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圧倒的ガチャ運で異世界を成り上がる!  作者: ケンノジ


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74/114

74話



 おれが町で水と食料を約五日分買い集めていると、


「ジンタ様。わたくしたち欲しい物がありますので、少々別行動を取らせていただきます」

「え? ああ、うん。いいけど」


 妙に真剣な顔をクイナはする。

 大事な用か何かがあるんだろう。


「行きましょう、リーファさん、ひーちゃんさん」

「えぇ……わたし別にそういうのは要らないんだけど……遊びに行くわけじゃないし」


「これだからリーファさんはお子ちゃまなのです。真面目過ぎるオンナほど、ツマラナイものはないですよ?」

「うぐ……、そ、そこまで言うのなら、い、行くわよ」


 ひーちゃんは全然わけがわかってなさそうだったけど、クイナが手を引いて、三人はどこかへ行ってしまった。


 おれが準備を整えた頃、三人はそれぞれ紙袋を胸に抱いて戻ってきた。

 どうやら買い物に行っていたらしい。


「何買ったんだ?」

「ジ――ジンタのえっち!」


 赤い顔をするリーファに「はい?」とおれは首をかしげた。

 訊いただけで、どうしてえっちに……。

 さっぱりわからん。


 そんなおれを見て、クイナは楽しそうにくすくす笑う。


「何を買ったのかは、内緒です。そのときまでのお楽しみということで」

「はあ……お楽しみ、ね……」


 一番口を滑らせそうな――滑らせてくれそうなひーちゃんを見ると、ぶるぶると首を振った。


「これはナイショなの」


 クイナあたりがかん口令を敷いたな、この様子は。


「ジンタ様も喜んでいただけるかと思います。ね、リーファさん」

「わ、わたしは別に……そういうんじゃ、なくって……」


 リーファは紙袋を抱いてもじもじしている。


 まあ、いいか。


 女子の何か重要なアイテムなのかもしれない。

 これ以上訊くのも野暮ってもんだろう。


 おれは早速、リーファとクイナ、その他の荷物をアイボへ詰めた。


 ドラゴン化したひーちゃんに乗って目当てのミズラフ島へむかう。


 徐々に潮の香りが強くなっていき、下を見れば真っ青な海があった。

 海を見るなんて久しぶりだ。


 軍の船が沈められたって話だけど、たぶんそれは、あいつの仕業かもしれない。


 海上に突き出た山のような、大型の魔物がいる。

 船なんて、鼻息で吹っ飛びそうなサイズだ。


 けど、顔らしき場所にあるのは二つの目だけで、鼻も口もなさそうだった。


 手足は見えず、体中を海水か何かが常に循環している。

 そいつが、ぬるぬると海上を動いていた。


―――――――――――

種族:魔海生物 ラハブ

名前:?

Lv:115

HP:300000/300000

MP:20000/20000

力 :3000

知力:3500

耐久:2400

素早さ:250

運 :50


スキル

氷水魔法(水、氷雪属性の攻撃魔法)

海陣(炎属性攻撃無効)

無尽触手(水属性物理攻撃+ドレイン効果)

雨季万来(雨雲を呼び寄せ雨を降らせるスキル HP・力・知力上昇)

アシッドレイン(対象のステータスに毒を付与するスキル 力・知力減少)

―――――――――――


 ひーちゃんママ以来の一〇〇レベル越え……!

