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圧倒的ガチャ運で異世界を成り上がる!  作者: ケンノジ


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71話

今回の中編「ザガ防衛編」のエピローグとなりますー



 盗賊の頭領マクセルを撃破したその日は、例のごとく昼間っから大宴会が催され、翌日はのんびり過ごさせてもらった。


 そして今日、おれたちはライラさんの依頼を達成したので町を後にした。


 町のみんなはおれを英雄扱いするし、もっとここにいろとどれだけ言われたか。

 町娘たちにちやほやされるのは、少しくらい気分が良かったんだけど、やっぱり慣れなくてお尻のあたりがむずむずした。

 

 ひーちゃんに乗っておれたちは湖畔の家に帰ってきた。


 玄関の扉を開けると、正座しているライラさんがいた。


 よし、ちゃんと服は着てる。

 って、そこじゃねえ――。


「ちょっと何してんですか、ここ、人んちですよ? 勝手に上がるのやめてくださいよ」

「今回は、お礼を申し上げるため、貴方をお待ちしておりました」


 だからって、勝手に家に上がるのは違うと思うんだよなあ……。


 明日、町で鍵買ってこよう。


 ライラさんは、前回とは違う制服にも似たちょっとフォーマルな服を着ている。


「カザミ様、今回の件は、本当にありがとうございました」


 そう言って静かに頭を下げた。


「いえいえ。頭を上げてください。おれたちは別に大したことしてないですし」


 マクセルを騎士団に引き渡したので懸賞金二〇〇万リンの収入もあった。

 だから、まったくの損だったってわけでもないんだ。


 リーファがおれの背をつんつんと突く。


「誰? ガチャ屋の人、よね……?」

「うん。今回の件を直接おれに依頼してきた人。ライラさん」


 おれといつの間にか手を繋いでいるひーちゃんが首をかしげる。


「えっちな妖精さん……? がう。似ているけど服着ているから、ちがうの」


 クイナが小さく息をついた。


「なるほど、そういうことでしたか。女性のご依頼だったのですね。道理で」

「何が道理なんだ?」

「ジンタ様は、女性が困っているとすぐに手を貸してしまいますから」


「そんなことないと思うぞ?」

「いいえ。あります」


 呆れたように首を振ったあと、クイナは嬉しそうに笑う。


「わたくしも、リーファさんもひーちゃんさんも、ライラさん――ここにいる皆さんが、ジンタ様に助けていただいています」


 みんながコクコクとうなずいている。

 助けたなんて、思ってないけど、みんなはそう思っていないらしい。


 玄関先で話を続けるのもなんなので、リビングへ場所を移す。

 おれはかいつまんで今回の顛末を教えた。


「父から、手紙で聞いておりました。領主と盗賊の話や、カザミ様が町のために尽力してくださったことを」

「そうでしたか。おれたちが到着した当初は町のみんな、元気がなかったんですけど、今はもう元通りになっていますよ」


「何から何まで、本当にありがとうございます。もう一つだけお願いがあるのですけれど、よろしいですか?」

「はい、何です?」


「父が、町をカザミ様が守っている、ということにして欲しいのだそうです。もちろん、常駐していただくというわけではなく、そういう何か証明のようなものが欲しいそうで」


 おれが守っているってことにすれば、抑止力になって盗賊も近づかなくなるってことか。

 ん? けど、『【ガチャ荒らし】が守っている』って、効果あるのか?


「確かに、ジンタ様――【ガチャ荒らし】は巷では超有名人ですし、効果は大きそうです。先日の大規模作戦、ユニオン単位で指名される中ジンタ様だけが個人で指名されたというのは、冒険者ならほとんどの人が知っています」


「そうね。【朱甲】を倒したって話も、いまだにみんなしているし」


 おれ自身はいまいち実感ないけど、一応効果はあるらしい。


 ザガの町はザガの森にも近く、盗賊だけじゃなく魔物が現れることもあるという。

 大した税収も見込めない上に、自領にしたからには警備兵を割く必要が出てくるので、付近の領主たちは自領にするつもりがないそうだ。


 だから、誰かに守ってもらう必要があるのだとか。


「証って言われてもな……証書とかじゃ効果は薄いだろうし……おれが守っている町ってわかりやすくするためには、どうしたらいいんだろう」


「貴族たちはそれぞれ紋章があるから、ジンタも作って物見台の上に張るなり飾るなりすればいいんじゃないかしら?」


「良い案だけど、おれの紋章ってみんながわからないと、あんま意味ないよな」


 それなら、とクイナ。


「ユニオンもそれぞれ団章があります。だから、作ってしまえばいいんじゃないでしょうか。ユニオン単位でクエストをこなしていけば、少なくとも関わった人には知れ渡りますし、ジンタ様が活躍すればするほどユニオンもその団章も有名になっていきます」


 その団章を紋章として使えば冒険者としての活動が宣伝にもなるわけか。


「じゃあそうしよう。ちなみに、ユニオンってすぐに作れるもんなの?」

「ええっとね、マスターが冒険者ランクF以上であることと、二人以上のユニオン未所属の冒険者が必要だから……」


 おれたちは顔を見合わせる。

 ギリギリだけど設立出来るのは出来るんだ。


「ライラさん、団章が出来たら、町長の家にお届けするってことでいいですか?」

「それでしたら、私にお渡しください。そのときに、改めて私とカザミ様の今後についてお話していきましょう」


 クールな微笑をおれにむけるライラさん。

 なに、私との今後って?


