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人国記を読む  作者: 三河
東海道15ヶ国
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武蔵國

武蔵国は今の東京都・埼玉県、および神奈川県北西部地域です。

挿絵(By みてみん)

武蔵むさし

武蔵国の風俗闊達にして気広し。

(武蔵の人は度量が大きく、心が広い)


譬ば秘蔵の道具を過ちに因って損る時は、その者の恐哀むは最なるに、其の主且而後悔の気色無くて、結句夫に恩を興して情を深くする類の心なり。

(例えば秘蔵の道具を過って壊した時、壊してしまった者は戦々恐々となるが、主人は壊れたことを後悔する気配すらなく、壊してしまった者を気遣い労わる心がある)


仔細は秘蔵の器をたくみて可割ようなし。

(秘蔵の器を故意に割ったのではない。)


吾も人も過ちするは無念なりと言えども、咎めるは亦此方の過りなりと思案して名人の風俗なり。

(自分も人も過ちするのは無念であると言えども、ここで咎めるのはこちらの過りであると考える人格者の風がある)


因玆軍に合うて敗軍すると言えども、敢えてその気を不屈して、能く気を改めて敗軍の士を集めて出陣するの類なり。

(敵軍と戦い、敗軍になったとしても、心は折れず、敗軍の兵士を集め士気を改め、再び出陣するようなものである)


凡そ気に乗と気に後るとは雲泥万里なりと言えども、乗も後るも亦しいて可なりとしかたし。

(気に乗る場合と気が乗らない場合では雲泥の差があるのが基本だが、乗っても乗らなくてもやろうとすれば出来る)


只道理に因る時は気乗し、不可なる時は己か非を知って承而制するを上とす。

(ただ、道理に沿っている時は気乗りし、気が乗らない時は気が乗らないのは自分の心情なのかそれとも道理ではないのかを知ってから行動するのが最上ではある)


然れどもこの国風尤潔き風俗なり。

(しかし、この点は国の最も潔い所である)


次に気広きを以て驕る気強し。口伝

(次に心が広いことから傲慢の気が強い。仔細は口伝による)


・超意訳

武蔵の人は明朗闊達な人である。

例えば大事な物を壊されても、怒るどころか気遣い労わる人格者の風がある。

また、戦に負けたとしても気持ちは負けず、もう一度戦いに挑む不屈の精神を持っている。

小さなことに一喜一憂する事なく事を成せるのはこの国の最も良いところだ。

ただ、心の広さが傲慢さに繋がることがある。


・私評

今のところ一番良い評価では無かろうか?

貶しどころもおまけついでに『驕る気強し』と書いてあるに過ぎない

今までで順位を付けるなら1.武蔵 2.三河 3.遠江と言ったところであろうか

・一言要約

明朗闊達な人格者

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