 こいつは結構な魔物だ。


 おれがのんびり眺めていると、こっちに気づいた。

 体から水流の腕が生え、おれたちのほうへ手を伸ばしてくる。


 あれが触手ってやつかな。


「ひーちゃん、もっと高く。敵の手が届きそうだ」

「がるがるー」


 あいつを倒すっていうクエストじゃないし、いちいち戦う必要もないだろう。

 さらに上空を飛んでいると、島が見えた。


 あれが魔女のいる島か。


 白い浜辺を見つけ着地する。

 かなり南に来たせいか、太陽がギラギラしていてかなり気温も高い。


 ひーちゃんは涼しい顔しているけど、おれにとってはかなり暑い。 


 リーファとクイナをアイボから出した。


「わぁ……! きれいなビーチ!」

「何だかんだでテンションが上がるリーファさんなのでした」

「いっ、いいじゃない、ちょっとくらい」


 二人の仲が良いやりとりをBGMに、おれは簡易テントをちゃっちゃっと設営する。

 以前の森のときみたいに、一つじゃなく今回はちゃんと二つ用意しておいた。


「わたくしとジンタ様はこちら――夫婦用テント。リーファさんとひーちゃんさんのお子ちゃま専用テントはあちらです」


「勝手に決めないでほしいの……! ご主人様は、ボクといっしょがいいってさっき言っていたの」

「言ってねえよ、ねつ造すんな」

「そ、そうよ! 勝手に決めるのやめなさいよっ」


 ぶーぶーと不満たらたらのリーファとひーちゃんだった。


「となれば、ジャンケンで決めましょう! ジンタ様と誰が相部屋ならぬ相テントになるか」


「あのなあ、こんなもん、男女に分かれるに決まってんだろ」


「えぇ~それはどうかと思います」

「クイナに同意なの」

「ジ、ジンタが寂しくて泣いちゃうかもしれないじゃない」


「泣かねえよ、おれは子供か」


 テント割は後で決めることにして、お仕事を開始する。

 ひーちゃんに上空から島を見てもらったところ、島の半分ほどは森であとは岩山で構成されているそうだ。


「魔女がいるって話だけど、何も感じないな。普通の島みたいだ」

「うーん、いると思うんだけど……。でも、長命ってだけで、不死というわけじゃないから……」


 話を訊きに来たのに見つけたのは死体でしたってオチになったりしないだろうな……。


 情報書記係のクイナがさらさらとペンでメモしていく。


「…………明日、ジンタ様、と、海デート……沈む、夕日を見ながら……」


 おいこら、何メモってんだ。


「ひーちゃん、手強そうな魔物とかは空から見なかった?」


「魔物はそれなりにいるの。でも、さっきの海にいた魔物よりはみんな弱そうなの」

「そっか、ありがとう」


 ともかく、島の情報収集が仕事なんだから、まずは地図でも作ろうか。

 外観は空から見ればいいし、島のどこに何があるのかくらいはメモしていこう。


 雑木林に入り、道なき道を歩く。

 ついでに生活用の水も必要だから、小川か湧き水や泉がないかを探していく。


 魔女の居場所がわかりそうな手掛かりも同時に探していくけど、こっちはさっぱりだ。


「クイナ、ちゃんと書いてる?」


 リーファが訊いてもクイナは頬をゆるめっ放しだった。


「わたくし……明日が楽しみで、今夜眠れないかもしれません……っ」


 極寒の眼差しでリーファがクイナを見つめ、ばっと手元のメモを奪った。


「あ! 何をするのです! わたくしとジンタ様の明日がそこに記されているのに!」

「あんたの頭の中の予定でしょ! 真面目にやんなさいっ。これ、お仕事なんだからね!」


 リーファがメモを破ってくしゃくしゃに丸め、

「えいっ!」

 ぽーい、と遠投する。


「あぁ……わたくしたちの明日が……」

「わたしが代わりにメモするわ」


 というわけで、書記係はリーファに代わった。


 にしても、歩いても歩いても景色が全然変わらない。

 ときどき、ひーちゃんに飛んでもらい方角を指示してもらっているから間違いじゃないんだろうけど、今どこを歩いているのかさっぱりだ。


 波の音が聞こえてきて、おれたちはようやく雑木林を抜けた。


「島の反対側か、ここ?」

「いえ、そうではないようです。見てください、ジンタ様」


 クイナが指差した先に、さっきおれが立てたテントがあった。


「がう。帰ってきちゃったの……」

「おかしいな、ひーちゃんにときどき空から見てもらっていたのに」


 真っ直ぐ歩いているようで、人間は真っ直ぐ歩けていないっていうのは聞いたことがある。

 そうだとしても、方角をちゃんと見てもらっていたのに、おかしいな。


「言っても仕方ないわよ。もう一度入りましょ?」


 おれたちはまた雑木林から森に入り、そしてまた同じ砂浜に出てきた。


 あれ。また? 何でだ?


