外伝49話 信長Take5 毒臣信長 カタカナは半角に―――
早いもので6回目の4/1ですね。
そんな事をすれば、日ノ本は応仁など比較にならん未曽有の戦乱に突入するぞ? 長慶のやり方では千年、万年、億年の禍根を残すだけ。何故それが分からん―――
―――三好長慶の天下統一構想について
―――織田信長
【信長Take5 天正元年 近江国/岐阜城(史実名:安土城) 三好家】
「人を呪わば穴二つ、と言うヤツだな。言った通りじゃろう?」
「そ、そうですね。御見それしました……」
「ただまぁ、ここまで寸分の狂いなく予想通りになるとはワシも驚いたわ」
信長と帰蝶は岐阜城の天主から地上を見下ろした。
燃え盛る岐阜の街並み。
琵琶湖には多数の船団が犇めき、地上には様々な図案の旗が揺れ動く。
「織田六天魔将勢ぞろいとはワシも嫌われたものよ」
織田六天魔将―――
四大王衆天の羽柴秀吉!
忉利天の柴田勝家!
夜摩天の北畠具教!
兜率天の滝川一益!
化楽天の森可成!
そして彼らを束ねるは、六天魔王他化自在天の織田信長!
これが織田家の誇る六天魔将軍である!
きっと漫画なら1人1ページ使って素晴らしい紹介実況と共に表現されているだろう。
「斎藤八聖獣将もですね……。あんなに私の斎藤家継承を認めてくれたのに……」
斎藤八聖獣将―――
九尾狐の明智光秀!
応龍の稲葉良通!
獬豸の安藤守就!
霊亀の氏家卜全!
鳳凰の竹中重治!
麒麟の仙石久勝!
鸞の斎藤利三!
そして彼らを束ねるは、養老山の大妖独眼姫蛇蝶の斎藤帰蝶!
これが斎藤家の誇る八聖獣将軍である!
きっとテレビドラマや映画であれば、それぞれの背景で火薬が大爆発しているだろう。
「他にも、今川、松平、北条、武田、上杉に朝倉、浅井ですか。織田とは結んだ間柄だったのに世の無常を感じますね……」
信長と帰蝶は眼下に広がる勢力の掲げる旗に眩暈を覚える。
そして―――
信長と帰蝶に加えもう一人、同じ様に眩暈を覚える男が一人。
「毛利、陶、尼子、長曾我部! 島津に大友! ぬぅっ!? あれは七福鬼神将か!? 弟達までがワシを裏切るとは!!」
三好長慶が天主の欄干を両手で殴りつけ怒りを露わにした。
三好七福鬼神将―――
荒神恵比寿天の三好実休!
壊神大黒天の安宅冬康!
武神毘沙門天の池田恒興!
戦神弁財天の松永久秀!
滅神福禄寿の服部一忠!
死神寿老人の毛利良勝!
怒神布袋尊の宇喜多直家!
そして彼らを束ねるは、日本の副王にして彼らを率いる七福鬼神将の零たる怨神讃岐院の三好長慶!
これが三好家の誇る七福鬼神将である!
