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信長Take3【コミカライズ連載中!】  作者: 松岡良佑
19-3章 永禄6年(1563年) 弘治9年(1563年) 
414/447

204話 再始動では無い再始動

★caution★【話がすごく戻ります】★caution★


191-2話(2024/06/20日!?)に信長が、越前国吉崎御坊での対応を切り上げ、大和国の対応に行き昨年末(2024/12/18)に決着がつきました。

ただ当然ながら信長離脱後の北陸一向一揆が何も動いていない訳もなく、一揆対策は続いております。

そんな訳で、約半年ぶりの北陸一向一揆編再開です!

内容を忘れた方は19章から再読してください。

……私も読み返しました。

再読が面倒な方の為に、雑ですが、信長が越前から離脱するまでのあらすじを記載します。


【主な登場人物】

朝倉延景、朝倉景鏡、富田勢源、遠藤直経、竹中重治、河尻秀隆、淺井長政、織田於市、今川義元、岡部元信、松井宗信、今川氏真、松平元康、朝比奈泰朝、北条涼春、今川瀬名、斎藤於龍、風魔狐蕾、北条竹王丸、瑞林葵、坂茜、塙直子、生駒吉乃、七里頼周(鏑木頼信)、下間頼廉


【離脱】

織田信長


【雑なあらすじ】


再度の北陸一向一揆に備えた今年。

朝倉、斎藤、織田、今川、浅井軍を援軍に備え、越前に一揆対策軍が集結する。

帰蝶が朝倉家の庭木を、身に着けた『抜足』『震脚』『発勁』『鎧通し』で庭木を折ったり信長を殴ったりした。


一方、吉崎御坊の主の七里加賀守頼周(鏑木頼信)と囚われている下間頼廉は吉崎の未来を憂いていた。

局地的な勝算はあるが、このままでは未来が続かない事を2人は見抜いていた。

その難局を打開する為、七里は頼廉を解放し、朝倉軍との交渉に向かわせる。


その交渉で、下間頼廉は敵側である朝倉同盟軍の信頼を得た。


飛騨での出来事と、謎の書物『歎異抄』の存在と、沢彦宗恩が独自に調べた『真の浄土真宗』に差異が殆ど無い事が、あろうことか頼廉の口から認められた。

これが信用の根拠であり、手を結べるか細い糸だった。

蓮如と蓮崇らの寺院と北陸武士の関係の歴史。

その果ての北陸一向一揆と武士の悪を知った。


また、本願寺本家、顕如の命令はほぼ達成不可能となった。

飛騨で下間頼照、証恵と別れて以降、頼照、証恵は何故か越前側の一揆に加勢する始末。

頼廉も自由に動けぬ始末。

本願寺本家との連絡手段もない。

もう自分達でなるべく本願寺の意向に近い形で落し所を探るしか無くなったのだ。


これが煙幕を張り、信長達も頼廉達も煙幕に巻き込まれ右往左往しているのが現状。


ここにきて頼廉は朝倉連合軍と協力する道が、一番民の為になると判断した。


また七里頼周も頼周なりに、民と一揆と教義の板挟みに苦しみ、捉えた頼廉に望みを託していた。


その結果、頼廉と七里頼周は天下布武法度の対宗教政策を受け入れる事を明言した。

吉崎御坊を戦火から守るにはコレしかないのだ。


ただ、頼廉にとって一番良い結果になりそうな所に、寝耳に水の情報が入る。

七里頼周は最低でも2人以上いると言う事を。

しかもその七里頼周は2人も才能あふれ、1人は帰蝶と富田勢源のタッグマッチを1人で互角に戦い、越中の七里頼周は謀略で織田、上杉、武田を追い払った。


この2人の七里頼周の正体と、加賀の七里頼周との会談を2か月後に約束し頼廉は去っていった。


その2か月の間に今川義元本軍も越前に到着し、いよいよ本格的な交渉が始まるが、その交渉には信長らしい悪質な罠が仕掛けてあった。

