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圧倒的ガチャ運で異世界を成り上がる!  作者: ケンノジ


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70話


◆Side Another◆



「――あァ? あの豚領主が捕まった?」


 ザガの町郊外にある廃屋で、盗賊の頭領マクセル・ファンダーレは執事からの報告を聞いた。


「はい――。あの【ガチャ荒らし】によって身柄を拘束されてしまいました。マクセル殿、我が主をどうかお助けください!」

「【ガチャ荒らし】……最近町に来たっていうあいつか……」


 部下の一人がうなずいた。


「隊長、間違いないです。様子を見に行った野郎の話じゃ、豚の飼っていた女も解放したらしいです」

「今は『隊長』じゃねえ。……いつか足がつくと思っちゃいたが、結構早かったな」

「どうします?」

「そうだなあ……。もう俺達は見限って別の金づる探せばいいだけだしなあ」


「そ、そんなあ! 我らに何かあったときの保険として、毎週多額の金を支払っているではないですか!」


 執事が困惑気味に声をあげると、ククク、とマクセルは笑う。


 盗賊に女を拉致させれば、少なくとも直接の原因は盗賊のせい――となるため責任をなすりつけられる。

 欲望を満たすだけのために、なんとも汚い手を思いついたものだ。


 しかし、拘束されているあたり、裏で繋がっていのがバレたのだろう。


「執事さん、アンタもあの豚の陰に隠れて甘い汁を吸っていたクチか? クク、まぁいい。あの豚の金でのびのびと暮らせてんのは確かだ。軍を脱走して流れ歩いていた俺達に、このビジネスを持ちかけたのもあいつだ」


 元は王国軍の精鋭部隊にいたマクセル。

 職権濫用が過ぎ、軍法会議にかけられそうになるところを自分の部下と共に脱走したのだ。


 強姦、強盗、殺人――様々な罪により、その首に懸けられた懸賞金は200万の悪党だった。


「そうです。マクセル隊長、貴方には我が主に恩があります」

「黙れ。隊長じゃねえって何度言わせる。町にゃ俺らの仲間も捕まっている……助けた時には、報酬、期待していいんだよな?」


「当然。主には私からも口添えさせていただきます。マクセル殿、貴方の腕なら【ガチャ荒らし】にも敵うでしょう」


「よしッ、なら決まりだ! 【ガチャ荒らし】を倒した後は、町のモンを好きにしていいぞ、お前ら! さらう女を指定する領主様は捕まっているらしいからな。好きに犯して奪って踏み躙ってやろう。行くぞッ!」


「「「「うぉおおおおお!!」」」」


 野太い男たちの声が廃屋に響く。


 獣人の男の子を獣化させると巨大な犬になった。

 マクセルはその背に飛び乗る。

 外で部下たちも次々に騎乗していくと、すぐさま四十騎の部隊ができた。


 元王国軍 第一七七魔法騎兵隊 第二騎兵長――マクセル・ファンダーレは部下と共にアジトを後にする。



◆Side ジンタ◆



 町長宅でぼんやり過ごしていると、激しく鳴らされる鐘の音が聞こえた。


 リーファが外の様子を見て戻ってきた。


「ジンタ、大変! 盗賊がたくさん町にむかって来ているみたい!」

「――よーし。ちゃっちゃと盗賊退治するか」


 うん、とひと伸びしてあくびをかみ殺す。


「ご主人様、緊張感がないの」

「それがジンタ様の持ち味というものなのですよ、ひーちゃんさん」


 町の入口では、自警団のみんなが臨戦態勢に入っていた。

 みんなには町の守備をお願いすることにして、おれたちは外で迎え撃つことに。


 回収してきたゴーレムもここで一緒に戦うことにした。


「むふーっ! ゴーレムがいるならだいじょうぶなの!」

「――――」


 ちょっと困ったようにゴーレムはおれを見る。

 ゴーレムはこの前、アステにこれでもかっていうくらいぶっ壊されている。

 ひーちゃんはその現場を見てないからな……。


『万能ゴーレム』……ひーちゃんの――子供の夢を壊さないように、どうか頑張ってほしい。


 むかってきている敵は全部で四〇ほど。

 先頭を走っているのは、黒い巨犬に乗っている男だった。


 そいつだけ、後ろの盗賊たちと雰囲気が明らかに違う。

 あいつが頭領っぽいな。


 軍旗のようなものもある。それには、赤で大きくバツ印がしてあった。


「あの旗、魔法騎兵隊の……。どうりでただの盗賊なのに強いわけね……」


 リーファが苦い顔をする。


「魔法騎兵?」

「うん。魔法が使える者だけで構成してある、王国軍の機動強襲部隊って言えばいいかしら。戦争のときは、真っ先に先陣を切るような部隊よ。腕利き冒険者出身が多くて……気性の荒い連中が多くて有名なの。……もちろん、その盗賊たちが全員そうなのかどうかはわからないけど」