きっと格闘ゲームであれば、鋭い目元のカットインと共に格好良い攻撃ポーズが描写されるだろう。
そんな心から信頼していた精鋭将軍に裏切られた事実に、長慶の膝が無意識に折れた。
「どうしてこうなった……」
帰蝶と長慶は同時に呟いた。
《まるでステレオだ、って奴ですねー。古の諺だと伝わってます。意味は意気投合、以心伝心らしいです》
ファラージャだ。
今は信長Take5―――
1回目は本能寺にて明智光秀の謀反により自害。
2回目は本能寺にて羽柴秀吉の謀反により自害。
3回目は莠域Φ縺励※縺ュ笙ェ
4回目は尾張桶狭間にて今川軍に敗れ討死。
5回目は近江岐阜城にてオールスターの手にかかり討死、となるのが確定的な現在。
《どうして? どうしてと吐かすか!? 貴様が『どうしても試したい』と吐かしたからじゃろうが!!》
《……ソウデシタ》
5回目は、3回目のとある地点からやり直した歴史。
帰蝶は3回目のあの出来事がどうしても気になっていた。
ちなみに、4回目は桶狭間で太原雪斎の策にハマり、大逆転負けを喫し早々に転生世直し計画が頓挫した。
その理由も3回目が起因する。
かなり上手くいっていたと思われる3回目。
その3回目をもっと効率よく立ち回り余裕を作り出せば、3回目の失敗を活かせると思ったのだ。
こうして始まった4回目。
直前の経験を活かし、尾張内乱から伊勢制圧までを限界まで効率化した結果、1年の短縮に成功した。
だが、その結果、義元と雪斎が異常に信長を警戒し、信長必殺の盤外奇襲である大迂回戦略すら看破したのが原因だ。
そのあっけなさから帰蝶は5次元で信長に提言していたのだ。
『どうせなら色々試しませんか?』
【信長Take4直後の5次元空間】
『それでも3回目は割と良い所まで行っていたと思うんです!』
帰蝶は雪斎を睨みつけながら言った。
『そうじゃな! なんぞ案でもあるのか!?』
信長も雪斎を睨みつけながら言った。
当の雪斎は、右手で後頭部をペチンと叩き、左目をウィンクし、可愛らしく舌を出した。
『……ッ!!』
ブン殴りたくなる程の良い笑顔だが、この雪斎は4回目の歴史を5次元から見ていただけの、同一人物の別人とも言える存在なので、憎たらしくても怒るに怒れない。
怒りの視線を強引に雪斎から切る2人は話を続けた。
『あの時を覚えてますか? 私が斎藤家を継承し各地を訪問した時の事です』
『覚えておる。当然よ。訪問した後のお主に失望しワシは怒りを……まさか?』
『そのまさかです。長慶殿の蠱毒計の行く末を確認したいのです。殿の言う通り失敗するかもしれない。でも成功するかもしれない。それに失敗なら失敗で、どんな惨劇が起きるのか確認できればTake6以降に活かせるかもしれません』
帰蝶が各国を訪問する中で、三好長慶の真意を知った。
その真意は蠱毒計による天皇家の誅滅。(166-3、4話参照)
それを帰蝶から聞いた信長は激怒した。(167-3、4話参照)
『私は納得できない、とまでは言いませんが、本当に駄目なのか確証が欲しいのです』
帰蝶は腕を組みつつ、右手での人差し指で眉間を叩き、ウロウロしながら難しい顔で考える。
『殿は仰いました。『日ノ本は応仁など比較にならん未曽有の戦乱に突入するぞ? 長慶のやり方では千年、万年、億年の禍根を残すだけ。世界が滅亡しても良いのか? 何故それが分からん』と』
帰蝶は信長の特徴を良く捉えた口調で言った。
『これが本当なのか? 我らにはソレを確認する事ができるじゃありませんか!』
最後には信長を指さして断言した。
まるで真犯人を指名したかの様な雰囲気だ。
きっと漫画だったら『ドンッ!!』とでも背景に表現されていただろう。
『むぅ。別に世界が滅亡するとまでは言っておらんが……。だがまぁ、一度の失敗も許されぬ人生なら絶対に許可などせぬが、やり直せるからのう。駄目と分かって試すのも経験かもしれぬ……のか?』
帰蝶の気迫に押され、自分が断言した意見に自信がなくなってくる信長。
何か違う気がしつつも、帰蝶の言い分にも理があると認めかけていた。
『経験です!! どうせなら色々試しませんか? ファラちゃん!!』
『はーい。そうすると、永禄4年(1561年)ですね。具体的には時間樹時空地点17-166-3ですね』