お互いの護衛100人を許す悪夢の交渉が。


一方、七里頼周は吉崎御坊の牢越しで頼廉と対面していた。

しかし入牢は、処分ではなく頼廉を守る為。

朝倉側の意見を持ち帰り説明した所、一部の一揆衆が激高し収拾がつかなくなり、仕方なく命を守る為の処分として入牢させた。

そこでは、七里頼周が実は鏑木頼信という武将であった事が発覚するが、本物の七里への恩義と、本人の資質を認められ『七里頼周』を名乗るのを許された武将であった。


そんな2人の意見は一致した。

降伏の選択と、覚悟の切り捨てを。


こうして2か月後悪夢の会談が始まった。

一揆衆の護衛が男100人に対し、朝倉連合軍側の護衛が女100人という、目も眩む状況だった。


『隣の芝は青い』


長島でも見せた格差の脅し。

長島では『飢え』で脅したが、今回は『性欲』で脅した。


一揆衆の精鋭護衛は完全に狂わされた。

逃げたら最低最悪の『無間地獄』だが、性に関する地獄は無間地獄より遥かにマシな『衆合地獄』。

しかし戦になった場合に備え、一般の女子供は吉崎御坊に避難させてある。

性欲を発散させる為には、吉崎御坊で乱暴狼藉を働く暴挙を行わなくてはならない。

全ては信長の手のひらの上だ。


一揆側は時間があるようでまるで無い現実を突きつけられた。

このままでは一揆内一揆が発生するのも時間の問題。

衆合地獄に行きたい人が吉崎御坊に殺到する。

もう『七里頼周』の名も通用しなくなる。


ここに至って、七里こと鏑木と頼廉は降伏を選択した。

つまり七里頼周と下間頼廉&朝倉連合軍vs衆合地獄策にハマった一揆軍の構図となった。


ここで信長は帰蝶率いる、古参の親衛隊長全員を吉崎御坊に先乗りさせた。

全ては、宗教の威を借りた『造悪無礙』の者を始末する為に。


こうして吉崎御坊攻防戦は静かに始まった。

少数の淫靡策にハマった者が吉崎御坊を訪ねては、帰蝶たち親衛隊スナイパーに狙撃されては退けられていった。

後に、富田勢源、今川氏真、北条涼春ら武将級10人も追加派遣され、ますます吉崎は頑強になっていく。


こうして少数で吉崎御坊を守ること数日。

ついに朝倉連合軍が吉崎御坊に到着し、防衛に成功した。


ここで信長は別行動の為に越前を離れ、これからは信長抜きで加賀攻略が始まる――


ここまでが、186-1話~191-2話までのあらすじである。(約2200字! お疲れさまでした!)

ココからが本編ですよ!!

【越前国/吉崎御坊 朝倉家】


 上杉が動けない――

 武田が信濃と越後の国境間際まで領地を伸ばしたお陰で、北陸一向一揆に対する東部戦線での上杉政虎の動きが封じられてしまっていた。

 西の朝倉側が順調なだけに、余計に上杉の停滞が目立っていた。


「こればかりは仕方ないですな。しかし黙って指を咥える上杉殿でもありますまい。きっと最低限何らかの手は打つでしょう。では皆の衆、拙者はこれで失礼しますが吉報をお待ちしておりますぞ」


 そんな中で、織田信長が吉崎御坊保護を達成した事を目途に、単独行動を起こす為に別れを告げた。

 信長はこれから大和国への対応に向かう。


「任されよ。今までの援護や知恵には感謝致す」


 朝倉延景(義景)が場を代表して礼を述べ、帰蝶が妻として言葉を掛ける。


「殿。お気をつけて」


「あぁ。任せておけ」


 こうして信長が、朝倉家、斎藤家、下間頼廉、鏑木頼信に見送られ退出した。

 そこから先の活躍と苦難は知っての通りである。(191-2話~203-2話参照)


 だが!

 北陸一向一揆はまだまだこれからである!


