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外伝9話 信長Take4/1

 高速移動で交差しては離れ、不規則な動きでお互いを撃破しようと、黒と青の二体の機体が激しく争っている。

 浮遊する岩石や戦艦の残骸を避けつつ、何とか決定打を叩き込もうと持てる技術の全てを駆使する2人。


 その時、地球の影に隠れていた太陽が現れる。

 信長はすかさず光の中に飛び込み、太陽を背にして二つの銃口を青い機体に向ける。


「是非も無し!」


 信長の機体である『六天魔王』がビームライフルを撃つ。

 次々と赤黒い閃光が唸りをあげておそいかかるが、光秀の機体『時今天下』がビームを跳ね返しつつ、更にライフルの反撃を行う。


 宇宙空間インスティンクトで繰り広げられる決戦は、一進一退の攻防であった。



(なぜこんな不毛な争いをせねばならん!? 光秀お前は―――)


 信長は戦国時代で寿命を使い切り、ファラージャの元へ帰還した時の事を不意に思い出した。



【戦国時代にて】


 戦国時代の日ノ本を統一した信長は、ようやく訪れる平和を感慨深く思っていた。

 誰もが新しき時代に希望を抱き、ようやく秩序がもたらされる日ノ本を歓迎した。

 こうして信長は人生を全うし意気揚々とファラージャの元に戻った。

 歴史修正を果した一億年後―――


 相変わらず信長教が蔓延る悪夢の世界であった。


「ファラージャ! 何故じゃ!?」


 信長はファラージャの胸倉を掴んで問いただす。


「じ、実は、信長さんが亡くなって約2000年後、世界規模の戦争が勃発し某国が逆転の切り札として、信長さんのクローンを作り世界を救う英雄になったみたいなのです! ただ世界を救う直前に裏切りにあって討ち取られてしまい、かえって神格化された事が原因と思われます!」