『イチナナ……時間樹はともかく、時空地点? 言っている意味が良く分からんが……』
急に出てきた意味の分からぬ数字の羅列に信長は戸惑う。
これは神の視点の数字。
時間樹時空地点17-166-3とは、17章166-3話である。
当然分かるハズもない。
『えっと私が記録し易い様に番号を振っているんです。この地点で、帰蝶姉さんは長慶さんにうっかり『信長さんによる上総守の要請』について口を滑らせてしまったので、これを伏せておけば歴史は変わると思います。こうすれば長慶さんは信長さんに不信感を抱かないでしょう』
ファラージャも見ていて感じていたのだろう。
ここが分岐点であったのだと。
『うむ……。ん? ちょっとまて。ワシ、いや、正確には具教だが、上総守を要請した事実はどうする? やりなおすなら近衛と密会……違うな。具教に官位の扱いを一任した時ではないのか?』
万全を期すなら北畠具教には余計な動きをしない様に釘をさしておかないと、勝手に上総守まで狙っている事をバラしてしまう。
『密会は15-140-1(15章140-1話)、一任は14-129(14章129話)ですね。別にソコでも良いですけど、具教さんを止めると、未来そのものが変わるかもしれません。例えば官位を取得しない信長さんに業を煮やし、より過激な行動を取るかもしれません。愛情が憎悪に裏返る様に』
北畠具教は信長に対する憎悪の余り、信長に対する忠誠は誰よりも高い。
その複雑な心情が暴発しないとは限らない。
『だから時期が来たら任じられる前に勝手に名乗ってしまえば良いのではないでしょうか? そうすれば具教さんも面倒な任から解放されますし、結果は一緒になるかと』
『そんな適当で良いのか……? まぁ確かに簡単で楽ではあるか。よかろう。モノは試しじゃ』
こうして時間樹時空地点166-3から始めたTake5。
帰蝶は長慶と穏便に天皇家誅滅を約束し、織田家に帰還後も信長と個別面談は果たすも内容は全く違った。
『こうなれば、京には詰め込めるだけ毒虫を放り込むのが得策となろう。来年、三好は興福寺を滅ぼすのだったな』
長慶は蠱毒の活性化の為に、興福寺を生贄にする方針を取っており、その為の大和国攻略を松永久秀に一任していた。
『私は朝倉、上杉と共に飛騨北陸一向一揆を殲滅します』
『……ならば仕方ない。織田は延暦寺を比叡山から追い出すか。お主は一向一揆の生き残りを京に追放せよ。どうせなら限界まで欲張るぞ。じゃから武田が介入する飛騨には、今回は織田として援助できぬが、お主は4回目の転生ならば、あの結末を封じてみせよ!』
『お任せを!』
この後、斎藤家は武田の飛騨侵略を、謀略を駆使して侵入を許さず、かつ、もう一つ存在した武田の謀略も未然に防ぎ、飛騨を制圧した後は反抗的な一揆勢は京の本願寺系列の寺に追放した。
三好家は松永久秀率いる軍が大和国を興福寺と一緒に全域を制圧すると共に、僧や興福寺に味方した筒井、越智、箸尾、十市ら大和四家ごと京に押し込んだ。
織田家は信長が延暦寺に難癖つけ、超武装要塞たる坂本の地に攻め寄せ、激闘の末に比叡山の反対側に位置する京に僧兵を押し込んだ。
その後は、三好、織田、斎藤で石山本願寺を攻め立て、同じく京に押し込んだ。
本願寺、延暦寺、興福寺、天皇家が狭い京で一堂に会し、六角など比較にならない蠱劇毒が跋扈する地獄と化した―――
こうして長慶の思惑通り、力の無い朝廷と天皇家を毒虫で消し去る事に成功する。
その後、憎悪の矛先を全て潰し精神を回復させた長慶は、怒涛の勢いで西日本を完全制圧し、信長も三好家の忠臣として東日本を制圧した。
最後の最後に、京の毒虫汚染地帯を滅菌制圧し、日本は三好長慶手で統一された。
それは、長慶の念願だった副王から日本の完全な王、天皇となる事を意味した。
狩人罠にかかる―――
「本日、帝におかれまして、岐阜城(史実名:安土城)まで行幸頂きありがとうございます。この信長、感謝の念に堪えませぬ」
信長は恭しく向上を述べた。
岐阜城の主が座るべき最上段には主の長慶天皇が座り、信長が一段下で平伏する。
