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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第七幕】郷愁の音色と孤独な異形者
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14

 

 ドルムの案内でドワーフの王城へと到着した。門兵に事情を説明すると、雄大に聳え立つ城門の扉は開かずに、その隣にある人ひとり通れる程の、小さな扉から城の敷地内へ入る。あの大きな両開きの門が開くのは馬車等の乗り物を通す時だけらしい。徒歩の人達にもいちいち開けてたら面倒だとか。


「少しここで待つぞ」


 扉を抜けてすぐの所でドルムは立ち止まった。城と城門との間には幾つもの建物がある、どうやら兵舎のようだ。城へと続く道から一台の馬車らしき物が走ってくる。何故、馬車らしきと言ったかというと、馬がいないのだ。でも形は馬車、御者台に乗っているドワーフは自動車のハンドルに似た円形の物を握り、操作しながら俺達に近づいて来て止まった。


「こいつは “魔動車” じゃ。魔力で動く馬車じゃな、仕組みは魔動列車とたいして変わらん。ほれ、乗るぞ」


 帆馬車のように後ろから乗り込み、魔動車は出発した。ドワーフの歩幅では時間が掛かるので、敷地内でも魔動車で移動しているらしい。移動中、この魔動車を軽く魔力で解析してみたのだが、構造が複雑なうえに始めて見る金属が使われていたので、簡単には真似出来そうもない。因みにエレミアについては、スキルと共に説明済みだ。ドルムは多少驚いてはいたが、「やはり、エルフにはきつかったか」 と笑っていた。


 そうこうしていると、城の入り口前に到着したので、魔動車から降りて城の内部へと入っていく。エントランスはとてつもなく広く、床には大理石が敷き詰められ、巨大なシャンデリアの光を反射して、眩しいくらいの光沢を出している。流石は王城、豪華絢爛だね。俺達が城の豪華さに呆気に取られていると、そこに白髪混じりの黒い髪と髭を持つ、一人のドワーフが歩いてくる。


「ようこそお出でくださいました、グレシアム王の子孫様。ワシはこの国の宰相を務めさせて頂いております、エギルと申します。さぁ、王がお待ちしております。どうぞこちらへ」


 宰相のエギルが先導しようと歩き出すが、何か思いついたように足が止まる。


「あっ、そうそう。ドルムよ、お主も来い」


「はぁ? 何でワシもなんじゃ? ここまで送れば十分じゃろ? 」


「王がお呼びなのだ。いいからついてまいれ」


 納得がいかないのか、ドルムは渋々といった感じでついてくる。長い廊下を進んだ先には大きな扉があり、その中へ入ると、体育館並に広い部屋の奥に豪華な椅子が置かれている。この部屋は玉座の間のようだな。


 俺達は部屋の中央付近で方膝を地面につき、頭を下げる姿勢で、王が来るのを待つ。


「古き友の子孫とその従者達よ、よくぞ参られた。ワシがこの国の王、ギムルッド・ガイゼンアルブじゃ。その者達、面を上げよ」


 厳格な声に従い、ゆっくりと顔を上げると、玉座には王冠を被り、赤いマントをした総白髪の髪と髭を持つドワーフが座っていた。腕は丸太のように太く、目は鷹のように鋭い。ただ座っているだけなのに、王が放つプレッシャーで押し潰されそうな錯覚を起こしてしまう。これが、一国を背負う王様ってやつか。怖くてまともに顔も見れない、口を開くのなんて以ての外だ。


「して、グレシアム王の子孫というのはお主じゃな? そのふてぶてしい眼、リクセンドにそっくりじゃ。あれから千年…… 過ごしてみれば長く、思い返すには短い時間じゃな」


 ん? この話しぶりからすると、リリィの先祖と知り合いなのか? おいおい、一体何歳なんだよ。


「…… 初めて御目に掛かります。偉大なるドワーフの王よ。私の名は、リリィ・グレシアム。盟約に従い、馳せ参じました」


 リリィの口上を聞き、ギルムッド王は鷹楊に頷いた。


「うむ、 “あれ” の封印に綻びが生じたと報告は出ておる。待ちわびておったぞ。ワシらはものづくりは得意じゃが、魔術はてんで駄目でな。しかし、もっと大勢で来るかと思っていたのじゃが…… 倒すにせよ、再封印するにせよ、この人数で “あれ” を相手に出来るとは思えんのじゃが? 」


「…… お恥ずかしい話なのですが、この千年の間に私達一族はバラバラになってしまいました。神の罰を受け入れられず、皆思い思いの地へと去って行ったのです。王家の直系である私の家は使命を忘れずに語り継いで来ましたが、他の者は誰も覚えてはいないでしょう。私の両親でさえも半ば諦めておりました、今際の際に自由に生きろと…… 」


 今際の際、リリィの両親は亡くなっていたのか。しかも子孫達はバラバラで何処にいるのか分からない状態で一人、使命を忠実に果たそうとしていたんだな。


「そうであったか。両親を亡くし、一人でようここまで来たものじゃ。他の子孫は何故去ってしまったのだ? 」


「…… 私達一族に課せられた罰は魔法スキルを授かれないというものでした。しかし、ある者はこう考えたそうです。一族以外の血を取り込み、忌ま忌ましい罪人の血を薄めてしまえば、産まれてくる子供は罰の対象にはならないのでないか? と。そうして彼等は四方に散らばり、神の罰から逃れようとしたのです」


 マジかよ、迷惑極まりない行動だ。そのせいで魔法が授かれない子供が増えていくと思わなかったのか?


「なんとも愚かな考えじゃ。して、それは成功したのかの? 」


「…… ある意味では成功と言えます。血が薄まる事で神の罰から逃れられるという結果が出ました。しかし、ごく稀に私達一族の血を色濃く受け継いだ子供が、色んな場所で産まれてくるようになりました。その子供には罰が適用されるようで、魔法スキルを授かれない子供が一般の家庭や、貴族の家庭から出てきてしまう有り様でございます」


 隔世遺伝のようなものだろう。稀に魔法スキルを授かれない人がいると聞いた覚えがあるが、それが原因だったのか。それじゃあ、魔法スキルを授かれなかったアルクス先生は、リリィと同じ血族って事になるのか?


 俺の場合は、魔力支配という強力なスキルを授かった代償のような感じで魔法が使えないから、当てはまらないよな。


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