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信長Take3【コミカライズ連載中!】  作者: 松岡良佑
17章 永禄4年(1561年) 弘治7年(1561年)必然と偶然と断案
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150-1話 歴史の必然 織田信長

150話は2部構成です。

150-1話からご覧下さい。

《マズい! これは本当にマズい! ファラ! これは何なのじゃ!?》


《これは歴史の修正力……では無いですね。言うなれば歴史の必然です》


 こうなる事を予見していたファラージャは、冷静冷徹に言い放った。



【尾張国/人地城 織田家】


 年が明けた人地城の広間で、信長が伝達を行っていた。

 昨年の近江侵攻にて、不測の事態から朽木攻略は中止となったが、やり残した仕事を今年終わらせる為の伝達である。


 朽木は山に囲まれる、攻めるも守も厄介な場所に位置している。

 しかも生産拠点としては有効な土地も狭く、しかし高島の喉元に位置する朽木は、捨て置くには危険な地である。

 近江は、延暦寺領地は今は仕方ないにしても、完全手中にしなければ安心はできない。


「今年の農繁期に入る頃、近江でやり残した朽木攻略が始まる。その時、お濃を総大将として、喜右衛門(遠藤直経)は副将として朽木の案内人として軍を率いてもらう。小平太(服部一忠)、新介(毛利良勝)、内蔵助(佐々成政)、五郎左衛門(丹羽長秀)、又左衞門(前田利家)はその軍に部隊長として参陣せよ」


「はッ!」


「ワシはワシで軍を率い、あるいは流言飛語にて南近江から京を伺い六角の大部分を引き付ける。朽木は為す術無く落ちるじゃろう」


 放置するには危険な地だとしても、もはや押せば倒れる朽木の六角である。

 近江の地盤を失った六角に、まともな兵が揃えられるか?