「うむ。これがお主がワシに献上したい岐阜城か! 何と見事な城よ! 凄すぎて溜め息しかでてこぬわ! 戦略、政治だけでなく、芸術にも優れておったとはな! 将門(織田信長)の忠誠を今さら疑う訳では無いが何と油断ならぬ男よ! ハッハッハ!」
「帝の威光と偉業を称えるべく、某の全てを詰め込みました」
この歴史での失敗を最初から確信している信長は、どうせならと色々楽しんだ。
誰かに誠心誠意仕えるのも経験だとして、帰蝶の帰還を契機に斎藤家共々三好家に臣従した。
三好長慶の忠実な配下として、織田家内で冗談みたいな名前の将軍制度を作り出し、自らも将軍を自称し長慶の覇業を支えた。
この岐阜城も忠誠と臣従の証として、史実の安土城よりもより悪趣味に長慶天皇を称えるべく豪華絢爛に仕上げた。
もう完全に城というジャンルからは逸脱した、例えるなら一大ミュージアムとでも言うべき様相だ。
「これで天下は三好家の物となりました。支配と政治の邪魔にしかならない宗教勢力は軒並み壊滅し、この国から毒虫は一掃されました。帝の手腕はお見事としか言い表せません」
信長の隣で同じ様に頭を下げる帰蝶。
「うむ。雷真(斎藤帰蝶)の働きも見事であった。お主が居なければ危うい場面も多々あったが、まさに雷の化身よな!」
長慶と信長と帰蝶はそれぞれ三好七福鬼神将、織田六天魔将、斎藤八聖獣将としての顔を持つが、長慶を含めた三人で悪趣味にも怨霊神を通称として名乗っている。
将門こと織田信長は平将門。
雷真こと斎藤帰蝶は菅原道真
崇徳こと三好長慶は崇徳天皇。
神仏を討伐する側として、これほど相応しい名も無いとの判断からだ。
「もったいなきお言葉。女の身である私にここまで信頼してくれた事、身に余る光栄です」
帰蝶も改めて平伏する。
「余は女であっても差別せぬ。お主の夫である将門と同じくな。後は怨霊に堕とされた者らの加護よな。色々利用させてもらったが、これで彼らも真に成仏できるじゃろう」
ウフフ―――
アハハ―――
長慶は、中空で微笑む平将門、菅原道真、崇徳天皇を感じていた。
朝廷の意向に翻弄された末の日本の三大怨霊も、これで慰霊されたと長慶は判断し感慨深げだ。
「何よりも帝の戦略が優れていた事こそが大前提です。こんな日本の歴史をひっくり返す偉業を何事もなく終わらせられたのですから」
帰蝶は長慶を称賛する。
だがその言葉の真意は、信長に対する嫌味だ。
《ほら、大丈夫だったじゃないですか! 何が『平将門になって終わる』ですか! これが正しかったんですよ!》
《……》
《あの時の殺気は寂しかったなーーー? 『そんなザマでは斎藤家を切る』でしたっけーーー?》
帰蝶の行動に失望した信長は、覇者の殺気を帰蝶に浴びせまくって脅し、長慶と帰蝶を否定した。
だが、検証結果は完全勝利とでも言うべき完璧な成果。
ここに信長の予測は外れたと証明された―――帰蝶はテレパシーで勝ち誇る。
《どうかな?》
信長はこの期に及んで尚も考えを変えない。
《因果応報。知らぬ言葉ではあるまい》
《私たちは宗教を滅ぼしたんですよ!? そんな宗教用語、何の意味もありませーーーん! ……ッ!?》
まるで信長の言葉を待っていたかの様に、城の外が騒がしくなる。
地鳴りの如き鬨の声が上がったのだ。
「何事だ!?」
長慶の問いと同時に、小姓の森乱丸が飛び込んできた。
史実なら7歳の時期であるが、この歴史では、乱丸の誕生は早かった。
今年で数え17歳である。
「謀反にございます!」
「なんじゃと!?」
長慶は信長を見た。
献上された岐阜城ではあるが、ついさっき迄は信長の所有物であり織田領であった。
謀反の可能性を考えれば、信長が一番怪しいのは間違いない。
《ま、まさか、自分の説を証明する為に謀反を起こしたんですか!?》
当然、帰蝶も疑う。
負けず嫌いの信長が、最後の最後で大逆転を狙って自作自演で自説を証明しても、何ら不思議ではない。
「《たわけ。そんな事するか》某をお疑いで? 帝以外にこの世を統べられる人間はおりませぬ。帝こそがこの世界に相応しいのです。某にこの世界は荷が重すぎます」
信長は荷が重いと本気で思っている。
こんな世などワシはゴメンだ、とも。
どうせこのTake5は実験なのだ。
最初から支配には興味がない。
だから裏切るつもりは正真正銘、毛ほども存在しない。
それを証明するが如く、乱丸の眼がギラリと光る。
