外伝33話 本能寺スタヂアム
4月1日ですね!
【山城国/本能寺スタヂアム AM5:30】
「さぁ! 始まりました本能寺謀反奇襲戦! 実況は本願寺顕如。解説は足利将軍家から足利義昭様です」
「どうも。お早うございます。足利義昭です」
「さて明智軍の謀反により急遽始まったこの、本能寺謀反奇襲戦。戦国野球協定により勝者は敗者に何でも要求する事が可能なのはご存知の通り。明智軍の要求は織田信長殿の切腹。対して織田軍の要求は今回の理由の説明を求めております。将軍様、この戦いはどう予想されますか?」
「いやぁ、予想も何もあのスターティングメンバーでは、一方的なワンサイドゲームになるんじゃないですか?」
「なるほど。一方的とワンサイドと同じ意味を違う言葉で言う程に絶望的と言う事ですね」
「む……!」
「では、その絶望的なスターティングメンバーを見てみましょう」
1(投)斎藤帰蝶
2(遊)森乱丸
3(二)森坊丸
4(捕)弥助
5(三)森力丸
6(一)武田喜太郎
7(中)大塚又一郎
8(右)今川孫二郎
9(左)織田信長
「こ、これは苦しい! 助っ人外国人の弥助選手は風貌とパワーは有名ですが、斎藤帰蝶と織田信長以外はルーキーばかりです! かつてルーキーが一度にこれだけスターティングメンバーに名を連ねる事などあったでしょうか!? 森家のルーキー三兄弟はそれなりに期待の星ですが、半分以上拙僧は知らない人間です! 織田軍主軸の信忠殿も早朝過ぎて間に合っておりません! それに織田信長が9番レフトと言うのも気になります! 帰蝶殿の投手も今シーズンは初登板です! 何かの戦略でしょうか?」
「いやぁ? あのクソ野郎は所詮この程度でしょう。この現実に怖じ気付いてるんじゃないですかね? ハッハッハ!」
「将軍様の口も饒舌です! 一方、急襲したの明智軍のスターティングメンバーですが……」
「うむ。これは堅実なメンバーじゃ……なんじゃと!?」
1(二)斎藤利三
2(遊)羽柴秀吉
3(左)長宗我部元親
4(投)明智光秀
5(捕)徳川家康
6(中)近衛前久
7(三)里村紹巴
8(一)毛利輝元
9(右)千利休
「こ、これは!? 俊足好打の斎藤利三殿が一番に入るのはいつもの事ですが、羽柴、長宗我部、徳川の名前が確認できます……!? 今情報が入りました! 明智軍はこの日の為に備え中国リーグ、四国リーグ、東海リーグから期限付きトレードを行ったの事! 中国の安打製造機羽柴秀吉、四国の大砲長宗我部元親、東海の鉄壁捕手徳川家康! その他にも様々なリーグから引っ張ってきたのか堅実な明智軍らしからぬ超重量打線に仕上がっております!」
「これは、明智は本気じゃな! いいぞ! ブチ殺せ!」
「将軍様の私情にも熱が入ります! まさに明智軍必勝のスターティングメンバーと言っても過言では無いでしょう! さて球審は筒井順慶殿。筒井殿はそのどちらにも与せず中立を貫く姿勢に良くも悪くも定評がある御仁! どんなジャッジを下すかも見所の一つです。さぁその筒井殿がプレイボールを宣言しました!」
「1番セカンド、斎藤利三様 旗指物番号5」
「鶯姫の茶々様の可憐な声がスタヂアムに響き、斎藤殿がバッターボックスに入ります!」
「さぁ織田家など完全試合のコールドゲームじゃ!!」
「将軍様の罵声を他所に、帰蝶殿、振りかぶって第一球を投げまし……!? あーっと! デッドボールです! これはいけません! 帰蝶殿、早朝に叩き起こされて不機嫌なのが隠しきれておりません! 右アンダースローから放たれる239㎞/hの豪速球が、利三殿の脇腹に抉りこみました! 利三殿は生きているのでしょうか!? 討死か!?」
「チッ! 下手糞が! それくらい避けなさいよね!」
「これはお下品! 帰蝶殿、当てた上に悪態をついております! 利三殿、悶絶しております!」
「ええい! なんと情けない! それぐらいの負傷、武士ならば耐えて見せんか!」
