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外伝41話 斎藤『ファラージャ』胡蝶

次は信長の話を書いて今回の外伝は終わり、と前回の後書きで言いましたが、あれは嘘になりました!

嘘とはいっても信長要素がゼロではないですが、長くなったので分割します!

 この話は弘治3年(1557年)武田との飛騨信濃決戦が終わり、尾張に帰還した後の話である。



【尾張国/人地城 織田家】


 武田との争いで思わぬ窮地に陥りつつも、しかも先代当主の織田信秀が討死する大打撃を受けた織田家。

 信長は主だった家臣を集め話していた。


「もし親父殿に報いたいと思うなら、親父殿の死に学べ。宗滴、雪斎、道三の死に学べ。敵の死すら己の経験として落とし込め。ワシはこれからも犠牲は最小限になる様に務める。じゃが人は死ぬ。この中の誰かは必ず死ぬ。寿命も含めるなら全員死ぬ。ワシ等は人を殺して道を切り開いておるのじゃ。自分だけが死を免れる事は出来ぬ。慣れよ、忘れよとは言わぬ。じゃが切り替えは必要じゃ」


 信長の話は己の覚悟や謝罪、宗教勢力への対応など多岐に渡る。


「父上の葬儀は後日執り行う。それまでは各々体を休めよ」


 信長の話は締められた。

 家臣には余り自己を責めたりせず配慮をする一方で、信長は己の失態が許せなかった。

 転生のアドバンテージを使い、この世に存在する人間で唯一100%以上の有利を叩き出せるハズの人生で後れを取った事が許せなかった。

 しかしファラージャや帰蝶は反論する。

 転生も引っ(くる)めて100%であり、100%以上を目指すのは驕りであると。


《失敗しないに越した事は無いと思いますが、己に対する過剰な要求は心身の疲弊を招きますよ?》


《……そうですよ。敵も味方も生き残りに全力なのです。今回身に染みて理解しました。私たちは200%、300%の力を得ている訳ではないのです。転生経験も全部ひっくるめて100%なのです。ならば相手も互角です。この顔を見てください》


 顔は痛々しく切り裂かれている。


《転生したのだから勝たなければならない。それは確かにそうなのですが……。こちらが強くなれば相手の反発も強まりましょう》


《言わんとしている事は解った。於濃、ファラ。お主らの諌言は心に留め置こう。中々に難しき事じゃがな……》


 信長は無意識が蝕む驕りに苦悩しながら、2度目の父の死を経験するのであった。

 せめて安らかな眠りを願って。


 13章 弘治3年(1557年) 完

 14章 弘治4年へと続く






《ちょっと待ってください。()()()()()()()()()()()()


《は? え?》







【5次元空間/時間樹】


 飛騨信濃の決戦が終わり、一息ついたころ。


「フーティエ。準備はいい?」


《魂召喚モード起動。生体エネルギー全ライン直結、形態形成場安定。5次元空間、時間樹異常なし。システムオールグリーン。いけます》


「転生も引っ(くる)めて100%。ならこれも含めて100%でも良いはず。私の無茶な要請に応えてくれる信長さん達に対するお礼と援護も兼ねて……いくわよ!」


 ファラージャはフーティエに命じると、自身の体に送られてくる情報を元に、5次元空間に漂う該当する魂を呼び寄せ覚醒させた。



「……ワシは……ワシは病で2回死んで……2回死んだ……ん?」


 異様にガタイの良い男が2回経験した死を思い出し混乱する。



「殿、拙僧は先に逝きます……あと織田との決戦は……桶狭間では殿と拙僧で……あれ?」


 異様に威厳のある男が自分が死んだ後の織田家との対応を思い出し混乱する。



「最後の最後で義龍の才能を読み誤るとは! 長良川がワシの最後の地か! いや、飛騨だったか?」


 異様に胡散臭い男が自分の2回経験した別々の死地を思い出し混乱する。



「病も限界か。せめて尾張を統一しておけば……? ……病? ワシは斯波様を討って……?」


 異様に信長に良く似た男が、尾張を統一したのか、していないのか、混濁する記憶に混乱する。

 魂が覚醒した男達は、何が起きたのか分からず混乱している様であった。



「皆さん、おはようございます」


 ファラージャはなるべく4人から離れて声をかけた。

 かつて信長に投げ飛ばされた経験が活きたのだが、あの時とは違い天地が存在しない5次元空間で意味があるかは不明だ。(2話参照)


