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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十七幕】魔王討伐連合軍と反撃の始まり
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20

 

 ハニービィ達に監視を頼んで幾日か経ち、例のクレーマー達は今も活動を続けているが、店員やその店を贔屓にしてくれている客がクレーマーと対峙してくれているお陰でこれ以上増長する気配はない。


 しかし、何とも解せない事がある…… 奴等はどうして此処には来ないんだ? もしかして俺の店はクレームを入れなくとも客が少ないからスルーしてるの? ちくしょう、馬鹿にしやがって…… 絶対捕まえてやるからな!


『ライルよ、少々怒りのベクトルが違うと思うのだが? 』


 ギルの冷静な指摘は一先ず置いといて―― この数日ハニービィで邸を監視していた訳だが、何回か夜中に邸から出るフードローブの人物を確認している。クイーンに指示してもらい、ハニービィが後をつけるが、その何れもがクレーマーと接触し状況報告を聞き、それが終わると脇目も振らず邸へと帰っていくだけ。


 ここで分かった事と言えば、たぶんフードローブは男性で、邸の貴族本人ではないだろう。何故そう言えるのか? それは声だ。ハニービィを通して聞こえてくるフードローブの声は低く男性のものだけど、邸の所有者である貴族の声とは明らかに違っていた。恐らく使用人かな? 問題は誰の指示を受けているかだ。


 普通に考えればその雇い主である邸の貴族なのだが、今まで監視していた俺には、どうにもそんな事をするような人物には思えない。それにカラミアの調べでは、中立派ではあるがインファネースには好意的で、自身の領地でも人望はそれなりにある。黒い噂も聞かないと言う。


 そうなると可能性が高いのは貴族派の息が掛かった人物が使用人としてあの邸に紛れ込んでいるのでは?


 と、そんな風な事をカラミアを含めた代表のお三方にメールで報せたところ、概ね俺とどう意見だという返信が来た。


 加えてカラミアからのメールでは、そのフードローブの男は邸の中で何らかの方法を使い、本来の主人である貴族派の者と連絡を取っているのではと睨んでいるようで、恐らく転移魔術を施した魔石か魔核を利用していると推察していた。


 ―― 連絡用の鳥型ゴーレムは、王妃様とその直属の者達しか使っていないし、確実性に問題がある手紙を出すとも考えられない。そうなるともう転移魔術しか残っていないわ――


 ―― よく分からないのですが、転移魔術ってもうそんなに普及しているんですか? ――


 ―― そうね…… 子爵ぐらいまでなら、術式が刻まれた魔石や魔核を手に入れられると思うわ。それを解析して、もしくはしてもらって、転移座標を変更したんでしょうね――


 ―― ふむ、そうなるとあの者は魔術師という事かの? ――


 ―― いや、それは早計だと思うぜ? 爺さん。貴族派の奴に与する魔術師が座標を変更して、その使用人に扮する奴に渡したって可能性もあると、アタシは思うんだけど? ――


 ―― という事は、インファネースの中には貴族派の間者がもう一人いることになりますね。転移魔術を使うにしてもインファネースを包む結界の外と中を繋ぐ事は出来ませんから――


 ―― そこまで調べている時間はないわ。そのフードローブを捕まえれば分かる事よ――


 何れにしても、結界がある邸の中で何が行われているかなんて知る由もない。もうこれ以上粘っても進展はないと俺達の意見は一致した。


 ―― 漸くあいつらを取っ捕まえるんだな? いい加減我慢の限界だったんだ。腕がなるってもんさ――


 ―― フォッフォッ、儂の分も残してくれると嬉しいのじゃがのぅ――


 メールの文章からでも物騒な雰囲気が伝わってくる。


 ―― やるなら機会を合わせて一斉に捕まえる必要があるわ。少しでも動きが悟られたら逃げられるかも知れない。私の方でそのフードローブの男が何者か調べておくから、分かり次第メールを送るわ。あの邸にいる使用人はそう多くなかった筈だから、そんなに時間は掛からないと思うの。問題は実行者とその男を、気取られる事なくほぼ同時に捕まえるにはどうしたら良いか…… ――


 ――それは俺に任せてくれませんか? 詳しくは話せませんが、俺ならその全員の居場所を把握出来ますし、現在地をメールにて逐一報せます――


 ハニービィ自体は個人の判別は出来ないけど、クイーンなら問題ない。負担は大きいけど頑張ってもらうとしよう。そしてそれを俺が代表達にメールを送れば、常にクレーマー達の居場所を知る事が可能だ。


 ―― 決まりじゃな。儂は東商店街に来た者を漁師達と協力して捕まえるとしよう。人魚さんらの店に迷惑を掛け、彼女達を侮辱したとかなり怒っておったからの。惜しまず力を貸してくれるじゃろうて――


 ―― アタシは妖精達と一緒に暴れてやるよ。あのクソ野郎共にアタシ達の恐ろしさを教えてやろうじゃないか。妖精達には遠慮なく本気で悪戯していいと言っとくかな――


 ―― フードローブの男は私に任せてくれないかしら? 曲がりなりにも相手は貴族とその関係者。私以外だと問題になるかも知れないわ――


 ―― 南商店街にいた場合は、店主総出で捕まえてやりますよ。みんな結構鬱憤が溜まっている様子だから、そろそろ吐き出しておかないといけませんからね――


 こうして着々と反撃の準備を整えていく。待ってろよ、気分よく嫌がらせが出来るのはもう終わりだ。


 最終的に何を企んでいたのかなんて正直どうでもいい。売られた喧嘩は買う、それだけだ。細かい事は捕まえた後でカラミアがどうにかしてくれるさ。

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