「義昭様、ソレは無茶……いや利三殿立ち上がりました。甲冑が防いでくれた模様です! しかし甲冑はベッコリと凹みボールの形がクッキリと刻まれております! 南蛮製の当世具足が凄いのか、帰蝶殿の投球が凄過ぎるのか! いや帰蝶殿の投球が凄いのでしょう! 利三殿、千鳥足で一塁に向かいますが、内臓へのダメージが隠しきれておりません!」
「アレぐらいはバットで叩き落して貰わねば武士失格じゃ! 兄上ならば余裕でやってのけたじゃろうて! かつての三冠王義輝兄上は死球など生涯で一度も経験しておらん! 利三も、せっかくワシを差し置いて某夢想ゲームのモブからプレイアブルキャラに昇格したのに情けない!」
「将軍様、字が違います! って言うか発言が危険すぎます! っておや? 先程拙僧は239㎞/hの剛速球とか言いましたか?」
「どうじゃったかのう? 言ったかも知れんが言い間違いじゃろう。確かに女にしては速いが、そんなスピード人間に出せる訳ないわ」
「それもそうですねぇ。大変失礼致しました」
「2番ショート、羽柴秀吉様 旗指物番号4」
「さぁ、2番には中国の安打製造機羽柴殿が入ります。昨年は年間400安打を達成した脅威のバッター! 凄過ぎて三振を見れたなら幸運が訪れるなどと言われております! しかし今回の急襲戦では後ろめたさがあるのか顔色が優れません。主家に対し遠慮があるのかバッターボックス最後方で小さく構えております」
「なんじゃそりゃ! 何の為の援軍じゃ! 織田なぞ遠慮する必要があるか! 滅多打ちじゃ!」
「帰蝶殿、振りかぶって沈み込み、右アンダースローで第1球投げました!」
「スットラァァァイク!」
「放送席まで轟くミットの衝撃音と共に帰蝶殿の速球が決まりました。しかしそれにしても早い! 球速も253……253㎞/h!?」
「おいおい、スピードガンが壊れとるんじゃないか?」
「その様ですね。不手際があった事を皆様に謝罪します。続けて帰蝶殿、第2球を投げました!」
「ボール!」
「急速は268㎞/h! ……将軍様、新しいスピードガンですが……」
「壊れてないのか??? 確かに早いが本物か!? なぜいきなりこんなスピードが!?」
「理由は不明ですが……しかしこれなら羽柴殿の現状は理解できますね。あの顔色と打席の位置は、恐怖で身の危険を感じたからでしょうか。ならば納得です。拙僧なら逃げますな」
「ところで、帰蝶もアレじゃが、涼しい顔して捕球しておる弥助は何なのじゃ!?」
「さすが元メジャーリーガーと言う事なのでしょうか?」
「……そういう問題なのか? 所でなぜこんなバケモノ投手が今まで投げてなかったのじゃ?」
「恐らく捕れる捕手が居なかったのでしょう。助っ人外国人の弥助殿が捕球できたので、はじめて帰蝶殿は投手としてマウンドに立てたのだと推測されます。今までは外野手で確かに強肩でしたから実力は備えていたのではないでしょうか?」
「成程? 打者としては凄いのは知って追ったが……。現在リーグ6冠王(打率、打点、本塁打、最多安打、最高出塁率、盗塁)だったな……? しかもスイッチヒッターとか?」
「そうですね。打者としては最序盤から出場していますので、今シーズン試合数253で打率.780、打点856、本塁打452、安打987、出塁率.982、盗塁365を記録しています」
「……本当にそいつ人間なの? フゴォッ!?」
「おおっと! 帰蝶殿の秀吉殿に対する第3球が大暴投! 逸れに逸れて解説席の将軍様に直撃しました!(283km/h) 将軍様、無念の退場です。一方一塁ランナーの利三殿は苦しそうな足取りで二塁に向かいます。ボールデッドが適用された様です」
「うるさい! 外野は黙ってろ! さて秀吉殿! なぜ裏切ったのか聞こうかし……らッ!!」
「ヒィィィッ! こ、これには海よりも深い理由がありま……オワァッ!?」
「帰蝶殿のセットポジションからの第2球、放送席まで聞こえる風切り音と共にミットに収まりました!」
「ボー!! カウント3-1!」
「外角高めに逸れたストレート(252km/h)に対し、羽柴殿、へっぴり腰です! バッターボックスの最後部で身を守っています! 中国の安打製造機の異名は微塵も感じられませ……危ない!」
「ヒギャァ!」
「スットラアイイイイヤッツゥゥゥ!!」
