若狭國
・若狭国
若狭国の風俗人の気十人は十人一和せずして、思々の作法なり。
(若狭の国の人は十人十色で一つにまとまらず、何事も思い思いでする)
今日親み有りて、明日はその親みを離れて、其人の悪儀を人に触知らするの類也。
(今日は親しくても、明日は親しみが失せて、その人の悪い所を触れ回る類である)
誠に九思一言の語に甚た違たる国風なり。
(本当に九思一言の言葉とは全然異なる国風である)
※九思一言:『九度考えて始めて一言言葉を発する』の意、熟慮して物事はせよという熟語
さるに及て下としては上みを欺き、気の怠りあり。
(そんなのだから、下の者は上の者を欺いて、怠ける事がある)
上より其罪を咎められては、己か科を隠し、非道のように云いなし、吾か非を不知にも非すして如斯なる事、実に卑しき風俗也。
(上からその罪を咎められたら、その罪を隠し、非道であると言い出し、自らの過ちを知らないはずも無いのにそんな感じで、実に卑しい)
然ども取回し利発なる国風故に、差当る問答なとには如形弁舌能く、一花は気勢に随て振舞うと言えども、根をとけてしまる意地無之、中途にして止むの類なり。
(しかしながらとりなしの機転が利く国風だから、その場での問答などには能弁で、勢いに乗せて華やかに振る舞うものの、根が溶けてすで無いので、意地が無く途中で止まってしまう類である)
されども両伊の州には勝るべきか。
(それでも伊勢・伊賀の両国には勝っているだろう)
三方郡は江州列の風俗也。
(三方郡は近江国のような風俗である)
・超意訳
若狭の国の人は協調性に欠けており、自分勝手
今日仲良くしても、明日にはある事ない事触れ回る
深く考えるってことをしない国なんだろうね
そんなのだから怠け癖が有って、何か悪事を指摘されたら、素知らぬ顔で惚けて隠そうとする
機転は利くから、その場限りの言い訳は得意だけど、根拠がないからすぐばれる
それでも伊勢や伊賀よりかはマシかな
三方郡の人は近江国の人に似てるね
・私評
言う事は聞かず好き勝手にやって、話す事は適当で、都合が悪い事は誤魔化す
なかなかの酷評、それでも伊勢・伊賀よりは上なんだな
・一言要約
軽薄・身勝手な輩




