表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第二幕】マナの大樹と眼なしのエルフ
23/812

7

 

 引き続きハニービィ達に男達を監視してもらい、彼等の狙いは何なのか探ろうと思う。


 クイーンに頼んで、監視しているハニービィを男達に近付けさせ会話を拾ってもらうと、


 ――なぁ、本当にこの辺りなのか?――


 ――ああ、あのガキはこの先にいるはずだ。間違いねぇ……――


 ――そうか……しかし、気味の悪いガキだぜ。いつもフードを被ってるし、言葉も丁寧で気色わりぃ。あいつは本当にガキなのか?――


 ――んなことはどうでもいいんだよ、とっととアイツを締め上げて、必要なもん聞き出したらぶっ殺せばいいんだ――


 ――ああ、そうだな。よそ者が調子に乗りやがって……――



 はぁ……これは確実に俺が目当てか……


「ほら! わたしの言った通りじゃん!」


 一緒に男達の会話を聞いていたアンネが得意気な顔で言ってきた。


 ――敵確定、殺す?――


「いいね! 返り討ちにしてやんよ!」


 クイーンとアンネは殺る気満々のようだな、あの様子では話し合いも無理そうだ。


「少し予定は早いけど、ここを離れて別の村か町を探そう」


「逃げるの?」


「逃げれる時は逃げるさ、無理に戦おうなんて思わない」


 正直に言えば、嫌なんだ、人を殺すのは……まだそこまで割り切れない。 だから逃げられる内は逃げる、いつか逃げ場を失うその時まで……


 アンネはまるで俺の心を見透かしているように、見つめながら大きな溜め息をついた。


「はぁぁ~、まったく仕方ないね……怖がりなんだから」


 怖がり……か、確かにそうかもな。


 ――移動する?――


 クイーンから聞かれたので、


『ああ、そうだよ……だから、殺すのは無しだ』


 ――了解――


 俺は外に出て、家全体を魔力で包むと収納した。ふぅ、結構魔力を使うから疲れるんだよな。


「そんじゃ、見つかる前に行こっか」


「そうだな、次はどこへ行こうか……」


 また、宛のない旅か……男達とは反対方向に足を進め、この場から離れた。

 ・

 ・

 ・

 ・

 あれからどのくらい移動しただろうか……ひたすら森の中を突き進み数日が経過した頃、不思議なものを捉えた。


 それは大きな魔力の固まりが目の前を塞いでいた。肉眼で見てみると、目の前が霧で覆われている。この霧は魔力で出来ているのか?


「結界だね、それもとても強力な……」


「結界? じゃあ、ここから先は進めないのか?」


「そうだね、行ってみればわかるよ」


 はぁ? この霧の中を行けと? 大丈夫か?


「なに? 怖いの? ウププ……」


 アンネがからかって嗤ってくる。


「危険は無いんだろうな?」


「大丈夫! 命の危険はないよ」


 まあ、それなら行ってみるか。霧の中へ入り、まっすぐ進んだ。中は真っ白でなにも見えない。それでも足を動かし前に歩いていると、霧の中から抜け出す事が出来た。


「おかえり~」


 そこにはアンネが笑顔で待っていた。


「え?……どうして……」


 俺はアンネより先に霧の中へ入ったはず、何時の間に抜かれたんだ?


「お? 驚いてるね~、わたしはずっとここにいたよ。ライルが戻ってきただけ」


「戻ってきた? 俺はずっと前を進んでいたはずだけど……」


「それがこの結界の効果だよ。必ず入った場所に戻されちゃうの」


 へ~、そうなのか……でも、これでは先に行けないな。


「戻るしかないか……」


「なに言ってんの? ライルのスキルでこの結界に穴を開ければいいんだよ」


 この結界は大きな魔力の固まりのようなもの、なら魔力支配で操り、通り道を作るということか。


「でも、そんな事をして大丈夫なのか?」


 何が起こるか分からないからな。


「心配無用! 一時的に穴が空くだけだから、すぐに元に戻るよ」


「本当に? それならいいんだけど……やけに詳しいな、この先に何があるのか知っているのか?」


「わたしの知り合いが住んでるよ」


 おいおい、そういうのは早く言ってもらいたいな……


「まあ、四百年ぐらい会ってないけどね」


「人間か?」


「いんや、エルフだよ」


 なに!? エルフだって! それってもしかして、


「なぁ、エルフというのは……あの、耳が長いっていうあのエルフ?」


「ん? 確かに人間と比べると少し長いかな……それがどうかしたの?」


 おう……何気に初めてだな、人間以外の種族に会うのは……


「知り合いがエルフで、この先に住んでいるんだよな?」


「さっきからそう言ってんじゃん! で、行くの? 行かないの?」


 勝手に入ったら駄目だろうけど、アンネの知り合いがいるなら大丈夫かな?


「じゃあ、行ってみるか」


「いや~、久しぶりだな~。まだ、元気かな?」


 俺は自分の魔力を結界の魔力に同調させ、人ひとり通れる程のトンネルをイメージして、結界に穴を開けた。


「よし! そんじゃ、行ってみよ~」


 アンネが先に入って行ったので、俺も後を追う。するとすぐに視界は開け、先には森が広がっていた。


「この先にエルフ達の村があるんだよ」


 エルフの村か……楽しみだな、どんな容姿をしているのだろうか? やっぱり美男美女ばかりなのかな?


 そんな風にワクワクしながら進んでいると、木の上に人の形をした白い影を視た。どうやらこの先に人がいるようだ。そう思っていたら、風を切る音が聞こえ矢が飛んできていた。

 その矢は俺の足元に突き刺さり、思わず尻もちをついてしまった。


 あぶね~、なんだ? なにが起きた? 突然の事で混乱していたら、


「止まれ!! そこから動くな! どうやってここまで来た!」


 少し前にある木の上に弓を構え、此方を狙っている人がいる。




 アンネ……知り合いがいるんだろ? 大丈夫なんだよな?……何だか不安になってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