「バッターボックス最後部で構える秀吉殿の顔面に迫る剛速球に、バッターおもわず倒れこみますが、物凄い変化球でストライクを取りました! カーブでしょうか? 何と弥助殿のミットは秀吉殿とは反対のバッターボックスにあります! とんでもない変化量です! 人をおちょくっています! 球速も203km/hを……あッ!?」
「Hey Boy! f*cking!」
「弥助が座ったまま返球を……いや、物凄い早さで帰蝶殿に襲いかかる! 裏切りか!? 弥助は明智軍の手の者だったのか!? 帰蝶殿、間一髪で避けます! ……いや違う! 利三殿の顔面に迫る狙撃牽制だ!!」
「えっ……」
「ショートの乱丸殿がセカンドベースカバーに入って利光殿にタッチプレー! キャッチャー弥助の牽制球だった様です! 死球のダメージが残る利光殿、1歩も動けませんでした!」
「f*cking! you dam tie take! HAHAHA!」
「ただ今不適切な発言があった事を謝罪いたします。あっ! 利三殿、倒れてしまいました! 気絶討死にです! さてせっかくのランナーが居なくなってしまいました。明智軍エラーと四死球以外で塁にでられるのでしょうか!?」
「で? 秀吉殿。答えは何なの……あれ?」
「おや!? 秀吉殿もバッターボックスで泡を吹いて倒れております! 恐怖による失神でしょうか!?」
「おっと明智兼任監督がで竹束で身を守りながら出てきました。ピッチャーへの抗議でしょうか? いや違います! 主審に代打を告げました!」
「明智軍選手の交代です。羽柴秀吉様討死により、代打羽柴秀長様。旗指物番号12」
「なんじゃ! きちっと抗議せんか! チキン野郎が! スポーツマンシップの欠片もない行為じゃぞ!? 明智軍は腰抜けばかりか!? この××野郎が!」
「将軍様!? スポーツマンシップの欠片もない言葉と共に将軍様が痛々しい姿で帰ってきました! なお、ただ今、不適切な発言があった事を謝罪いたします。それはともかく、3ボール2ストライクという追い込まれた場面での交代に秀長殿も困り果てております! まるで『何で某が!?』とでも言いたげな表情です!」
「ちッ! 秀吉も案外小心者ね! 金〇ついてんの?」
「帰蝶殿、死者に鞭打つ下品な言葉!! 不適切な発言があった事を謝罪いたします。おや? 帰蝶殿、バッターを指さし一塁方向に手を振りました? どうやら申告敬遠の様です! 秀長殿喜び勇んで一塁に走ります。それも仕方ないでしょう。バッターボックスにいては命が幾つあっても足りません!」
「3番レフト、長曾我部元親様。旗指物番号8」
「バッターには明智殿と親交が深いとされる元親殿が入りましたがぁ!? おおおっと! またもや申告敬遠です!! 長曾我部殿も喜び勇んで一塁にいきます!」
「なんじゃそりゃあ! 明智軍舐められておるぞ! しっかりせい!!」
「4番ピッチャー、明智光秀様。旗指物番号10」
「明智軍兼任監督である光秀殿がバッターボックスに向かいますが、緊張の極致なのか手と足が同時に出ています!」
「クソ! あの野郎! この期に及んで後悔してるのか! 相手は小娘……いや違ったアラフィフのオバサンだぞグヘェッ!?」
「あーっと! 帰蝶殿の第一球、またしても大暴投!(309km/h) 放送席の将軍様に直撃しました! 将軍様、無念の再退場です! 早朝に叩き起こされ肩も温まっていないのでしょう。それに帰蝶様は大変にお美しい方ですし! 仕方ありませんね!」
「さて。あんな雑魚どもよりも主犯を問い質すのが普通よね? 私とした事がウッカリしてたわ!」
「光秀殿! バッターボックスの最後方で構えます! 帰蝶様、おおっと!? ランナーがいるのにワインドアップ……右足……!? 右足を振り上げ左オーバーハンドで第1球投げました!」
「スッッッッットルアァァァァァイクッワン!!!」
「何と投球の軌道によってグラウンドに浅い溝が刻まれております! 超快速球が弥助のミットに収まります! 両手で踏ん張る弥助ですが、威力の相殺が困難なのか50cmほど後方に押されました!! 5次元空間解析のファラージャ殿、今の球速は何キロ出ていますか!?」