「なんじゃそりゃぁ! しかもまた裏切りで死んどるのか!」


 あれ程苦労して天下統一を果たしたのに、まったく未来が変わっておらず信長は愕然とした。

 しかもまた本能寺を髣髴させる裏切りによる討ち死にである。

 そんな怒り心頭の信長のにファラージャは意を決して伝える。


「もう一度転生しましょう! 知らない時代ですが、転生先に肉体はあるので介入する事は可能です! 技術改良で知らない時代にも行けるようになりました!」


「また転生か……? その2000年後とやらはワシが存在するのは聞いたが、他に誰かおるのか?」


「信長さんが乱世で関わった名のある武将で、墓所の所在がハッキリしている人は、大体クローンが存在しているみたいです!」


「ハァ……仕方ない。ではクローンが存在する魂を呼び出せ。全員引き連れて転生する!」


 こうして信長は4度目の転生をする事となり、一部の武将は、呼び出された1億年後で事情を聞かされて大混乱しつつ信長と共に転生した。



【西暦3582年 宇宙空間インスティンクト】


 転生した英雄達が各地で紛争を終結させた頃、史実で暗殺された場であるインスティンクトで激しく戦う信長と光秀。


「なぜじゃ! 光秀! なぜ裏切った!!」


「上様! 貴方はやり過ぎた! やり過ぎたのです!!」


 光秀は涙ながらに信長の問いかけに答えつつ、必殺の桔梗砲をチャージすると『時今天下』の背部から砲身がせり出し両肩に2門、両脇に2門の計4門の砲身が現れる。

 かつて信長を何度も救って来た頼もしい砲身が、禍々しい輝きを放ち信長に向けられる。


「キリングシステム!」


 さらに光秀が叫ぶと『時今天下』の前方に明智家の家紋である桔梗が光と共に現れた。

 この光を通過するエネルギーは増幅される性質がある。

 光秀は4門の砲身から放たれる莫大なエネルギーを、さらに限界まで増幅させる気であった。


「敬愛する上様! 貴方の意志は私が引き継ぎます! 桔梗砲! 行けぇ!!」


 4門の砲身から放たれた光が、円陣に吸い込まれた後に信長に襲い掛かる。

 信長の『六天魔王』は洪水に流される無力な人間の如く、エネルギーの奔流に飲み込まれていった。


「ググッ! 光秀……!! これしきでワシを倒せると…………!!」


 宇宙空間インスティンクトに、二つ目の太陽と見紛うばかりの猛烈な光が溢れた。



【宇宙空間アヅチ】


 一方、宇宙空間アヅチでは帰蝶と秀吉の戦いが繰り広げられていた。


「フーティエ! 『揚羽』スタンバイ!」


 帰蝶が自身の乗る機体『胡蝶』に搭載された、無線誘導銃身兵器『揚羽』の起動を指示する。


《承りまして候》


 人工知能のフーティエが『揚羽』を『胡蝶』から切り離し、帰蝶の脳波コントロールに従うようサポートする。


「濃姫様準備が出来ましたかな? ヒヒヒ!」


 秀吉が下品な笑いをしながら悠然と佇む。

 秀吉の乗る機体『太閤』は帰蝶と同タイプの機体である。


 その『太閤』の周囲には、無線誘導銃身兵器『斉天大聖・見・言・聞』の3機が旋回している。


「秀吉……貴方変わったわね。何が貴方をそうさせたの?」


 帰蝶は秀吉の変わりようが未だに信じられない。

 秀吉は冷酷な顔つきで語り始めた。


「戦国時代我等は日ノ本の為に粉骨砕身働いた。それが世の為になると信じた! まさか無駄だったとは! あの1億年後の信長教は酷い! あの酷い世界を何とかしたかった! それを是正するために今この場にいるが……人は滅びるべきだと気付いたのですよ! ハハハ!」


「秀吉! ……確かに死ぬべき人間もいる! それは否定できない! でも今を一生懸命生きる善良な人も居るのよ!?」


「カカカ! その通り! その通りなのですが……その善良な人間から、いつか死ぬべき人間が生まれるのですよ! そう……信長教を作る人間がぁッ!!」


 そう叫んだ秀吉は『斉天大聖』を飛ばし帰蝶の乗る『胡蝶』に襲い掛かる。

 猿のように気まぐれに飛び回る『斉天大聖』が、激しく絶え間ない銃撃を『胡蝶』に浴びせる。

 猛烈な射撃に『胡蝶』が削られていき、爆散する破片とガスの中に消えていった。


「フフフ、濃姫様? そんな事で死ぬタマじゃ無いでしょう?」


 そう言って秀吉はガスの中に黄金のビームを撃ち込む。

 すると撃ったばかりのビームが、すぐさまガスの中から撃ち帰される、いや、増幅されているのか秀吉が放ったビームよりも太い。

 秀吉は百も承知とばかりに、ヒラリと避けつつ、さらにビームを撃ち込む。


「良く解っているじゃない!?」


『斉天大聖』の攻撃をデコイシステムで凌いだ帰蝶は、ガスの煙幕から飛び出しビームを乱射しつつ答える。

 同時に『揚羽』を舞わせ反撃を試みる。

 ヒラヒラと『斉天大聖』とは別種の不規則な軌道で動く『揚羽』は攻撃のパターンも読みきれず、撃墜も難しい厄介な兵器である。


「ククク! そうこなくては!」


 そんな『揚羽』の攻撃を紙一重で避ける秀吉の『太閤』。


 西暦3582年 4月1日

 人々が平和を祝う中、真の最終決戦が始まったのだった。

エイプリルフール、と言う事でのボツネタを再利用して再構成してみた、もしかしたらあり得たかもしれない話です。

当初は信長Take4として未来で暴れる予定でしたが、表現すべきは戦国時代であると考え直してお蔵入りでしたが、日の目を見れて良かった、のかな?


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