 一応、興福寺戦力を借りる手段はあるが、軍勢を展開するには朽木は狭すぎる地形である。


 また、仮に予想に反して防衛の為に軍兵を揃えたなら、それはそれで構わない。

 専門兵士が居ないのに農繁期に軍を揃えたなら、今年の米を諦めて貰うだけである。

 無理せず対峙して過ごし、兵糧を無駄に消費して貰い『また来年!』という手段も取れる。


 そんな六角に対し、南北からプレッシャーを掛けるのだから、あまりにも弱い者イジメが過ぎる戦略である。

 だが、信長としては当然の行為で、油断などするつもりは毛頭無いし、去年も手痛い反撃を受けたのだから念には念を入れるだけである。


「戦略に異論はありませぬが、凄まじい念の入れ様ですな。う~む……」


 成政が何か不満があるのか言葉を濁す。


「これが若狭守(斎藤義龍)の選んだ戦略じゃ。それにこの戦略、ワシの目から見ても万全じゃ。文句は無い」


「あ、いや、損害が軽微である事に越した事はありますまい」


 成政も戦略の穴等を危惧している訳ではない。

 心配なのは、この分だとまともに弓矢を合わせる場面が無いかもしれない事への危惧なのだから。

 勝ち戦に文句は無いが、出来れば活躍して勝ちたいのが本音であった。

 つまり誰の目から見ても、そつの無い戦略であった。


「最近某も戦略を学んでいる最中。これを機に学ばせて頂きます」


 成政の貪欲かつ勤勉な態度。

 そして肺から猛烈な勢いで空気が逆流する音が2つ―――


「戦略を学ぶ!? あの猪武者が殊勝な事を言いよる!?」


「お主、しばらく見ぬ内に変わったのう!?」


 服部一忠と毛利良勝であった。

 しばらく見ない内に変貌した、成政の成政とは思えぬ発言に思わず吹き出してしまったのだ。


「グッ!? フ、フフフ! 貴殿らが三好殿の下でどれだけ成長したのか拝見させて貰いましょうか!?」


 成政がコメカミを痙攣させながら応酬する。


「き、貴殿!?」


「拝見!?」


 追撃同然の成政の似合わぬ言葉遣いに、一忠と良勝は衝撃を受け場は笑いに包まれた


「あまり虐めてやるなよ? 人は成長するのだ。……まぁ、気持ちは分かるがな」


「殿ぉッ!?」


「ゴホン! 今度こそは派手な戦にならんと思うが、競い合うのは良い事じゃ。戦略を破綻させぬ範囲で励むが良い」


「はッ!」


 信長は家臣の順調な成長を歓迎しつつ、良い方向の歴史変化を喜んだ。


 今この場に居る人間が、斎藤家に派遣される織田軍の援軍武将となる。

 総大将として帰蝶。

 副将として、朽木に詳しく帰蝶の近習になった遠藤直経。

 三好から里帰りした服部一忠、毛利良勝。

 斎藤家との関係が深い丹羽長秀。

 近江での役目が無い佐々成政、前田利家。


「後は今川からの援軍もある。彦五郎殿()、よろしく頼みましたぞ?」


「はッ! お任せを!」


 この場には今川氏真も居た。

 なお、信長が敬称を付けて呼ぶのは、遠藤直経が居るからである。

 直経に対する一定の信頼はあっても、直経と浅井久政のラインは無警戒では居られない。

 もし『今川家が実は家臣だった』と漏れると面倒事になるので、カラクリを明かすのは時期を見なければならない。


「進軍日に合わせて次郎三郎(松平元康)が援軍1000を率いて参ります。本来なら同席させたい所ですが、三河で兵の練兵を行うとの断固とした決意を示した故、この場に居らぬ事をお許しください」


 松平元康(徳川家康)の断固とした決意とは、『君子危うきに近寄らず』を信条としているが故の防衛本能が働いたからである。

 なお『危うき』とは言うまでも無いだろう。


「ふぅん? 残念ねぇ」


 その『危うき』の化身たる帰蝶は何かを察した。

 成政ら家臣達も何かを察した。


「松平がそう判断したなら、それで構わぬ」


 信長も元康を不憫に思いつつ、判断を尊重した。

 何せ、成長中とは言え、将来の徳川家康である。

 その判断の正誤はともかく、何事も判断させる事が重要だ。

 例え帰蝶から逃げる判断だとしても。


「それまでは、織田殿との連携強化の為、()()は織田殿と帯同させて頂きます」


 どんなに早くとも、朽木進軍は数か月は先だが、氏真は今川に戻らずこの場に留まる事を選んだ。


「うむ。その時まで滞在し好きな様に過ごすが良い」


 氏真がこの場にいる理由は援軍の為でもあるが、真の理由は帰蝶が近江に転属した為、稽古を付けて貰う少ないチャンスを逃さぬべく動いたからだ。

 元康が帰蝶から逃げ、氏真が虎穴たる帰蝶に飛び込む、妙な今川主従であった。


「はッ! 妻共々よろしくお願いします」


 半ばヤケクソ気味に氏真は言った。

 実はこの場には氏真の妻である涼春(すずはる)も居た。

 先ほどの『我等』とは氏真と涼春である。


「つ、妻か……。彦五郎殿が認めるなら構わぬが……《どういう歴史改変だ……?》」


《さ、さぁ……?》


 流石の信長もファラージャも、涼春の存在には戸惑った。


「北条涼春にございます。今川軍や彦五郎様を助けるべく雪斎和尚様から教えを授かり、こうして参上致しました。織田様の迷惑にならぬ様、精一杯励んで参ります!」


「そ、そうか。良き心がけよな。確か飛騨での戦いで今川治部殿と共に居たのじゃったな?」


「はい。あの時は大した役に立てませんでしたが、濃姫様の戦いぶりには感銘を受けました! 短い滞在期間ではありますが、是非とも手解(てほど)きを受けたいと思います!」


「まぁ! 何て良い心がけ!」


 謎の歴史変化に戸惑う信長とファラージャ。

 困惑する織田の家臣。

 極めてバツが悪そうな氏真。

 自分を慕う存在が、しかもそれが女である事に上機嫌な帰蝶。


 何もかもが充実した織田家。

 驕りとは違う、強者の余裕がそこにはあった。 


「よし! ではその詳細な計画を稲葉山城で若狭守と行う。ワシとお濃、喜右衛門、それに彦五郎殿、涼春殿も斎藤家との顔合わせとして稲葉山城に同行してもらう。他の者は進軍に備えておけ!」


