播磨國
・播磨国
一.
播磨国の風俗智恵有りて義理を不知。
(播磨国の風俗は智恵が有っても義理を知らない)
親は子を謀り、子は親を出し抜き、主は被官に領知を鮮く與へて好き人を掘り出し度と志、亦被官となる人は主に奉公を勤ることを第二にして、調儀を以て所知を取らんと思い、悉皆盗賊の振る舞いなり。
(親は子を騙し、子は親を出し抜き、上司は領地を与えて有能な者を部下にするべく探し出そうとし、また部下になる者は奉公を勤めるのは第二にして、才知で所領を取ろうと思い、悉く皆盗賊のような振る舞いをする)
侍は中々不及是非也。
(侍は中々是非にも及ばない)
若き侍の風上にも可置国風にあらず。
(若き侍の風上に置けるような国風では無い)
偏に是国は上古より如斯の風俗終に暫くも善に定まることなし。
(偏にこの国は昔からこのような風俗で、終に少しでも善に定まった事が無い)
一.
周武太公を求、蜀劉備孔明を求玉う。
(周の武王は太公を求め、蜀の劉備は孔明を求めた)
誠に大成掘出と可謂也。
(実に優れた人を探し出したという物である)
於和朝も名人の隠士を百貫士を千貫万貫も與て呼出すを掘出しとす。
(わが国でも隠遁した名人を百貫、士を千貫万貫も与えて呼び出すことを掘り出しとする)
禄を不與して、好人を可求と思う意地、掘出と可謂乎。
(禄を与えず、有能な人を求めようと思う意地を掘り出しと言ってよいのだろうか?
武法には非ず。
(武士の法では無い)
・超意訳
一.
播磨の人は頭は良いけど義理が無い。
親子で騙し合いをするわ、上司は部下にもっと有能なのを欲しがるし、部下は仕事そっちのけで小賢しく所領を増やそうと狙うし、まるで盗賊。
侍としてどうしようも無いね。
他国の若侍の手本になりゃしない。
この国は昔っからこんな風で、善くなった試しがない。
一.
中国の周王朝の武王は太公望を求め、蜀の劉備玄徳は諸葛亮孔明を求めた。
掘り出しの成功例だね。
わが国でも隠れた名人や、薄給の有能者を好待遇で迎い入れる事を掘り出しという。
しかし、薄給で有能者を求めようというのは掘り出しと言えるのだろうか?
武士としてはあり得ないね。
・私評
たぶん播磨の人は有能だけど人徳が無いのだと言いたいのだろう
・一言要約
盗賊の如き国