《512㎞/hですねー》
「512㎞/h!! 日ノ本記録更新です! とは言って今日だけで大幅な記録更新が立て続けに起きておりますので、1~10位までの記録保持者は今日で全員ランク外に落ちるでしょう! 10位の158km/h太原雪斎殿、9位の159km/hの今川義元殿、8位160km/h北条氏康殿、ランク外に落ちました!」
《それよりも顕如様見てください! ネクストバッターサークルが!》
「ネクストバッターサークル? あっ! 5番打者の徳川家康殿担架で運ばれました!」
《どうやら心臓麻痺の様ですね。恐怖が引き起こしたのでしょう。何か心に疚しい事があったのかもしれませんねー》
「今、除細動器で蘇生処置が行われておりますが代打が送られる事は確実でしょう! 徳川家康殿無念の討死退場です!」
「い、家康殿! ズルい!!」
「ズルい……? 何がズルいの光秀ェッ!」
「帰蝶殿の左オーバーハンド第2球! 球審の頭上よりも高く抜けた球が!? あっ! 急角度で落ちました! 195km/hの落差1mのフォークボールが決まりました!」
「スットルゥァァァァィッ!!」
「光秀ぇッ!! 何がズルいのか……言えっつってんだよォッ!!」
「帰蝶様、マウンドで吼えております! 地獄の悪鬼の様な臓物を引き裂かれる咆哮が球場に木霊します! 帰蝶様が握るボールが変形しています! 超握力の成せる業なのか!? 振りかぶって第3球投げ……」
「ボォォォルゥァッ!!!!」
「実況が追いつきません! 早すぎて言い終わる前にミットに収まってます! 光秀殿バッターボックスから飛び退きましたが、飛び退こうと膝を曲げた瞬間にはミットに収まっていました! というか、今、ボールから煙が出ている様に見えましたが!? 解析のファラージャ殿?」
《これはボールのスピードとスピンが速すぎて空気との摩擦で焦げたのです。今のスピードが889km/h。ボールは革で包まれてますから、焦げるには充分でしょう》
「なるほど! スピードも驚異的ですが、それにしても捕球する弥助もジャッジする筒井殿も地味に凄い!」
「濃姫様お許しを!! つい出来心で……!! と言うか某も騙されたのです!!」
「騙された? 誰に!!!!!」
「ヒイイイ!! そ、それは……!」
「誰に!? 誰にだァァァァッ!」
「ぼ、ボール!! カウント2-2」
「帰蝶様の第4球! 雷鳴の様な轟音と共に既にミットに収まっております!! 収まっておりますが、弥助のミットの中でまだ回転しています! もの凄い煙が!! 流石の筒井殿も逃げ出しそうな顔をしておりますが、弥助が何とか押さえ込みました!」
「誰と問うたな? ワシじゃよ!」
《というより今、ソニックブームが発生しましたねー。マッハを超えた様です。マッハとは時速1225km/hになります!》
「マッハ!! 1225km/h!? 人間とはどこまで可能性が広がる生物なのでしょう!」
「おい! 無視をするな!!」
「おや、グラウンドに将軍様がいらっしゃいますね? 『ワシじゃよ』とか言いましたか? 人類の偉業の瞬間なのに何とも間の悪い登場です」
「ワシ!? 貴様か! 貴様の企てかァァァッ! 光秀! お前には後で聞く事が山程あるが取り合えず敬遠してやる!」
「光秀殿、幽鬼の如く表情で一塁に向かいます。あっ! パタリと倒れてしまいました。失神でしょうか? 討死です!」
「明智軍選手の交代をお知らせします。一塁ランナー光秀様に変わり明智光慶様 旗指物番号20」
「1回の表から秀吉殿、光秀殿とコレで2人の選手が入れ替わりました。利三殿も次の守備では交代でしょう。それに……」
「明智軍、バッター徳川家康様に代わり、足利義昭様。旗指物番号99」
「家康殿にも代打です。明智軍、アッと言う間にガタガタになってます! 満塁なのに絶望感が半端ありません! ただ、一つ取ったアウトは弥助の牽制球のみですのでチャンスはありましょう! いや、将軍様では無理ですかね」
《無理でしょうねー》