 まさに日の出の勢いである織田家。

 行く先に、瓦解が待ち受けているとは夢にも思っていなかった。



【美濃国/稲葉山城 斎藤家】


 史実で信長が岐阜城と改めた稲葉山城。

 急峻な山に築かれた難攻不落の山城である。


《相変わらず拠点として素晴らしい場所だ》


 濃尾平野の北端に位置するお陰で、何の障害物も無く遠く尾張まで見渡す事ができる稲葉山城。

 地域の支配者として相応しい拠点である。

 史実の信長はこの城で天下布武を宣言した。

 思い入れは誰よりも強い。


《結局、岐阜城は近江に建つ事になりましたねー》


《ここまで斎藤家と親密になったのに今更奪う事は流石にできん。こんなに頼もしい隣人は居るまいて。あんなに憎かった相手とこんな関係になるとは、歴史改変は本当に何が起こるかわからん。だから面白いし、史実を知るやり直し人生に緊張感を与えてくれる。北条の娘の件もそうじゃ。狙い通り同時多発の歴史改編が起きていると見て良かろう》


 ファラージャと雑談しながら、確かな足取りで頂上に向かう信長。

 ふと後方を見ると、すぐ後ろに直経、少し離れて帰蝶、さらに離れて氏真と涼春。

 直経は余裕そうだが、他は間違いなく歯を喰いしばっていた。


《どうしたお濃? 休むか?》


《ざ、戯言を……クッ! 何でこんな不便な所に住んでるのかしら!?》


 稲葉山城は軍事拠点の山城である。

 戦じゃないので、道無き道を進んでいる訳ではないが、それでもキツイ。

 冬の寒さであっても汗ばむ程の山なので、健脚の持ち主であっても疲労は軽くない。

 これは別に帰蝶らの体力が特別劣っている訳では無く、信長と直経が異常なのだ。


 この時代、尾張は地形的に止むを得ない例外的処置で平城が主だが、本来なら防御に適した山城に拠点を構えるのが普通である。

 平地に居城が築かれるのは、戦より政治が重要になった戦乱末期からであろう。


 一部の者が、信長のペースに付いていけず、息も絶え絶え城門に辿り着くと、義龍の側近である仙石久盛が出迎えに来た。


「織田様、ようこそお越しくださいました。皆様におかれましては、軍議の前にまずは疲労した体を休めて頂きましょう」


 久盛が配下に目配せし、帰蝶以下、疲労困憊の者達を別室に案内する。


「その間、織田様だけでも、殿と大筋の認識共有をして頂ければと思います」


「ん? そうか。分かった。ではお主達は休んでおれ」


 こうして信長だけ、先に部屋前に案内された。



【稲葉山城/斎藤義龍私室】


「殿! 織田様が参りました!」


 久盛が小姓の真似事をしながら、信長の来訪を告げる。


「入ってもらえ」


 義龍が入室許可を出すと襖が開かれるが、違和感を覚える光景がそこにはあった。


「……。うん!?」


 そこには斎藤義龍と、何故か嫡男の喜太郎が居た。


「すまぬな義弟よ。帰蝶らに休んで欲しいとは方便。お主にだけ、どうしても先に会っておきたくてな。少々小賢しい事をさせてもらった」



【稲葉山城/大広間】


 帰蝶達が疲労を回復させ身支度を整えた後、広間に通された。

 既に義龍と信長は着座しており、喜太郎も義龍の後方に控えていた。

 他には仙石久盛、竹中重治(半兵衛)が同席していた。


「遅くなりましたが、お陰で疲労は抜けました。兄上。ご機嫌如何ですか?」


 帰蝶はなるべく機械的に挨拶する。

 義龍の暴走を警戒しての事である。

 だが、そんな心配は杞憂だった。


「うむ。お主も健在で何よりだ。先の戦で負傷したと聞いたが、問題は無いようだな?」


「……? はい。この通り体に不調はありません」


 帰蝶は立ち上がりI字バランスを披露する。

 拳法着だからこそ出来る身体操作である。

