儀第一だが、吉敷・佐波・都野三郡の者は義理が少なく、昨日まで仲間として肩を並べていた人でも、今日の調子が良いと見るや主君として仰ぐ風俗で、日頃の律儀さも利欲の為に無となり、百人に七十~八十人は法に背く人である)
残面ニ三十人の人柄は如形嗜む様なれども、終には右の人に従う故に、皆其風俗となるべし。
(残る二十~三十人の人柄は形式を嗜んでいるようだが、終には上記の人に従ってしまうため、みんな同じ風俗となる)
大嶋・玖阿・熊毛三郡の人は西郡の人より少はマシ也。
(大嶋・玖阿・熊毛三郡の人は西郡の人より少はマシである)
然ども是も堕落の方に付たる風俗なり。
(しかしこれも堕落しやすい風俗である)
能き人出来る事希にして、悪事も少なく善も又希なり。
(有能な人が出て来ることは希で、悪事も少ないが善事もまた希である)
是国の人は気少き故、つれなくして不敵なる意地は少も無之。
(この国の人は気が少ないので、冷たくされても反発する意地は少しも無い)
・超意訳
周防国の人は律儀なんだけど西側の人は義理が少ない。
仲間内でも出世しそうと見るや取り入ろうとするし、利欲にまみれて律儀もどこかに行ってしまい、法に背く人が7割8割いる。
残りの2割3割はまだ踏みとどまっているが、時間の問題だね。
東側はまだマシだが、こっちも堕落しやすい。
有能な人は出てこないし、悪事も少なければ善事も稀。
この国の人は気が弱くて意気地なしだ。
・私評
『マシ』という言葉は結構な昔から使われていると新しい発見があった。
それにしても『律儀』と言っているが、それに繋がるエピソードが欠片も無いのはどういうことだ?
・一言要約
気弱な意気地なし