 その警戒するファラージャの呼びかけに、一早く反応したのは胡散臭い男であった。

 記憶に残る声と一致しての反応であろう。


「あ、あぁ、帰蝶か。おはよう……帰蝶!? どうしたその恰好! あの白甲冑も狂っとるが、病は大丈夫なのか? その格好は……お主は病で……白甲冑? 甲冑ってお主には無縁の存在? ……ここはどこだ!?」


 胡散臭い男がファラージャを帰蝶と誤認し、その病人とは思えない狂った格好に驚いた。

 さらに周囲の環境が、見知った物に何も一致する事のない場所と認識し、記憶の混濁も加わる。

 さらにさらに超巨大な時間樹や、大地の存在しない空間に放り出され、いかに百戦錬磨の胡散臭い男といえど、慌てふためくしかなかった。

 それはガタイの良い男、威厳のある男、信長によく似た男も同様であった。


 ファラージャは、敢えて挨拶以上の声は掛けなかった。

 一通り、納得するまで驚いてもらって静かになるのを待った。

 今、話しかけた所で質問攻めに遭うのは目に見えている。

 ならば聞く体制が整うのを待つ方が効率的である。

 時間はタップリある。


「もう、いいですかね?」


「う、うむ。帰蝶よ。説明してくれるのだろう? そもそもお主が帰蝶かどうかも良く分からんが……」


 顔パーツの位置や声は間違いなく帰蝶なのだが、それ以外の全てが帰蝶とは思えない姿形に、胡散臭い男は混乱しきりだ。

 それはガタイの良い男、威厳のある男、信長によく似た男も同様で、それぞれが、かつて関わった記憶に残る帰蝶の姿から掛け離れた姿に戸惑いを隠せない。


「じゃあ、そこからにしましょう。私は貴方の娘である斎藤帰蝶であり違うとも言えます。少なくとも遺伝子的には同一ですから、わかりやすく言えば双子です。名は胡蝶。別名としてファラージャとも名乗ってます」