「さて? 気を取り直して、気合を入れなおして、さっそく次の行動に移ろうか!」


 延景が気合の入った声で宣言した。

 長い間、出番が無かった事が理由ではないのは、ここに明記する。


「吉崎御坊を無事保護したからには、保護の充実。これが次の為すべき事であろう」


「ん? 次の侵略拠点に向かうのでは無いのですか?」


「違う。いや、結果として同じかもしれんが、侵略は違うな」


 吉崎御坊を保護したから次の侵略目標へ、も間違いではない。

 それも間違ってはいないが、侵略よりやらなければならない事がある。


「それは一体?」


「保護の強化じゃよ」


 延景が言い切った。

 

「同感です。今まで朝倉家に対する最前線だった吉崎御坊が、今度は一揆側への最前線拠点と切り替わりました。その上で吉崎を守る為、そして、吉崎を攻防の拠点としない為、加賀の安全地帯を増やさねばなりません」


「あっ」


 帰蝶が後を継いで同意した。

 その言葉を聞いて、何人かの武将が驚きの声をあげた。

 漠然と、吉崎中心拠点として守り、活動する事を考えていたのだ。

 しかし、それでは約定を破る事になる。


「気が付いたか? そう言う事だ。結果的に侵略はするが、目的が違う。あくまで保護の為の侵略だ。しかしその違いは天地の差がある事を軍全員に徹底認知されていなければ意味がない」


 朝倉家は天下布武法度の対宗教項目について承認した。

 と言うことは、吉崎御坊は純粋な宗教拠点となり、軍事拠点にしてはならないのだ。

 ここが天下布武法度のちょっと面倒な所だ。

 この時代、強大な寺院程、防御力も備えているのが当たり前。

 まだまだ群雄割拠にも満たない小勢力が多いこの時代。

 小大名や地方豪族の防御拠点は、無いよりマシな程度の規模である。


 一方、吉崎御坊は浄土真宗の本拠地ではないが、それに次ぐ聖地。

 防御力も抜群の、軍事拠点としても中々の規模を誇るが、法度により、その便利な防御機構を利用できない所か、籠城すらできないのだ。

 戦に関わらす事が出来ない。

 関われて精々怪我人の一時保護ぐらいだろう、戦の拠点としては超一級品なのに使えないジレンマなのだ。


「そうか。そうでありましたな。これは意外な盲点というか、しかし、絶対に宗教を政治に関わらせないとの決意だったのに、どうしても失念してしまう。慣れとは恐ろしいモノですな」


 もう結構長い間、織田家と斎藤家に所属する遠藤直経ですら、失念していたこの事実。

 寺院は戦において砦として、勢力が使用してきた歴史があるのだ。

 その常識が使えないのは、ちょっとした困りごとだ。


「そうなると、進撃一択となりますな。保護の為の進撃。と言う事は、まずは小松地方でしょうか?」


 直経は失念しつつも、可能性の一つが潰れたならば直ぐに頭を切り替えられる頭脳で、一番高そうな可能性を訪ねる。


「そうじゃ。小松は昨年に占拠して以来現状維持。その小松から吉崎御坊間をつなげ、広げ、吉崎を一揆から遠ざける。今回、一揆側から約定違反があったのだから、遠慮する事も無かろう。……無論、助けられる命は助けるがな」


 吉崎御坊攻防戦は、朝倉軍と一揆側が停戦協定を結んだ後に起きた戦だ。

 世間的には『吉崎御坊が朝倉家の保護下に入ったのに攻め込んできた。だから約定違反』の理屈である。

 最後の『助けられる命』は、この場にいる、元七里頼周こと鏑木頼信と下間頼廉に対する体裁と配慮だ。

 だが、本気で助けを求めるなら本気で助けるのも領主の仕事。

 貴重な生産者が助けを求めてくるのだから、血を流す事無くダメージになる。

 なんなら、聖地吉崎が支配下に入った事を喧伝し、一揆側の動揺を誘うべきであろう。


「新左衛門(山崎吉家)と九郎左衛門(朝倉景紀)が小松を制圧し、何とか維持しておりますが、吉崎御坊を取られた一揆軍が、腹いせに小松奪還に動く可能性もあります。いや、腹いせなら良いですが、何か戦略を持って奪われたら厄介です。急ぎ救出し合流すべきでしょう」


