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人国記を読む  作者: 三河
畿内5ヶ国
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和泉國

和泉国は今の大阪府西南部地域です。

ちなみに和泉郡、日根郡は西南端部に位置します。

また、石津は今の堺市の一部です。

挿絵(By みてみん)

和泉いずみ

和泉国の人は風俗曾而実儀なく、最も、千人に一二人は実儀の人もあるけれども、都而物の上手なるもの無くこれ、増而名人と云うほどの者鮮し。

(和泉の人は誠実さに欠けている、もっとも千人に一人二人は誠実な人も居るが、有能な人は居らず、ましてや名人と呼ばれる者はまず居ない)


末世も左あるべし。

(この世の終わりのようである)


本この国は河内と紀伊国より割り出したる国と聞く。

(この国は元々河内国と紀伊国から分割された国であると聞く)


先その風俗を見るに、人を誑かし、出家沙門他国の商売の人等金銀を蓄うと見る則は、関東の人を殺害するの類は無うして、懐けて後に品を以てかどわかす等の風儀なり。

(どのような風俗かというと、人に言いよって僧侶や他国の商人が金銀を蓄えているとみるや、関東のように殺すのでは無く、親しくなった後に手練を以て奪い取る等をする)


根本に実儀少なきか故に、譬ばカミソリの金の悪きを如見也。

(根本的に誠実さが少なく、例えば刃の悪いカミソリのようである)


人前行跡は如形見ゆるといえども、彼のカミソリの金少なきが如く故に、後には可用様無きに等し。

(人の進んだ跡には、その人となりが見えるというが、彼らはカミソリの刃が少ないかの如くだから、後に残るものは無いに等しい)


たまたま実儀の人ありといえども、国風の垢を削る人無き故に、身持惰弱にして踏しむる心も後は大形失こと也。

(たまたま誠実な人が居ても、悪い所を改める人が居ないから、堕落して決意も大方失われてしまう)


石津、神馬・藻・塩・船乗り余国に勝れたり。

(石津の神馬、藻、塩、船乗りは他の国より優れている)


この国を傾けん事は5日の内なり。

(この国を傾ける事は5日の内で出来る)


威を高く振り、卒法を以てこれを動ば不可経数日也。

(強気に出て、兵法を以て動かせば数日を経たらない)


次に疱瘡人多し。

(次に天然痘の人が多い)


篠田明神に野狐多し。

(篠田明神に野狐が多い)


この野狐人を能く誑かすことを得たり。

(この野狐は人を能く誑かすことをする)


さればこの国はただ野狐に衣服をしたるに似たり。

(まるでこの国は野狐に衣服を着させたに似ている)


不頼別て和泉府日根悪。

(和泉郡、日根郡は頼りにならず悪い)


・超意訳

和泉の人で誠実な人は極僅か、基本無能で、まるでこの世の終わりのよう。

人に貯蓄があると、関東だと殺して奪うが、この国の人は近づいて、仲良くなったら騙し取るような連中だよ。

人の行いの後にはその人となりが現れるものだが、この国の人の後ろには何も残らない。

極まれに善人が居ても悪い所を改めないから、結局堕落してしまう。

この国は強気に兵を進めれば数日もかからず落ちるほど脆弱でどうしようもない。

天然痘の人が多いね、あと野狐も多い。

この狐が質悪くて人を騙すんだが、言ってみれば、この国の人は服を着た野狐みたいなものだ。

和泉郡と日根郡は頼りにならず特に悪質。

ただ、石津の神馬、藻、塩、船乗りは他の国より優れている。


・私評

えらい言われようだな。

言うに事を欠いて『服を着た野狐』と来たものだ。

さらに関東はさも殺伐としているかのような一節を入れる芸の細かさは流石である。

・一言要約

服を着た野狐

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― 新着の感想 ―
[一言] ●和泉國 ついに人間扱いされなくなった……。(゜д゜;||)
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