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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第八幕】平穏な日常と不穏の訪れ
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13

 

「私も御一緒したいと言いたい所ですが、神官達を纏めなければなりませんので」


「いえ、戦場に赴いて頂けるだけで有り難いです」


 申し訳なさそうに言うカルネラ司教に、感謝の意を伝える。偶々近くにいたから、それを抜きにしても迅速に行動してくれたからこそ、こんなに早く救援に駆けつける事が出来たのだと思う。王都からの救援はまだ来ないのにね。


「そう言って頂けると助かります。一人でも多くの命を救う為、尽力します。それから、サンクラッド聖教国は、神に選ばれたライル君を歓迎致します。もし、我々の力を必要とするのならば訪ねて来て下さい。聖教国は千年前に、神から世界の安定を補佐するようにと拝命を受けた国なのです。なので決して貴方の意思を無下にはしないでしょう」


 ただの宗教国家ではないって事か。まさか神が直接介入してたとはね。


「それは、皆が知っているような常識なのですか? 」


「いいえ、これは教皇と枢機卿、それと僅かな者しか知り得ません。だからご内密にお願いしますよ」


 人指し指を一本だけ立てて口元に運び、シィーとポーズを決めるカルネラ司教。おや? そんな重要な事をほいほいと話すなんて、意外とお茶目な所もあるんですね。


「フッ、そういう所はいくら死んでも変わらんのだな」


「そだね~、やっぱり記憶がある限り、そうそう人の性格なんて変わんないだね! なんか安心したよ! 」


「そうですか? まぁお二方が言うのだから、そうなんでしょうね」



 翌日、準備を終えた俺達は集合場所である西門に向かう為、店から出ようとしていた。


「あまり危険な事はしないでと言いたいけど、それは無理な話なんでしょ? アルクスさん、エレミアちゃん、この子を宜しくお願いします」


 母さんは出発間際まで心配していた。こればっかりはどうしようもないなからな。何だか申し訳ない。


「大丈夫ですよ。ライル君には頼もしい味方もいますし、僕達もいます。何よりライル君自信も十分に強いですからね。ゴブリンなんかには遅れは取りませんよ」


「クラリスさん、私に任せて。ちゃんと守って見せるから。ライルが無謀な事をしなければだけどね」


 それは化け物との戦いの事を言っているんですか? 随分と根に持つタイプなんだね。反省してます、後悔はしてないけど。


「それじゃあ、留守は任せたよ」


「はい! お店は私達に任せて下さい。 無事の帰還を心よりお待ちしてます! 」


「あ、あの、僕も頑張りますから、どうかご無事で…… 」


 犬型の獣人である双子の妹、キッカは白いふわふわの尻尾をバタつかせて元気一杯の返事をするのに比べて、兄のシャルルは不安そうに、犬耳と尻尾をしょんぼりと項垂れていた。


 店から出て西門に着くと、既に冒険者と街の兵士に、神官と神官を守る神官騎士、それとゴブリンとの戦闘で多少数は減ったが多数のゴーレムが集まっている。今回はゴーレムに細やかな指示が必要なので、魔術師の皆さんにもゴーレムの命令権を渡して協力して貰う。

 移動には馬車や馬を使い、ゴーレムは走って移動する。半日で目的の村に着く予定だ。


 その他にも多くの人達とドワーフ、エルフ達が見送りに来ていた。その中にはエドヒルとルドガーの姿もある。


「油断はするなよライル。エレミア、ライルをしっかりと護るのだぞ」


「一緒に戦えないのは残念ですが、仕方ありません。街の守りは我々の任せて下さい! ゴブリンキングの首を楽しみにしております」


 二人に挨拶を交わし、シャロットと一緒の馬車に乗り込む。多数の馬車と馬、ゴーレム達の大行進が始まる。列をなし、土煙を上げながら走ること約半日、途中休憩を挟んだけど、ほぼ予定通りに村の近くに着いた。


 早速本部のテントと医療テントを設置して、村を包囲する準備に取り掛かる。


「ではライルさん、お願い致しますわ」


「分かった、後は作戦通りに」


 俺は魔力収納に、エレミアとアルクス先生を収納して魔力飛行で空高くへ飛んだ。冒険者や兵士達に多少見られはしたが、しょうがない。今はそんな事を気にしてる場合ではないからね。


 しかし、高いな! ゴブリン達に気付かれない為とは言え、これは高すぎではないかな? まともに下も見れないよ。


『こぉら! ちゃんと下を確認しないと侵入する時期が分かんないでしょ! 』


『全く嘆かわしい。ライルよ、折角のスキルが泣いているぞ』


 うっさい!! 恐いもんは恐いんだよ! 普通の奴には恐怖症を患っている人の気持ちなんて分からないだろうさ。下を見ると終わりなんだよ。せめて時間を下さい、心の準備が出来るまで。


 なかなか下が見れない俺に、業を煮やしたアンネが魔力収納から出て、村の様子を確認し始めた。あぁ…… 空が青い、今日は雲一つ無い晴天だな。


「ちょっと、何時まで空を見上げてんのよ。下はもう動き出したわよ」


 アンネが言うには、たった今村の包囲が完了したらしい。そして、それを察知したゴブリン達が村からぞろぞろと出てくる。街を攻めてきた時より多いとアンネは話す。あの時は様子見程度だったようだ。


 村から半分以上のゴブリンが出ていった所で降下を始め、村へ侵入する。此方の思惑通り、ゴブリンキングはまだ村にいるようだ。崩れかけの家屋の屋根に着地するや否や、魔力収納からギルが人化したまま飛び出し、ミスリルで出来た身の丈程の大剣を近くのゴブリンに降り下ろす。ゴブリンがギルの存在に気付くが時すでに遅し、何の抵抗も出来ずに頭から刃がめり込み左右に真っ二つとなった。


 黒い長髪に赤いメッシュ、金色の双眼を光らせ、黒いスーツに似た服に身を包むビジュアル系の顔をした人化形態のギルが、ゴブリンの臓物と血がこびりついた大剣を大袈裟に血振りする。


「この姿で暴れるのは久方ぶりだ。相手に多少不満はあるが、致し方無い。殺戮を楽しむとしよう」


 わぁ…… なんか張り切ってるね。村の損害を最小限にしたいから人化したままでとお願いしたけど、大丈夫かな? この後村を再興しなくちゃならないんだから、お願いしますよ。

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