 どんどん近づいてくる盗賊たち。

 ようやく先頭の頭領らしき男のステータスが見えた。


――――――――――

種族:人間

名前:マクセル・ファンダーレ

Lv:69

HP:34000/34000

MP:1700/1700

力 :1200

知力:1200

耐久:700

素早さ:400

運 :22


スキル

炎魔法 魔法障壁 一閃 恫喝

騎兵(騎乗中、力・知力・素早さ上昇)

号令(指揮下にある者の力・耐久・素早さ上昇)

――――――――――


 ……強い。

 あのラウルっていう手甲野郎と一緒か……いや、魔法を使える分、こいつのほうが強い。

 武器は、持っている槍と魔法か……。


「それであいつら魔法が使えるのか。先頭の男、マクセルってやつも元は冒険者で、元軍人なのか」

「ジンタ様、今マクセルとおっしゃいましたか?」


「え? うん。あの先頭のやつがそうらしい」

「マクセル……強姦や強盗、殺人を繰り返して軍を脱走した男です。確か懸賞金もかかっていたはずです」


 言っている間にどんどん敵は迫ってくる。

 正面以外に回られるとこっちも対応しにくくなる。


 あと、馬群の圧力は相当なもんだ。

 勢いを殺さないと。


「ジンタ、わたしの魔法、前は防がれちゃったけど今回は大丈夫! 複数の魔法障壁でも破ることが出来るはず!」


 秘策ありって感じのリーファ。

 おれはうなずいて、ドラゴン化したひーちゃんに乗り空を飛ぶ。


 勢いを殺すため進行方向前方に【黒焔】を撃つ。

 でかい音と共に地面に巨大なクレーターが出来た。


 敵は、棹立ちになった馬から投げ出されたり、クレーターに落ちたりしている。


 手綱を引いて脚を止めても、玉突き事故状態で前後がぶつかり合っている。

 きれいだった隊列は、いつのまにかぐちゃぐちゃになった。


 一気に速力は無くなり、騎乗の敵は半数近くになった。


「スカイランス――ッ」


 馬を失くして混乱している敵をクイナの遠距離魔法が襲う。


 一本、二本、三本――次々に敵を射抜いていく。

 展開された魔法障壁も、準備不足もあってか一人分だと簡単に突き破った。


 混乱しているせいもあるんだろう。

 魔法障壁と言えど、きちんと構えてないとレベルの差がもろに出るみたいだ。


 よし、バラけた奴はクイナに任せよう。

 まだ固まっている敵にむかって、リーファがスキルを発動させる。


 魔法陣が足元に広がる。いつもよりもタメが長い。

 その隙に、六人の敵が魔法障壁を展開した。


「ヒィィイイイヤッハァアアアアア――! 貧乳神官だぜぇえ! 捕まえてぺろぺろしてやるぅぅぅうう」

「ちっぱいちっぱいっ! ヒャッハァアアアア!」


「誰が貧乳よ! 誰がちっぱいよっ! 絶対に、許さないッ――! 巨乳って言わせてみせる!」


 言わせられたら、いいですね……(遠い目


「【神光】!」


 リーファがタメにタメた光の粒子が魔法となって放たれる。

 前は細い線だったのが、ビーム砲みたいな太い線になっていた。


「その魔法は効かねえんだよ、ひゃははは、は? ――ふぎゃぁああああああああああ!?」


 バリンと魔法障壁が砕け爆音と同時に敵数人が吹っ飛んだ。


 メ、メ○粒子砲みたいになっとるぅううううう!?


