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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十六幕】七人の勇者候補と戦禍の足音
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『オルトンさんは冒険者達とエルマンさんをお願いします。アンネとテオドアと堕天使の皆はガーゴイルを頼む! 残りは俺と一緒にウェアウルフの相手だ』


 俺の魔力念話を受けて各々が行動に出る姿に、まだ頭が追い付いていないのか、俺達以外の敵味方共に唖然と立ち尽くしていた。


 その間にもアンネ達が次々とガーゴイルを倒していく様子を、ハニービィを通して確認する。


 〈ハハ! 相棒の魔力が無くとも、数秒くらいは変化出来んだぜ! 足りなくなっならあいつらから魔力を奪えば良いし、楽なもんだな〉


 魔術で自分の体を雷に変化させたテオドアが、ガーゴイルの魔力を奪いながら感電させていく。テオドアはこういう大勢の敵を相手するのに向いているようだ。本人も楽しそうで生き生きとしているよ。まぁレイスに言うのもなんだけど。


 〈ぐぬぬ、テオドアめぇ~。一人だけ楽しそうにしやがって、こっちも負けてられねぇ! あたしの愛機の性能を見せ付けてやろうじゃないの!! いくぞぉ! ダブルロケットパーーーンチ!! 〉


 アンネが操縦するゴーレムが両腕を飛ばし、ガーゴイルを殴り潰し、今度は両腕を戻して太股のパーツを開き、金属で作られた筒状の物を取り出す。


 〈ロボット漫画の定番と言えばやっぱコレでしょ! ビームサーベル!! 〉


 筒状の先端から光を集束した刃が形成され、ガーゴイル達を焼き斬っていく。これには岩と同等な頑丈を誇るガーゴイルも紙切れのように切り裂かれてしまう。あれを作ったシャロットの熱意と執念が伝わってくるね。


 〈総員、構え! この槍の一突きに己の全てを込めろ! 〉


 十名の堕天使達が槍を突き出し、ガーゴイルへと突っ込む。只でさえ強靭な肉体を、更に魔術で底上げした突進から繰り出す槍の威力は、ガーゴイルの体を貫き飛ばしても尚止まらないのを見れば容易に図れるだろう。


 今も激しい空中戦を繰り広げる中、ウェアウルフはやっと状況を飲み込めたようで怒りに顔を歪ませた。


「くそったれ! 何処にこんな戦力を隠していやがった!? 」


「落ち着けウォルフ、まだ俺達が負けたと決まった訳じゃない」


「そうそう、ちょっと面倒になっただけよ。全員殺す事には代わりないわ」


 まだ数的に有利だからなのか、ウェアウルフ達には余裕が残っている。そんな彼等の前にエレミアとゲイリッヒ、そして男の子姿のムウナが立ちはだかる。俺? 俺はその少し後ろでサポートですよ。


「さてと、漸く貴方達を斬れるわ。よくもライルを殺すとか、好き勝手言ってくれたわね」


「我が主への暴言、その命でもって償って頂きましょうか」


「もじゃもじゃ、たべづらそう。でもムウナ、すききらい、しない! 」


 まさに一触即発。まだお互いの出方を窺い睨み合う中、冒険者達とエルマンにガーゴイルが襲い掛かる。


「ふんっ! その様な軽い一撃では、この結界は破れはしない! 」


「そ、その鎧は、あんた神官騎士か? 何で此処に? そもそも何処から現れた? 」


「説明はここを乗り切った後だ! 今は生き残る事のみを考えよ!! 」


 まだ若干困惑気味の冒険者達へ叱咤したオルトンは盾を構え直すと、それに感化された冒険者もやっと下げた剣を上げる。


 良し、向こうはオルトンに任せて大丈夫そうだな。ガーゴイルもアンネ達が破竹の勢いで倒しまくっている。問題はウェアウルフの実力がどのくらいかって事だ。





 先に仕掛けたのはゲイリッヒだった。血液操作で爪の間から血を外に出して大鎌へと形作ると、ウォルフに向かって横薙ぎに振るう。


 しかし、ウォルフは上半身を後ろに剃らして余裕で躱す。それでもゲイリッヒの追撃は止まらないが、尽く避けられしまう。まさかゲイリッヒの攻撃が掠りもしないとは……


「人間じゃねぇと匂いで分かっていたが、ヴァンパイアだったか! その大鎌はさぞ切れ味が良いんだろうな? でも遅いんだよ! 当たらなければそんなもの棒切れと同じだ!! 」


 ウォルフは更にスピードを上げ、ゲイリッヒの懐に潜り込んでは、毛に覆われた指に格納していた爪を出して服ごと体を引っ掻く。


 胸から腹にかけてウォルフの爪で抉られても、ゲイリッヒは顔色一つ変えずに傷口から流れ出る血を弾丸に変化させ、至近距離からウォルフに撃ち込む。だが、ウォルフの姿が一瞬ぶれて気付けば真横に移動していた。


「距離が近ければ当たると思ったか? 残念だったな。まだまだ速くなるぜ? 」


「ふぅ…… これは少し時間が掛かりそうですね」


 ゲイリッヒが体の傷を再生させながら、珍しく溜め息を吐く。コボルトキングの下半身を持った魔王も随分と速かったが、ウォルフはそれ以上だな。もしかして、他の二体も同じなのか?



「へぇ! 伸びる剣なんて、面白いね。でも、ちょっと(のろ)いかな?」


「只の子供ではないな? この化け物め、貴様はここで殺しておかないと後々面倒な事になりそうだ。俺はあいつらのように甘くはないぞ? 」


 エレミアの蛇腹剣を珍しそうに眺める程余裕で避ける赤い体毛のウェアウルフに、雷魔法も放つが当たらない。嘘だろ? 確かに雷の速度は光よりも遅いが、それでも秒速百五十キロはあると言われているのに、それを避けるなんて……



 ムウナが相手をしているのは黒い体毛のウェアウルフだ。青い体毛のウォルフや赤いウェアウルフと違って、初手からガンガンに攻めてくる。


 剥き出した爪で容赦なくムウナを切りつけていくが、当の本人は気にも止めずに触手で応戦している。それでも、あんな調子でやられ続けたら、流石のムウナも危ないんじゃないか?


 ウェアウルフ、これは思っていた以上に厄介な相手だ。

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