「父上、某の雄姿をご覧あれ……!」
乱丸が刀を抜いた。
「長慶、信長、帰蝶! 汚らわしい毒蟲ども! 覚悟せ……!?」
「フン!」
乱丸が口上を言い終わる前に、電光石火の動きで信長が乱丸の刀を取り上げると共に首を撥ねた。
乱丸からの大量出血が芸術の粋を極めた岐阜城を内側から赤に染める。
「殿中で抜くとは愚かな。さぁ。天主に上りましょう。まずは現状把握です」
「あ、あぁ……」
「は、はい……」
信長の冷静な態度に、長慶も帰蝶も訳も分からず従い、血液がしたたり落ちる抜身の刀を握ったままの信長の後に続いて天主閣を上る。
こうして冒頭に至る―――
信長、帰蝶、長慶が率いてきた軍が一斉蜂起したのである。
今度は岐阜城が蠱毒の場と化していた。
毒虫は長慶、信長、帰蝶の三匹。
数こそ少ないが、この世界における最強の毒虫である。
「こ、こんな馬鹿な……!」
長慶が受け入れがたい現実に膝を折る。
「まぁ……某にはこうなる事は予測できておりました。さ、次だ。やり直すぞ」
「は、はい……」
信長と帰蝶は脇差を手に取った。
Take4は2人とも討死だったが、今回は無事(?)自害の運びとなりそうだ。
「次? やり直す? 何を言っておる!? 気でも触れたのか!?」
異様に諦めの良い信長と帰蝶の態度に、長慶の不信感は限界を突破する。
「ワシは至って正常だ。ただ、最早この世界に興味は無い。そう言っておるのだ」
「き、興味が無い!?」
忠実な家臣がする口調とは思えない信長の言葉遣いだが、立て続けに起きる異常事態に、長慶は咎めるのも忘れていた。
「ふむ?」
狼狽する日本の王、長慶天皇に信長は同情の視線を向ける。
流石の長慶も醜態を隠せない現状ではあるが、間違いなくその実力は超一級品。
形はどうあれ才が無ければ統一など出来るハズもない。
ただ―――
道を誤ったのだ―――
「次は、お主にも協力して貰うのも悪くないな。こうなる現実を知ってもらったならば、ワシの方針も理解できようて」
長慶の感覚では、信長が5回目であっても、本人にとっては1回目の歴史だからこそ、こうなる結果を予測できなかっただけだ。
2回目が与えられたらきっと間違いに気付き、信長に賛同してくれるだけのポテンシャルはあるはずだ。
「さっきから一体―――あっ?」
長慶は不思議な光景を見た。
徐々に遠ざかる岐阜城天主と更には己の肉体に、スローモーションで動く信長と帰蝶。
(何故……何故……何……が……)
長慶の意識は虚空に消え去り、その首が驚きの形相のまま天主から地上に落下していく。
「我らは毒虫だからな。殺さねば失礼よな。なぁに直ぐ会える」
信長は刀を振り、刀身に附いた血を払い肩に担いだ。
信長が乱丸から奪った刀を一閃させ、長慶の首を撥ね飛ばしていたのだ。
「そうですね。私達は自害で良いんですよね? 自害する毒虫ってのも変ですけど……」
「ふむ? なら戦うか? 物は試しのTake5じゃ。いっちょ殺るか?」
「い、いえ、それはまたの機会に……」
2人の戦いがTake666、時間樹時空地点S-26で果たされるのは遠い未来で過去の話である。(外伝26話参照)
「さぁ次じゃ次!」
こうしてミュージアム岐阜城は炎上しTake5は幕を閉じるのであった。
完全なる余談だが、4回目の歴史では今川武家政権が成立し、義元が初代将軍に、氏真が2代目として日本を統治した。
5回目のこの歴史では何千年も常に宗教戦争が荒れ狂い、かつての日本の三大怨霊神は、長慶、信長、帰蝶を加え六大怨霊神として日本を呪い猛威を振るったと伝えられる。
『信長公……! 万歳!!』
その先の遠い未来、日本で狂信者が反物質爆弾にて地球を巻き込んで吹き飛ばすダイナミックな自殺を敢行し、本当に世界は滅亡した―――
4月1日風味の信長Take5のBADENDでした。
Take5001でバイオハザードを起こした事に比べれば可愛いモノですね(*σ>∀<)σ
次話は昼過ぎに投稿します。
別件で、前回の投稿で信長Take3の総投稿回数が300回目でした。
分割した話が多いので話数と投稿回数に差がありますが、何れにしてもよくも300回も投稿できたものです!
皆様の応援のお陰なのは間違いありません!
ありがとうございます!