「実況! 公平にせんか!」
「散々解説で罵声を浴びせていた将軍様が公平な実況を求めます! あっと! 帰蝶様、振りかぶって第1球な……げ終っております!」
「スットゴヘェッ!」
「f*cking!」
「弥助が吹き飛び球審と激突しました! やはり実況は不可能です! あと、またしても不適切な言葉がありました事を謝罪いたします、と言うか今、煙とソニックブームに加えボールが燃えてませんでしたか!? それにボールが分身した様にも見えますが!?」
《今のは時速3675km/hのマッハ3です。空気の壁に激しく衝突しソニックブームを発生させつつ、その衝撃で予測不可能の変化を見せたのです。さらに熱の壁に衝突し炎上。投げたのはストレートですが、起こった現象は燃えるナックルボールだった訳です》
「なるほど、マッハで燃える分身魔球という訳ですか! 仮にそんな球を打ったらどうなりますかね?」
《人に当たったら死にますし、金属の業物バットといえど千切れ飛ぶでしょうねー》
「あぁ、これは明智軍詰みましたかね。そんな場面に将軍様、ノコノコと現れて自殺でもしたいのでしょうか?」
「や、やかましい! 潰された足利将軍野球団の無念を晴らすは今!」
「おっと将軍様! バントの構えです!」
《成るほど考えましたね。マッハ3なら前方に飛ばせば最低でもフェンス破壊。少しでも上に跳べば場外ホームラン確実です。前に飛べばですが……》
「意外な知性を見せる将軍様! 代打満塁ホームランとなるか!?」
「舐めるなよ! そんなバット圧し折ってくれるわ!」
「帰蝶様第2……おわッ! マッハの轟音とは別のイヤな音が響く! 業物金属バットに当たったのでしょうか!? 将軍様は後方のフェンスまで吹っ飛ばされました! 腕が有らぬ方向に曲がり、関節が増えたかの様な有様です! 複雑骨折は免れぬでしょうが、見事なガッツです!」
《地面もフェンスも破壊されていないので取り合えず打ち上げた様ですが……ボールが落ちてきませんねー。レフトの信長さん。どうですか?》
《見えん》
「ランナーは一応タッチアップの構えを見せていますが、ボールがどこに飛んだのか解らないので、守備陣も含めて右往左往しています。解析のファラージャさん、どうなったと予測されますか?」
《先程の帰蝶さんの投球はマッハ10を記録してました。高く上がったボールは宇宙まで飛んで行ったか、その途中で燃え尽きたと推測されます》
「なるほど、まさしく本当の意味でボールデッドとなりました。審判団も集まって協議しています。あっと球審の筒井殿が腕を回しました! ホームランです! 将軍義昭様の代打先制満塁ホームランと認定されました!」
《流石、将軍様ですねー》
「み、見たか……これぞ足利の……血……」
「しかし、将軍様、複雑骨折で一塁ではなく担架でベンチに退場です」
「明智軍選手の交代をお知らせします。ランナー足利義昭様に代わり、ルイス・フロイス様。旗指物番号666」
「1回の表で早くも3人目の選手交代です! 4点先制の代償は途轍もなく重そうです! フロイス殿、ホームベース手前で十字を切って今ホームイン! 点を取った喜びなのか、グラウンドから避難できる喜びなのか解りませんが、満面の笑みであります!」
「そ、そんな! 能力解放した私の投球が!! あのフニャ〇〇将軍に……!?」
「Son of a b*tch!! gas in show tang!! you oh my Shin!! Princess KICHO!!」
「不適切な言葉があった事を謝罪いたします。帰蝶殿がマウンドでガックリ項垂れます。弥助が駆け寄って励ましの声をかけています。内野陣も集まりました! おっと織田信長兼任監督も外野から駆け付けました!」
「な? 無駄な抵抗じゃろう? 今日この日、謀反が起きたならば、ワシらは必ず負けるんじゃよ。お主が全力全開でも関係ないわ。歴史の修正力じゃ。今日以外なら完全試合も楽勝じゃろうが、今日だけはどんな手段をとっても負ける」
「上様……」
(Hey RANMARU! I my mow court???)
