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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十三幕】砂の王国と堕落せし王
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55

 

 アグネーゼは今も苦しそうに浄化魔法を発動させ続けている。魔力自体は俺が補給しているので問題はないが、アグネーゼ自身が何時まで持つか……


「ライル様、私にも魔力をお願い致します。アグネーゼ司祭にだけに頼ってはいられません」


「セドリック司祭…… しかし、それでは誰が神官達を束ねるのですか? 」


「心配は無用で御座います。私の他にも優秀な者が居りますので…… それと、今のままではアグネーゼ司祭はこの膨大な魔力に耐えられそうにもありません。私が半分受け持てば、その分負担も軽減されるでしょう」


 確かに、アグネーゼ一人だけでは例え勝ったとしても何らかの後遺症が残るかも知れない。それなら二人で分担すれば魔力によって肉体に掛かる負荷も半減される。ここはアグネーゼの体を考慮してセドリック司祭の提案を受け入れるべきか。


「お願いします、セドリック司祭」


「はい、お任せ下さい」


 嬉しそうに笑うセドリック司祭に、俺は魔力を繋げて補給を開始する。


「ほぅ、これは…… 成る程、ここまでとは」


 魔力を流されたセドリック司祭は、アグネーゼと同じように上空へと浄化魔法を発動させる。しかし、虹色の光球なのはアグネーゼのと変わりないが大きさが半分程だった。


『アグネーゼさん。今維持している光球を半分の大きさに抑えて下さい。セドリック司祭と二人ならそれで十分な筈です』


『わ、分かりました。ご配慮、感謝致します』


 ゆっくりとアグネーゼの虹色光球が小さくなり、セドリック司祭のと同じ大きさになる。その分、アグネーゼに供給する魔力も半分になったことで、随分と顔色が良くなってきた。


 ふぅ、これならまだ暫くは大丈夫そうだな。


 そう安堵していると、冒険者達から掻い潜り、アンデッドが此処まで攻めてきた。町の守りで後で控えている兵士達がこれを迎え撃つが何体か取り零し、俺のところまで向かってくる。


「ライルは少し下がってて」


 迫りくる獣のスケルトンとグールを相手に、エレミアが雷魔法による雷撃と蛇腹剣で応酬する。あれはバンプリザードとザントウルフとかいう魔獣だったスケルトンか。どれも人間タイプより俊敏な動きをしている。だから此処まで来られたのだろう。


 かと言っても、今は兵士達とエレミアに任せておけば大丈夫そうだし、ちょっと戦場の全体を窺うとしよう。


『クイーン、子供達を使って偵察を頼みたいんだけど、良いかな? 』


『主がそれを望むのなら、異議はなし』


 クイーンから色好い返事を貰い、ハニービィ達から魔力念話を通して空から全体を見渡す。ざっと見た感じでは、アンデッド側の方がまだ数が多い。

 ガストール達を含めてヴァンパイアに苦戦している冒険者もいるし、何よりクレス達や大勢の者達があの三人の獣人ヴァンパイアに抑えられているので、他のアンデッドに此処まで攻め入られてしまった。


 こんな状態が長引けばいずれ疲労してますます戦況が悪くなる。それにアンデッド達は疲労しない。時間を掛ければ掛ける程不利になってしまう。


 折角のアグネーゼとセドリック司祭の浄化魔法により弱体化していると言うのに…… しかし、ヴァンパイアも浄化の光が降り注ぐ下では思うように動けないようで、少しずつ冒険者が押し始めているようにも見える。


「こなくそ! しぶと過ぎっしょ!! 何時になったら死ぬのよ、こいつらは」


「ひぇぇ、もう腕が疲れて来たっす。ヴァンパイアが数人集まるだけで此処まで面倒になるんすね」


「ルベルト! 無駄口叩く暇があったら一回でも多く攻撃しろ! 奴等に再生する時間を与えるんじゃねぇぞ!! 」


 ガストール達と冒険者達が数人のヴァンパイアと戦っているが、その身体能力と高速再生に血液操作のスキルによって苦戦を強いられていた。だが、浄化の光とガストール達の魔力念話を使った見事な連携でヴァンパイア達を徐々に追い詰めていく。


 一人のヴァンパイアの正面にガストールが立ち、左手に持つバックラーで防ぎつつ攻撃するスタイルは今も変わらず、見た目に反して堅実な戦闘だ。


 一方のルベルトとグレムはヴァンパイアの左右に陣取り、戦況に応じて自由に動く。そこに妖精の精霊魔法による遠距離攻撃が加わり、どうにかヴァンパイアの一人を討ち取る事が出来た。


 灰になり崩れていくヴァンパイアを、ガストール達は肩で息をしながら見送り、面倒くさそうに他のヴァンパイアに顔を向ける。


「くそっ、やっと一人か。まだまだ休めそうもねぇな…… おい! 他の奴等に加勢すっぞ! ヴァンパイアさえ仕留めちまえば、後は楽なのは前の戦いで分かってっからな」


「ガ、ガストールの兄貴、もう少し休んじゃダメっすか? 流石に連続はキツイッす…… 」


 ルベルトが膝に手を付き、前屈みになって息を整えているところに、まだまだ元気な妖精が近寄る。


「なんだなんだ? だらしないな~、この戦いで格好いい所を見せてモテモテになるんじゃ無かったの? 」


「ちょっ!? それ今ここで言う事っすか? 魔力念話でライルの旦那達に筒抜けなんで言わないでほしかったっすよ!! 」


 ルベルト、お前そんな事を考えていたのか。俺も男だから気持ちは分からんでもないが…… まぁ、どんな理由でもやる気になってくれるのなら良いんだけどさ。それじゃ、モテ男目指して頑張ってくれ。

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