「ふ、双子!? ふあらあじゃ? 不破羅阿邪? 馬鹿な! ありえん! ありえない……?」


 胡散臭い男にとって、娘が双子だったなんて聞いた事が無いので違うと断言するのは当然だが、事実として目の前には帰蝶らしき人間がいる。


 ファラージャこと胡蝶が、信長達の時と違い、一切隠し事しないのには意味がある。

 信長と帰蝶が復活した時は、ファラージャと名乗ったのは、帰蝶本人を目の前にして複製だの双子だの言うのは、混乱の元となると考えた末の偽名である。

 帰蝶と胡蝶では響きも似てるし、面倒な事が起きるかもしれないと思って伏せたが、今は、隠す必要も薄れてきたと判断したのであった。


 なお『ファラージャ』とはアラビア語で『蝶』を意味する。

 ついでに『フーティエ』は中国語の『蝶』である。


 どちらも胡蝶の時代からすれば、古代言語に相当する失われた言葉であるが、日本人に馴染みの無い響きとして選び名乗ったのが真実である。


「タップリ時間はありますから説明しますよ。この5次元空間は時間の概念から外れた世界ですから。まず私は皆様の時代から1億年先の世界の人間です。いいですか?」


「ち、ちっとも良くないが……。ワシはこの若造らと共に仏の力か何かで復活したと?」


「……ん? ちょっと待て! 若造とは何じゃ! 若造の貴様に若造呼ばわりされる筋合いは無いわ!」


 ガタイのいい男が、聞き捨てならないセリフに引っ掛かり場を乱した。


「若造は若造じゃろう? ワシは娘(?)と話すので忙しい。黙っておれ!」


 胡散臭い男ももすかさず応戦する。


「あっ。しまった」


 ファラージャは、説明が足りていない事を後悔したが後の祭りである。

 信長と同様、4人を若い姿で復活させたので、お互いがお互いを認識出来ないのである。


「まぁいいか。足場の無い空間では、まだ自由に動く事もままならないだろうし……」


 ファラージャのいう通り、掴みかかろうとして上手く動けず、しゃべる事しかできない現実に、4人は一頻(ひとしき)り喚いたあと静かになった。


「もういいですかね?」


「あ、あぁ。こやつらは誰じゃ? いや一人は信長と分かるが……」


 信長によく似た男を、信長と誤認した胡散臭い男と、頷くガタイのいい男と威厳のある男。


「信長!? ワシは信秀じゃ!」


 信長によく似た男は驚いて抗議し、また喚き散らかす4人。


「埒があきませんね……」


 ファラージャは、信長と帰蝶を復活させた時を思い出す。

 信長は割と素直だったんだなと。


《朝倉宗滴! 太原雪斎! 織田信秀! 斎藤道三!》


「な!? 脳から声が……! いやその名前は……こいつら!?」


《お静かに!! これ以上無駄に発言したら真実を知らないまま魂を消しますよ!》


 テレパシーの音量を最大限にして、彼らの脳内に一喝を入れるファラージャ。

 その瞬間、彼らの意識に空白ができたタイミングを狙い、脳内に情報を流し込んだ。

 最近開発した、魂の状態なら伝えたい情報を楽にインストールできる技術である。

 乱暴な方法で、しかも理解するかはどうかは別問題なので、少量ずつではあるが。


「一億年先の未来……こんな光景を見せられて……若返って………信じる他あるまい……」


 とりあえず、今の状況と飛び越えた時代をインストールしてみたが、問題は無さそうである。


「流石は時代に名を残した人達です。理解する思考は備わっていますね。これから少しずつ話しますけど、まずは黙って聞いてください。質問は後から幾らでも受け付けますから。《いいですね!?》」


「は、はい!」


 またしても脳内に一喝され、固まる4人。


「まず私は帰蝶さんの複製、クローンです」


「くろおん? 複製……人の? い、一体何を……いや何でもない」


 ファラージャの睨みに、4人はとりあえず黙った。


「貴方達の時代から数千年後、帰蝶さんの遺髪が見つかります。そこから遺伝子情報を得て私が複製されました。もの凄ーーーく噛み砕いて説明すると、クローンとは未来の南蛮技術です。どんな人でも生物でも、遺伝子……いや、肉体の一部があれば作り出せるのです」


「……は、はぁ」


 彼らはファラージャから、信長が死ぬまでの歴史を学び、未来の信長教を知り、何故信長が人生をやり直し、どんな状況なのか把握した。

 実際にその目で、未来の信長教が起こす大惨事を目の当たりにした。


「貴方達は、史実と信長さんが転生した3回目人生の中で亡くなりましたが、2つの死因や人生を把握しているのは、5次元空間に来た事で、形態形成場の力が働き魂が2つの記憶を融合させたのです」


「……成程。ようやく理解したぞ」


 道三がやっと理解した。


「我等の頑張りの先があの惨状なのか」


 宗滴が、信長教を知りがっくり項垂れた。


「拙僧の人生だった仏教は、まやかしだったのか……」


 一方、雪斎は己の宗教観が打ち砕かれ、意気消沈していた。


「三郎が尾張どころか日本の覇者!? 後世に多大な影響を与えておるとは!」


 信秀は自分の息子の偉業に、驚くしかなかった。


「じゃあ質問はありますか? 父上は何かありますか?」


「ち、父上……血縁上はそうなるのか。そ、そうじゃのう? 今、ワシの中では義龍に討たれた憎しみと、信長と共に歩む義龍を誇りに思う感情が同居しておる。この矛盾した感情は何とかならんのか?」


 帰蝶と完全同一人物なのだが、明らかに違う部分がある娘の『父上』呼ばわりに困惑しつつ、道三は己の記憶の混濁について対処を求めた。


「記憶を消す事はできますが、皆さんにも2つの人生経験を元に、これから助けて欲しいのでオススメはしません。従って慣れて下さいとしか言えません。信長さんは割り切るのは早かったですよ? 今、光秀さんや秀吉さんを目の前にしても『別次元の話』として区別しています」


 道三の複雑な心境は理解しつつも、ファラージャは目的の為に慣れろと言った。

 そんな苦悶の道三に比べ、宗滴はそこまで苦にはしていなかった。


「ワシは2回ともそこまで変化のない無い病死じゃし、堕落した義景とやらが終わらす朝倉の歴史は興味ないが、今の朝倉には興味が尽きぬし、一回目で望んだ信長の行く末が知れたのじゃから満足ではある」