「父からゴーサインが出ております」

「ゴーサイン?」


「『カザミ君ならお父さん大歓迎。お父さん、孫の顔とか早く見たいなあ……』というわけです」

「――どういうわけだってばよ」


「わかっているくせに。ふふ、ではベッドの中で愛を語らいながらご説明いたしましょう」


 ばっとリーファが立ち上がっておれとライラさんの間に入った。


「だ、だめぇ――っ!」

「そうです、リーファさんの言う通りです」


 クイナが腕を絡めてくる。


「ジンタ様に手を出そうなど、100年早いです」

「そ、そうよ――。そ、そ、それにっ、わたし――、わたしとジンタ、き、キスしちゃってるんだからっっ!」


 顔真っ赤にするくらいならわざわざ言うなよ!

 こ、こっちまで恥ずかしくなってくる……。

 しかも事故だったし、あれ。


 そのカミングアウトに、ライラさんもクイナもきょとんとしている。


「うふふ、わたくしもしていますが。リーファさん、それがどうかしましたか?」


 クイナがどや顔で切り返す。

 背伸びする子供を見るように、ライラさんがくすっと笑う。


「キスしたからと言って、それだけで貴女のモノになるわけではないでしょう?」


 リーファは赤い顔のまま、点になった目でまばたきをぱちくり繰り返す。


「ぇ……っ。………………、――し、知ってたわよ? そ、それくらい? あ、当り前じゃない?」


 知らなかったのか。

 ていうか、そんな勘違いしてたのか、この女神様。


「けど、大事な人としかしちゃいけないのよ?」


 どやっっ、と音が出そうなほどの顔で、ぺたんこの胸を張るリーファ。


「「当たり前でしょう、何を今さら」」

「…………」


 静かにこっちをむくリーファ。

 劣勢だからっておれに助けを求めるのをやめろ。


「と――とにかく! 用が済んだんならガチャ屋の人は出てって! ここはわたしたちの家なんだから!」


 強引な話題のすり替えだけど、それには賛成だ。

 あーだこーだ言うライラさんを摘まみ出した。




 次の日、ログロの冒険者ギルド受付嬢のアナヤさんがおれを見るなり言った。


「カザミ様は本当に話題を欠かない方ですね。元魔法騎兵長マクセルと領主アルバの逮捕……結構な話題になっています」

「そんなに話題に……。あ、それはそうと、今日はユニオンの申請をしようと思ってきました」


「ついにカザミ様が旗揚げされるのですね……! 承りましょう。ずいぶんとご立派になられて……新人の頃からお世話をさせていただいたアナヤは嬉しく思います。私が育てたと言っても過言ではありません」


 明らかな過剰表現をスルーして、アナヤさんの言われた通り申請書を書いていく。

 あ。大事なこと忘れてる。ユニオンの名前。


「なあ、名前何がいいと思う?」

「決めてなかったの?」

「わたくし、これがいいです。『ジンタ♡クイナ』これで決まりです」

「「却下」」


「ボケるのは無しだ。大喜利やってる暇はない」

「ボケ…………っ、わたくし、本気で言いましたのに…………」


 がっくり、とクイナはうなだれる。


「『暁』なんてどうかしら。これからはじまるっていう意味を込めて」

「ご主人様、炎使うから、炎もひつようなの」

「ジンタ様の炎なのですからハイランクの炎です」


「『暁の紅蓮』……あ、意外といいんじゃないか?」


 ぽんと口を突いて出た名前だけど、しっくりきたような気がする。


「うん。わたしは異論なしよ」

「わたくしも良いと思います」

「決まりなの」


 じゃああとは、肝心の団章だな。

 ん? ひーちゃんが羽根ペンで何か書いている。


「となれば……こうなの!」


 見せてくれたのは絵だった。

 魔焔剣風の剣があって、後ろには竜を模した炎がある。

 かなりカッコイイ……。


「「「ドラゴンの感性ってすごい……」」」

「がう♪」


 残っていたユニオン名と団章を書きこんでアナヤさんに提出した。


 こうして、おれはユニオンリーダーになった。


「副リーダーはわたくしですね、そうなると」

「何言ってるのよ、順番的にわたしでしょ?」


「何でケンカしてんだよ」

「がう、ボクはペットだから何でもいいの」


「……あ。では、副リーダーの座はリーファさんに差し上げます。わたくし、その代わりにお嫁さんの座に正式につきますので」

「何でそうなるのよ。それとこれは別でしょ?」


 やいのやいの、と言い合う二人から逃げようとすると、ぐいっと腕を掴まれた。


「どっちが上なのか、白黒つける必要があるわ、ジンタ」

「ジンタ様。この際です、リーファさんにははっきり言ってしまってください。お前は便利な家政婦だ、と」

「え…………そんなこと、思ってたんだ……っ」

「なこと思ってねえよ。涙目になるなよ、リーファ。……みんな、仲良くしよう、な?」


 まずは、【ガチャ荒らし】が美人を泣かせている、という視線がむけられるこのギルドを後にする必要がありそうだ。



 この数日後、ザガの町の壁に『暁の紅蓮』の団章――魔剣と焔――が大きく描かれた。




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