 なお、ここまで柔軟性ある身体なのは、未来式超特訓の賜物。

 この柔軟性のお陰で、女に有るまじき身体能力を生み出している。


「ハハハ。まこと頼もしい妹よ。さて本題に入ろうか」


 頬を僅かに緩めた、いや、緩めるに留めた義龍は本題に入る。


「今年の農繁期に朽木に攻め入る。その大筋は既に義弟より聞いているな?」


「はい。我等は援軍として、私は援軍大将として兄上に従います」


「うむ。その件よ。援軍はありがたく受けるが、ワシに従う必要は無い」


「……それは如何なる事で?」


 帰蝶は義龍に問いつつ、信長を見た。


「……」


 信長は普段と変わらぬ表情をしている―――様に振舞っている、かの様にも見える。


《何かあったのですか?》


 帰蝶は仕方なくテレパシーで問いかける。

 何か話し難い事があっても、誰にも憚る事無く聞ける便利能力だ。

 だが信長は素っ気無かった。


《……。とりあえず話を聞いた後にせよ》


《はぁ……?》


「此度、ワシは出陣せぬ。出陣するのはこの喜太郎よ」


 義龍が、後ろに控える喜太郎に向け手を掲げた。


「斎藤喜太郎にございます。既に拙者を見知った方も居られますが、改めて挨拶いたします。この喜太郎、此度の朽木攻略の総大将を務める事になりました。未熟者ではありますが、足手まといにならぬ様に精一杯励みます!」


 喜太郎は言い終わると頭を下げた。


「そう言う事だ。総大将はこの喜太郎になるからワシに従う必要は無い、と言う事よ。勿論、喜太郎は此度が初陣。なればこそ、朽木攻略は絶好の機会でもある」


 武士の初陣、しかも地位の高い武家の嫡子の初陣である。

 実績を残す為に、初陣はどう転んでも勝つ戦で行われる事が比較的多い。

 その点、朽木攻略は申し分ない案件である。


「喜太郎殿……ですか!?《これが殿の懸念ですね!?》」


《……》


 帰蝶は当然、今この場にいる面々、既に聞かされていた信長と斎藤家臣以外、全員驚いていた。


「織田家の懸念は承知して居る。本来ならワシの下で初陣を済ますのが普通なのは百も承知。じゃが、これからの斎藤家と織田家を思えば、多少なりとも試練は与えねばならぬが、初陣が朽木攻略では試練にもならん。散歩同然。ワシが出るまでも無い」


「さ、散歩!? 《殿!?》」


《……後にせよ》


 仮にも戦を散歩と表現するのを、頼もしいと感じるべきか、油断と感じるべきか帰蝶は迷った。

 それに慎重な信長が、去年痛い目を見た信長が、反省し今回も万全の態勢を整えての進軍を計画している信長が、この言葉に反応しないのも気になる。


「なればこそ総大将よ。多少なりとも重い立場を経験させ試練とする」


「成る程、そう言うことですか。まぁ、確かに朽木は誰が指揮しても落ちるでしょう。初陣と言う意味では最適なのも理解できます。兄上が出ないのは意外でしたが……」


「斎藤家も若い世代を出していかねばならぬ。今川家からも若い世代がこうして芽吹いて居る。斎藤家だけがいつまでもワシが出しゃばっては格好がつかぬ。今川治部殿も同じ思いで彦五郎殿をこうして各地に派遣し経験をつませておるのだろう?」


「そうですな。某が桶狭間に参陣したのは12の時。あの経験があったからこそ今の某があります。此度の経験が喜太郎殿の糧にならぬはずがありますまい。ただ、某の場合は居ても居なくても勝敗に影響は無かったですが、喜太郎殿は総大将。負担は計り知れますまい」


 氏真が己の経験を交えて懸念点を述べた。


「うむ。彦五郎殿の言は尤もだ。いくら散歩でも誤った判断は避けねばならぬ。じゃからこの仙石久盛が副将として実際の判断を行う。また喜太郎に近い世代の竹中重治もつける」