「ジンタ、たぶん魔女、いるわよ。きっと生存もしている」

「? 何でそんなことがわかるんだ?」


「何度行っても元の場所に帰ってきてしまうのは、そういう特殊な結界が張られているということでしょうか?」

「うん。きっとそう。外敵を遠ざけるように出来ているんだと思うの」


「じゃ、その結界をどうにかすりゃいいってことか」

「それがわかればいいんだけどね……」


 相手は人間とは次元の違う魔法使い。

 並大抵の結界じゃないってワケか。


 今度はおかしな物がないか注意深くじっくり森を歩く。


「軍は、島や魔女を調査してどうするつもりなんだろう」

「この島を拠点とするため、とご説明いただきましたよ、ジンタ様?」


「うーん、なんか引っかかるんだよな。拠点にしておいたほうが良いなんて、ずっと前からわかっていたことだろう? 町の人たちから聞く世間話に、どこかの国と仲が悪くなったって話は聞かないし。今さらなんだよなあ、このクエスト」


「わたしもそれはちょっと思った。実は、軍事目的に魔女を捕獲するのが本当の目的だったりして。魔女って魔力器官そのものみたいなものって言ったじゃない? 軍事利用目的にそう考えていても不思議はないと思うの」


「捕らえられるかは別として、魔女の能力じゃ、普通は太刀打ち出来ないから情報だけでも集めて欲しいってことか……?」


 目的が島の拠点化でも、魔女の軍事利用でもどっちにしてもきな臭いな。


「本音と建前というやつでしょうか。もしそうなら、包み隠さず教えて下さればいいのに……」


「一般人に、知られちゃマズいことがある、とか?」


 思ったことが口を衝いて出た。


 少しだけ嫌な沈黙が続き、リーファが首を振った。


「やめましょう、この話。もし本音と建前があったとしても、わたしたちがするのは、クエストなんだから」

「そうですね」


 会話に気を取られていたせいか、木の根につまずいた。

 危ね、あやうく転ぶところだった。


 下を見ると、地面に何かが埋まっているのが見えた。


 手で砂を払いのけてみると、文字が書いてある。


『迷宮 の門 常世入口』


 古代妖精文字ってやつだ。

 埋まっている物を確認しようと指を掛けて引き抜く。


 それは、ゴーレムの体内にあった石板と一緒だった。


「これ、見てみろよ」


 みんながおれの手元をのぞくけど「?」を頭に浮かべてキョトンとしている。


「これが、何? 模様の書いてある石じゃない」

「ああ、そうだ、みんなは読めないんだっけ」


 それを聞いたクイナがじいっと石板を見つめる。


「あ。古代妖精文字……でしょうか?」

「うん、迷宮の門で、この世の入口って書いてある。たぶん、石板が埋まっているよりも先に進むと、森をさまよって元の場所に戻ってくるように森が仕組んであるんだろう」


 ゴーレムの石板を書き換えて成功したことから、この石板に古代妖精文字で何かしらの指示を出せばその通りになるようだ。


 付近を探していくと、この石板と同じものがいくつも地面に埋まっているのがわかった。

 見つけられた石板は全部で一〇。


 きっと森だけじゃなくて、色んな場所にこのトラップがあると思っていいだろう。


 おれは以前のように日本語を石板の裏側に書いた。

 裏側を上にむけて元に戻す。


『魔女へ続く道を示せ』


 すると。


 青白い魔力の光が地面を走った。

 フッ、と幻が解けるみたいに風景がすり替わった。


 入り組んだ木々ばかりの道とも言えない道だったのが、木々が整然と並び、一本の道が出来た。


「わ。すごい……道が」

「ジンタ様、一体何をされたのですか?」


「ああ。魔女がいる場所まで道を示せって命令を出したんだ」

「命令すれば、森が変わってしまうの……すごいの、ご主人様」


「微妙に違うような気もするけど、だいたいそんなもんだ」


 おれたちは歩きやすくなった道を進み、魔女の居場所へとむかう。



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