 朝倉景鏡が具申した。

 もっともな意見で、否定する理由もない。


「よし。残る軍船すべて使って海路と陸路の両方から小松に向かう。鏑木殿と下間殿は一揆説得の為に同行して頂きたい」


「承知しました」


「ハッ。元七里頼周として出来る限り働きます!」


 両者は快諾した。


「では、葉円殿」


「……は、はい? 何でございましょう?」


 軍議の末席に控えめに座っていた葉円は突如名前を呼ばれて驚いた。

 飛騨一向一揆の拠点で父の幹円を失った葉円。

 父の遺言通り、頼廉に今までの経緯を説明したので、お役御免と言う事で、飛騨に戻ろうと思っていた所だった。


「すまぬが、吉崎御坊の臨時住職を頼みたい。これから一揆離脱者がたくさん来るであろう。保護し、真の浄土真宗を広めてほしいのだ」


「よよよ!? 吉崎御坊の……臨時とは言え住職!? 管理ですか!?」


 葉円は驚いた。

 浄土真宗関係者にとって、吉崎御坊の管理は大出世だ。

 例え臨時とは言え、確実に実績に箔が付く。

 間違いなく、顕如の耳にも入る情報であろう。


「せ、拙僧如きがですか!?」


 しかし、葉円は出世を喜んでいるのではなかった。

 恐れ多いのもあるし、成り行きにしても急すぎる。

 何より、続々と逃げ込んでくる敗残一揆兵を武装解除させ、再決起などさせないように適切に管理しなければならない。

 責任重大である。


「無論、貴僧だけに負担は負わせぬ。多少の常駐兵は置いていく。常駐兵は吉崎の外部で敗残兵の受け入れ検査を行い吉崎に送る。武装解除せぬ者や邪な者はそこで弾いてな」


「安心せよ。私への忠義で動いていた信頼おける者も置いて行く。お主一人で何もかも駆け回ることはあるまいよ」


 七里頼周こと鏑木頼信が安心させる様にいった。

 裏切ってしまった形となった鏑木頼信だが、鏑木の理念と動機に納得し、吉崎に残った配下もいる。

 手も付けられない程の、大混乱にはならないだろう。


「しょ、承知しました! 精一杯務めさせて頂きます」


「よし。後方の安全を確保した所で、小松へと向かう。式部(朝倉景鏡)は海路組を率いる将として、浅井、織田軍を案内してほしい」


「はっ。承知しました」


 この人選は、残った船が少ないので、軍勢が少ない浅井と、織田軍の為である。

 特に、織田軍は陸路で歩めば、一揆軍が恐慌状態に陥る可能性もある。

 織田軍はもはや秘密兵器にして核爆弾だ。

 あまり存在を際立たせてはいけないのだ――という配慮と苦慮を、信長代理の服部らに暗に伝えた、


「ワシと斎藤軍、今川軍の陸路組は慎重にな。どこに敗残兵が潜伏しているかわからん。そ奴らの相手をし、時には説得し、吉崎御坊か浄土か選別し送らねばならぬ」


 選別。

 つまり説得が通じれば、吉崎御坊。

 通じなければ、浄土、つまりあの世であり、殺さねばならない。


「では必然的に拙僧と鏑木は陸路での帯同ですな?」


 下間頼廉が言った。

 これは、断られたとしても陸路じゃないと困る理由がある。


「うむ。そうしてくれると助かる。お主らの言葉で、助かる命も増えるであろう」


 これも先と同じ理由だ。

 こればかりは、いくら朝倉軍が一揆軍に『もうだいじょうぶだよ~。怖くないよ~。出ておいで~』などといっても、一揆側からしたらホラー映画並みの恐怖光景だ。

 七里頼周か下間頼廉が居なければ、助かる命も助けられない。

 吉崎御坊の現在とこれからを知らない一揆側では信じられない話なのだから。


「よし。方針は以上じゃが、懸念は無いか? 無いなら小松でまた合流しよう。陸路は戦が発生する可能性もあるから、海路側も到着次第、こちらに進軍し陸路側の背後を突いてくれ」


「はッ!」


 こうして、信長が去った後の方針が決まり、動きだすのであった。

明けましておめでとうございます。


年末年始でインフルエンザやら、資料探しやら、緊急調査、半年分のあらすじ追加などで随分と間が開いた上に、本文の文字数も通常より少ないですが、朝倉側の動きを一気に動かすよりも徐々に動かした方が、読者の方もついて来やすい(?)かと思い、これで1話として投稿します。


今年も信長Takeををよろしくお願いします!

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あけましておめでとうございます。 今年も小説の更新を楽しみにしています。
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