 呼ばれた久盛と重治が頭を下げた。


「喜太郎が考え、重治が補佐し、久盛が最終判断をする形で此度の戦は進行させる」


「そうですか……。まぁ、はい。わかりました」


 帰蝶は『義龍が出陣した上で喜太郎に考えさせる形でも良いのでは?』と思った。

 ただ、仙石久盛と竹中重治のサポート体制でも問題は無いと判断し、意義を唱えて斎藤家の方針に口を出すのも憚れるので、それ以上は口にしなかった。


「仙石殿、竹中殿、よろしくお願いします」


「はッ! 久しぶりに間近で見る帰蝶様の戦い、某らも楽しみです!」


「ご期待に応えて見せましょう!」


 帰蝶は右拳で左手を叩く。

 乾いた音が広間に広がり居並ぶ面々に衝撃が伝わる。

 義龍の体が若干反応した―――だが、それはテレパシー中で気が付かなかった。


《ちょっと驚きましたけど何とかなりそうですね》


《そうじゃな》


 とりあえず義龍が、油断や驕りで舐めている訳では無い事に安心する帰蝶。


「お主は織田援軍総大将として、しかも、女の身でありながら最前線に立つ身。何か疑問があれば喜太郎に問い正し、考える機会を与えてやって欲しい。喜太郎も多少なりともお主の武芸を叩き込まれた弟子でもある。弟子の成長を促進させてやってくれ」(107話参照)


「そう言う事であれば。ヨロシクね喜太郎殿」


「はッ! 叔母上にはご迷惑をお掛けしますが、支援をお頼み申し上げます!」


《しばらく見ない間に立派になったわね! これがあの斎藤龍興になるとは思えないわね!》


《"あの"呼ばわりですか?》


《甥っ子だけど斎藤家衰退の原因だったから、どうしても、ね。史実と今の龍興殿が同じとは思えないけど、やっぱりやり直しを歩む身としては殿の懸念も理解できるわ》


《……まぁな》


《龍興殿の評価ってどうなってるの?》


《……評判は良くないですね。家督継承後に相次ぐ家臣の流出と、佞臣を重用し、信長さんを打ち破った竹中半兵衛さんを罵倒した結果、稲葉山城をたった16人で落とされたとか散々ですねー。その後、信長さんに負けて落ち延びますが、逃げた後はしぶとかった様ですね。泥臭く生き延びて信長包囲網とかでは活躍したとか何とか。ルイス・フロイスなんかは優秀だと評しています。信長教では破壊神の使途の座についてます。今川義元さん同様、不人気ベスト5には入るんじゃないですかね……あッ!? ヤバッ!?》


 ファラージャは後悔する。

 また今川義元の時の二の舞になるのかと。

 しかも5次元空間には祖父の斎藤道三も居る。


《中々に酷い扱いよな。ワシはそこまで無能だとは思わんがな。まぁ今は良い》


 だが、信長は爆発する事無く、一安心のファラージャであった。


《厳しい様じゃが結果が全て。仕方あるまい》


 道三も口を挟む。

 己も下剋上で成り上がった身なので、弱者にはまるで容赦ない。


《だが、此度は可能性を感じる。期待はしたいな。孫を頼むぞ帰蝶よ》


《お任せを!》


「さて、こうして喜太郎が総大将となるからには、いつまでも幼名では都合が悪い。そこで、この場で元服を行う。儀式は後日執り行うが、これより喜太郎改め、斎藤新九郎龍興として、斎藤家の将として、次期斎藤家当主として励むが良い」


《元服は分かるけど、次期当主指名って随分急ね》


 朽木攻略総大将、元服、次期斎藤家当主の座が一気に告げられた。

 先例が無い事は無いだろうが、内容得盛には違いない。


《殿は知ってたんですか?》


《お主らが休憩して居る間に先触れとして聞いた》


《全部知ってたから特段驚く事無く、でも内容が内容だけに難しい顔してたんですね》


《……まぁな》


 喜太郎は事前通知として当然聞いていたし、信長も先に聞いていたので驚く事は無かったが、帰蝶や氏真らは当然驚いた。


「急な話で驚きましたが、目出度い事には違いありませぬ。当家の松平も、桶狭間直前で元服しましたからな。急では有りますが先例は山ほどありましょう。当主指名と合わせ誠に目出度い事」


 氏真が、義元の名代として相応しい言葉を述べる。


「ありがとうございます。名は与えられどまだまだ未熟な身。皆様のご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いいたします!」


 喜太郎改め龍興は少年武将として清々しい挨拶で決意を表明する。

 そこには、史実で無様に没落するとは思えない斎藤龍興の姿があった。


「よし。大まかな方針は決まったな。お濃らは先に帰還し準備を進めておけ。ワシは斎藤殿と詳細を詰めておく」


「わかりました」


 こうして斎藤家での軍議及び、元服と後継者指名が行われたのであった。

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