(さ、さぁ……? 歴史の修正力? 今日は負ける……???)
「く、見、見たか! このワシのホームランを!」
「将軍様! ボロ雑巾の様な格好で将軍様が解説席に戻ってきました! 打った球は何でしたか?」
「ど真ん中ストレートじゃ! これぞ足利の血よ……!」
「あっ! 将軍様! 汚れるので倒れるなら廊下でお願いします!」
「織田軍守備の変更をお知らせします。ピッチャー斎藤帰蝶様がレフトに、レフトの織田信長様がピッチャーに入ります」
「弥助! 能力開放は無しじゃ! 今日は野球を楽しんで死ぬ!」
「OK BOSS!!」
【五次元空間/時間樹】
《それで野球は楽しめましたか?》
《まあな。4-3で逃げ切られたわ》
《……なんで私たち野球してたんでしたっけ?》
《さあ? 理由なんかもうどうでも良いじゃろ。さて次はどんなスポーツを戦国に持ち込むかのう?》
4/1と言う事で例のヤツです。
もう4回目かー。
月日が経つのは早いなー。
今回はTake5000……ぐらいのバッドエンドとしておきます。
本当はもう一話作る予定でしたが、本編を書きたかったので泣く泣く見送りました。
2話目を期待していた方には申し訳ありません。
その代わりといっては何ですが4/1史上最大文字数です。
多けりゃ良いってワケではないですが……
今回実験した事
①地の文削除
場所と打順以外は全部セリフです。
これでどこまで表現できるのか?
解った事は解説実況は凄い便利と言う事でした!
②弥助の英語
弥助の英語は一見英文に見えて、全く英文の体を成しておりません。
そのままではワケが解りませんが発音にヒントがあります。
you dam tie take(油断大敵)
gas in show tang(臥薪嘗胆)
you oh my Shin(勇往邁進)
I my mow court(曖昧模糊)
いわゆる『ソドム語』と言われる特殊言語(?)です。
苦手な英語もコレなら楽勝だ!(?)
戦国野球球速ランキング
1.168km/h 朝倉宗滴
2.167km/h 上杉謙信
3.166km/h 本多忠勝
4.165km/h 武田信玄
5.163km/h 柴田勝家
5.163km/h 斎藤義龍
7.162km/h 山県昌景
8.160km/h 北条氏康
9.159km/h 今川義元
10.158km/h 太原雪斎
帰蝶登板後
1.12250km/h 斎藤帰蝶(炎上分身魔球 将軍の地球外ホームラン)
2.3675km/h 斎藤帰蝶|(炎上分身魔球)
3.1225km/h 斎藤帰蝶(ストレート)
4.889km/h 斎藤帰蝶(ストレート)
5.512km/h 斎藤帰蝶(ストレート)
6.309km/h 斎藤帰蝶(ストレート 暴投 将軍直撃)
7.283km/h 斎藤帰蝶(ストレート 暴投 将軍直撃)
8.268km/h 斎藤帰蝶(ストレート)
9.253km/h 斎藤帰蝶(ストレート)
10.252km/h 斎藤帰蝶(ストレート)
11位以下
203km/h 斎藤帰蝶(カーブ)
195km/h 斎藤帰蝶(フォーク)
168km/h 朝倉宗滴
167km/h 上杉謙信
参考:弥助牽制球260km/h|(座り投げ)