 その分、MP消費も大きいみたいだ。


「えへへ……ぶいっ!」


 リーファは可愛らしい笑顔で、おれにむかってピースする。

 わかった、わかったから、前を見ろ。おかわりがくるぞ。


 固まった敵はリーファが、バラけたらクイナがそれぞれ狙い撃ちしていく。


 二人の攻撃をくぐりぬけた敵にむかって、ひーちゃんが降下していく。

 同時にブレスを放つ。


「ガルァアア――ッ」


 一人を黒焦げにすると、別方向から炎弾が飛んでくる。

 それを【灰燼】を発動させた剣で切った。


 ひーちゃんから飛び降りて、怒号をあげて迫ってくる盗賊を一人一人倒していく。


 元軍人というのは伊達じゃないらしい。

 バラバラになった後すぐに集団となり、攻撃と防御をはじめた。


 構えられるとクイナの風魔法が効かず、タメが作れないとリーファの神光が撃てない。


 む。苦戦しはじめている……。


「うろちょろ飛び回りやがって――鬱陶しいんだよ、クソ爬虫類が――ッ!」


 巨犬に乗るマクセルが火炎魔法を放つ。


 ――まずい! あの角度。

 敵を追い打ちするひーちゃんの死角だ。


「ひーちゃん、避けろ!」

「がる? ――がるぅううううっ!?」


 マクセルの攻撃がひーちゃんの左翼に直撃。

 そのままバランスを崩して地面に落ちた。


「え。うそ――、ひーちゃん!?」

「ひーちゃんさん!?」


 HPを確認すると大したダメージじゃない。

 火竜だからか、火炎魔法に耐性があるんだ。


「がる~……っ」


 すぐに起き上がったひーちゃんはぷるぷると頭を振った。


 良かった。当たった衝撃でただバランスを崩しただけみたいだ。


「余所見してる場合かよオイぃいいいいいいいッ!」


 ひーちゃんに気を取られたリーファたちのところへマクセルが単騎で突進していく。


「スカイランス!」

「この程度でッ! 笑わてくれんよッッ!」


 クイナの風魔法は一振りした槍で叩き切られた。


 敵と仲間の距離が近すぎて、ここからじゃ援護出来ねえ……!


 リーファが反撃に出た。


「【神光】!」


 撃った聖攻撃魔法は、巨犬に素早く回避された。


「まずはテメェからだ、舐めるなよ、エルフ――ッ!」

「それはこちらのセリフです、下衆が――。エアリアルアローッ!」


 無数の弾幕のような風魔法が一斉射される。


 それをマクセルは、槍と魔法障壁、炎魔法で完封した。


「――!?」


 近距離になると巨犬が大きな口を開く。

 それに乗るマクセルは長槍を構えていた。


 ッ、あれはちょっとやばい――!


 ひーちゃんがこっちに飛んでくる。

 それに飛び乗り、最大戦速でクイナのもとに飛ぶ。


「クイナ――!」


 ひーちゃんが牽制のブレスを吐き、一瞬の間を作る。

 その隙におれはクイナの腕をとり離脱させた。


 一歩遅かったら、まず巨犬が食いついていた。

 それを回避すれば、さらにマクセルが攻撃していただろう。


 おれとひーちゃん並みの連携攻撃だ。


「ジンタ様――。すみません、わたくし……」

「いいって。気にすんな」


 旋回して、リーファも回収しゴーレム付近でおろした。


 リーファもクイナもMP消費が激しい。

 町にむかう連中は、ゴーレムと協力して戦ったほうがいいだろう。


「二人は他の雑魚を頼む。――あいつはおれがやる」


 すぐに反転して、追ってくるマクセルと対峙する。


「がる、がるっ、がる!」


 何言っているかわからんぞ、ひーちゃん。


「犬はひーちゃんがやる……?」

「がるぅ♪」


 あ。当たった。

 クイナやリーファの攻撃を見ていて、直線的な攻撃は、全部あの巨犬が回避していた。


 追跡能力のない攻撃を撃ったとしても、相当近距離じゃないと当たらないだろう。


「こうなったら――ッ!」


 おれは【灰燼】を発動させ、マクセルにむかって真っ直ぐ飛ぶ。


「真っ向勝負かよ、面白ぇぇぇッ! 来いよッ【ガチャ荒らし】ぃいいい――ッ!」


 炎弾をマクセルが放つ。それをドラゴンブレスが消し飛ばす。


「ヴォウッ!」


 口を開け巨犬が飛びついてくる。


「がぁああ――るっ!」


 ゴン、と巨犬の鼻柱にドラゴンぱんちが炸裂。


「きゃうん――!?」


 巨犬が身をねじるとひーちゃんが首筋に噛みついた。


 瞬間、マクセルの長槍が蛇のように伸びてくる。


「――死ねやオラァアアアああああああああああああああッ!!」

「ォオオ――ッッッ!!」


 ザンッッッ――、……。


 振りおろした魔焔剣は槍ごとマクセルを切り裂いた。


「――ガッ、ぐふ……ッ、クソ冒険者のクソガキが……!」


 血を吐いたマクセルは、ずると巨犬から落ちてそのまま気絶した。

 巨犬の体はみるみる縮んでいき、獣人の姿になった。


「クソはお前のほうだ。あと……覚えとけ、オッサン。日本人は、幼く見られがちなんだよ。……まあ、日本人つってもわかんねえだろうけど」


 敵も味方も固唾を呑んで戦いの行方を見守っていたらしい。

 敵は武器を捨てて膝を着き、町からは大歓声があがった。



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