 宗滴は1回目の臨終間際において『あと3年生きて信長の行く末を見たかった』と漏らしたが、それが2回目の記憶が流入して叶ったのだから、道三程には困らなかった。


「そうですな。拙僧も一回目の今川家の行く末には、愕然とした思いがありますが、あの桶狭間は仕方ない。それよりも今の今川家の行く末の方が遥かに気になりますな」


 雪斎も2回目の記憶と歴史の方が希望が持てる内容なので、記憶の混濁に対する対応は早かった。


「ワシは1回目も2回目も満足して逝った。むしろ2回目の方が1回目のやり残しを片付けた分、文句もない」


 信秀は1回目では斯波家の家臣の家臣のまま死んだが、2回目は尾張統一の仕事を果たして死んだ。

 1回目も後悔して死んだ訳ではないが、2回目の記憶が混ざった分、やり残した仕事を完遂した優越感が味わえる現状に満足していた。

 さらに息子が、後世に多大な影響を与える存在となった事実を知った今、その父親としては文句など有ろうハズもない。

 信長教に対しては眉を顰めるが、それでも強い影響の結果となれば満更でもなかった。


「……お主等は幸せな人生を送ったのだのう」


 道三だけが、1回目の憎しみが2回目にも匹敵する感情故に困っていた。


「まぁ良い。それよりも気になる事を言っておったな? 『二つの人生経験を元に助けて欲しい』と」


「そうそう、それです! 一番知りたいのは拙僧ら復活させて、胡蝶殿は何を成し遂げたいのです? 我等は肉体が死んでしまっているから、もう現世に関わる輪廻転生は出来ないのでしょう?」


 道三と雪斎が指摘した。

 信長は肉体がある時代に転生したが、彼らは肉体が既に滅んでしまっている。

 舞い戻る事は不可能である。


「例えば信長さんが転生して分岐した時間樹ですが、信長さんが失敗した場合の策として、皆さんが生きている時間に皆さんと一緒に転生させて、さらに分岐させる事も計画しています。例えば飛騨信濃の戦い以前とかに。ただし、それを行うにはまだ技術が足りません。単純に私が信長さんと帰蝶さんのサポートで手一杯なのです。ですが、例えば《()()()()()()()()()()()()》。今なら信長さんと帰蝶さんと話す事ができますよ」


「ど、どうやって……」


 今ここに居ない人間と話す事は出来ない。

 常識である。

 しかしここは未来で5次元空間。

 常識は無いに等しい。


「念じて下さい」



【尾張国/人地城 織田家】


 13章 弘治3年(1557年) 完

 14章 弘治4年へと続く


 信長が無意識の驕りを自覚し、今生での成功を父や、前後してあの世に行った武将たちに密かに誓った後。


《ちょっと待ってください。()()()()()()()()()()()()


 ファラージャが不意に、しかし、タイミングを見計らっていたのか、信長達を引き留めた。

 その直後、聞いた事が有る様な無い様な声が脳内に響いてきた。


《え? もう話せるのか? 念じるのだな? あ、あー。おほん。ひ、久しぶりじゃな。元気にしておるか? いや、そっちの感覚では最近の話か?》


 異様にガタイの良い男が話しかける。


《こ、これは織田様、ご機嫌は如何ですかな? 拙僧は悟りに至って(すこぶ)る愉快ですぞ》


 異様に威厳のある男が話しかける。


《お、おぉ!? 本当か? 婿殿。な、何を呆けておる? そ、そんな事では婿失格ぞ?》


 異様に胡散臭い男が話かける。


《本当に三郎か!? あー、だ、大丈夫か? そんな事で二度目の人生、大願が成就できるのか?》


 異様に親近感を覚える男が話しかける。


《は? え? ……誰だ? いや、何だこれは?》


 テレパシーで話しかける、見知らぬ4人の男の呼びかけに信長は思わずよろめき膝を突く。

 このテレパシーで会話できるのは、信長、帰蝶、ファラージャだけである。

 誰かが割って入る事など不可能であるし、そんな事は予想も希望もしていなかった。

 しかも全員が全員、信長を知っている様で何やら親しげだ。


《濃姫殿、顔の傷は如何かな? 大丈夫、お主であればそんな()()()、跳ね返すであろうよ!》


 異様にガタイの良い男が帰蝶に話しかける。


《濃姫殿。其方は拙僧を圧倒した方。これで終わってしまっては拙僧の立つ瀬がありませぬ》


 異様に威厳のある男が帰蝶に話しかける。


《帰蝶! 大丈夫か!? おのれ武田信繁! ブチ殺してくれる! 呪いで!!》


 異様に親近感を覚える男が帰蝶に話かける。


《濃姫殿、今までの愚息に対する援助、今、こういう身になって初めて理解しましたぞ!》


 異様に信長に似た男が帰蝶に話しかける。


《え? あの、えっと……?》


 帰蝶も何が何やら理解できず、顔の負傷が原因なのかと傷を抑え(くずお)れる。

 信長は目の前の、いや、脳内の現実に思考が追い付かず混乱の極みに達するが、しかし、ゾワゾワと様々な記憶の事象が謎の人間に結び付き一つの結論に至る。


《まさか……まさか……いや、その声、その雰囲気!! 宗滴、雪斎、道三、親父殿か!?》


《ああ。その通りじゃ。姿形は若いがな》


《これも一種の因果なのでしょうな》


《娘には別れの挨拶をすませたのに、また再会するのは格好がつかぬなぁ》


《ワシも似た様な感覚じゃなぁ。死後に会わせる顔とはこんなにバツが悪いとは》


 4人の男は信長の問いに答えた。


《それにしてもその姿! 若さ! ファラ! どう言う事じゃ!?》


《さっき言ったじゃないですか。一応こういう事もできると。原理は信長さん達と同じです。魂を呼び寄せたのです。この5次元空間に》


 ファラージャは信長と帰蝶と、5次元空間にいる宗滴、雪斎、道三、信秀を繋げた。

 形態形成場を利用した超未来技術であるが、時間の概念が無い5次元空間だからこそ、信長と帰蝶と、現世とは時間軸が異なる魂の4人を繋げる芸当がが可能なのである。


《確かあの時、ワシらを復活させるのには、於濃の肉体を介して魂を呼び寄せた、と言って居ったな?》(4話参照)


《はい。その通りです。あの時は言いませんでしたが、私と帰蝶さんは遠い血縁者ではありません。むしろ血縁者どころか同一人物》


《何だと!?》


《やっぱり……》


 驚く信長に対し帰蝶は冷静だった。


《やっぱり!?》


《殿がフライングしていった5年間。私はファラちゃんと過ごしていましたからね。何となくそう思ってました。確証はありませんでしたが》


《話を進めます。魂というのは関わった人すら記録し保持するという説が戦国の世から遥か未来に提唱され、その技術を私が確立させました。順番としては帰蝶さんの魂から信長さんの情報を読み取り生み出し、肉体を作って魂を封入したのが全ての始まりです》


《じゃあ親父殿達は……》


《信長さんや帰蝶さんが直接触れた瞬間、魂から遺伝子まで全ての情報を取得したのです》


《もう訳が分からん……!!》


 信秀と道三は、信長と帰蝶の実の親である。

 当然一切触れえないのはあり得ない。

 では宗滴と雪斎についてはどうなのか?


《まさか……まさか宗滴と握手させたのは!?》


《ご名答!》


 宗滴との握手とは、近江で朝倉浅井軍と戦った後の話である。(83話参照)

 講和条件が纏まり場も開きかけた所で、突如信長が南蛮式の挨拶として握手を提案した。

 実はファラージャが、いつか宗滴を未来に復活させる為に仕組んだ、故意の未来知識漏洩であった。


《じゃあ雪斎は!?》


《雪斎さんは、引退試合で帰蝶さんが触れましたからね。幸運でした》(100-5話参照)


《何たる事じゃ!》


《もう、大抵の人はここに復活させられますよ。例えば義元さんは雪斎さんの魂から、義景さんは宗滴さんの魂からと言った具合に。もっと技術が進めば、見た瞬間全ての情報を得る事も可能になります。芋蔓式です》


《頭が痛い……》


 信長は頭を抱えた。

 これから葬儀をしたり、慰霊をしなければならないと考えていた人間から話しかけられたのである。

 当然といえば当然である。

 しかし、信長の苦悩はココからが本番であった。

次回は間違いなく信長の話になります。

投稿は8月中になります!

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