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圧倒的ガチャ運で異世界を成り上がる!  作者: ケンノジ


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65/114

65話

 前回この町に寄ってからもうひと月ほど経っている。

 以前と比べて、どことなく町の人が暗い顔をしている気がするのは、気のせいじゃないだろう。


 おれは町行く人に町長の家を教えてもらい、早速訪ねた。


「こんにちは。ライラさんから事情を聞いてやってきた冒険者です」


 扉が開くと、五〇絡みの男性が現れた。

 小奇麗にひげを整えている端正な顔のおじさんだった。


「ああ、君がもしかしてライラが言っていた――」

「はい。おれのことです。風見仁太って言います。はじめまして」

「結婚の挨拶に来ると言っていた、カザミ君か!」


 ずるっ、とコケそうになった。

 あの半裸女……! どんな紹介してんだ。


「いや。違います。あ。おれはカザミで間違いないですけど、結婚がどうのっていうのは全然違うんで。ライラさんが勘違いしているだけなんです」

「そうなのか? まあいい。よく来てくれた。私はラルド・ブルーノという。ライラの父でここのザガの町長をしている」


 こちらへ、と中へ案内され、ついていくとダイニングにやってきた。

 いくつかあるイスにおれたちはそれぞれ座って、簡単に自己紹介を済ます。


「事情はライラさんから聞いています。自警団の手が足りないそうで」

「ああ。皆、自分の仕事をしながら町を守っていてね。だから、見張りをし続けたり、定期的に巡回をしたりすることが難しいんだ。それに近辺をうろつく盗賊どもが、なかなか手強くてね……。我々じゃ、どうにも手に負えんのだよ」


 ほぼボランティア状態の自警団。

 ログロの町の自警団は、領主から給料も出ていたし、ある程度予算をもらって活動していたけど、話を聞いた限りじゃ、そんな資金援助なんてないんだろう。


 前領主の頃はしっかりしていたけど、五年前、現領主のアルバに変わってからこの有様だそうだ。


「わかりました。おれたちに任せてください。しばらく滞在して、やってきた盗賊たちを追い払います。【ガチャ荒らし】が守っているって知れば、来なくなるかもしれませんし」


「ありがとう……。私に出来ることがあれば、何でもさせて欲しい。部屋も余っている。滞在する間は、ここで寝泊まりすればいい」

「助かります。ありがとうございます」


 自警団詰所に顔を出すことにして、おれたちは町長邸を後にした。


 以前みたいに冒険者がいないのもあって、活気は感じられない。


 ラルド町長に教えてもらった詰所に行くと、一人待機している青年団員がいた。


「こんにちはー。風見仁太って言います」

「あぁ、あなたがカザミさんですか? 俺はアベルと言います。ザガの森の森林化は、あなたのお陰で止まったと聞いています! ありがとうございました! あのままでは、この町も危なかったと……」


「いえいえ、どういたしまして。盗賊がなかなか手強いと聞いたんですけど、どういう奴らなんですか?」

「魔法が使えるんです。だから、俺たち素人じゃまるで敵わなくて……今も仲間が三人巡回しているんですが、また奴らが来れば……」


 戦うというよりは、町民の避難を促したり時間を稼いだりするのがメインだそうだ。


「だいたい週に一度はやってきて、食糧や金品を奪っていくんです。……時々、年頃の娘もさらって……」


 なるほど。絵に書いたようなヒャッハーな連中なわけだ。


「俺がカザミさんみたいに強かったら、ニーナだって守れたはずなんだ……!」


 ……恋人かな……。これは、どうにかしてやんないと。


「だいじょうぶなの、ご主人様とゴーレムがいるから、もう安心なの」


 アベルの肩を叩いて、うんうんとうなずくひーちゃん。

 おれもそうだけど、ゴーレムもそんなに万能じゃないぞ?


 カラン、カラン――ッ。


 鐘を打ち鳴らす音が聞こえると、アベルが立ちあがった。


「合図です――奴らが来た合図です!」

「よし、そんじゃあちょっと行ってくるか。アベルは、町の人を避難させて」

「はい!」


 ずだだだ、とアベルは駆けだした。

 迎撃すべく町の外に出る。

 ゴーレムを出し、こことは反対側を守るように命令した。


 物見台にいた自警団員にも他を当たるように言っておく。


「盗賊に魔法使い、ですか。なかなか珍しいですね」

「そうなのか?」


 ええ、とクイナはうなずく。


「エルフのように特別な種族ではない普通の人間には、魔力器官というものがあるのです、ジンタ様」

「そそ。それが大きければ使える魔力量も多いし魔法の才能もある。小さいと逆に使える魔力はほんのちょっとだし、魔法の才能なしってことになるの」


「へえ。才能があるのに、何で盗賊なんてしてんだろうな?」

「はい。だから珍しいのです。普通、王国軍に士官していたり貴族に召し抱えられていたりするのですが……」


 どこにだってアウトロー気取るロックな輩はいるからなあ。

 自由が良いって言って社会からログアウトしちまったんだろう。


 ドドッ、ドドッ――。馬に乗っているらしく、砂煙をあげながら五騎のアウトローがこっちにむかってきている。

 おれたちはそれぞれ遠距離攻撃の準備をする。


 クイナは風魔法。

 リーファはスキルの神光。

 ドラゴンひーちゃんはブレス。

 おれは【黒焔】だ。


「何だテメェらぁああああ!? 死にたくなけりゃどきやがれぇえッ!!」

「おいおい! エルフがいるじゃねえかっ!」

「ヒィイイイイヤッハァアアアア! ぺったんこの神官はもらったぁああ! 蹴ったり踏んだり、罵ってもらうぜぇえええええ!」


「うええ……キモっ」


 ゴミ虫を見るような目をするリーファ。


「仔ドラゴンもいるじゃねえか、捕まえて鱗剥いで、高値で売ってやらぁあ」


「がう……がう……」

「心配すんな。逆にあいつら捕まえて、身ぐるみ剥いで売ってやろうぜ?」

「がるぅ♪」

「あんなゴミクズ、売れるのでしょうか?」


 やっぱり一番酷いのはクイナだと思う。


「隊長に良い土産が出来るぜぇええッ! ヒィイイイイヤッハァアアアア!」


 片手に剣や槍を持つ盗賊たち。


―――――――――――

種族:人間

Lv:45

HP:4500/4500

MP:2100/2100

力 :550

知力:400

耐久:200

素早さ:130

運 :9


スキル

炎魔法(炎属性の攻撃魔法)

魔法障壁(防御魔法 特に対魔法に有効)

恫喝

―――――――――――


 おお。スキルに魔法がある。本当に使えるんだ。


「ゲスの相手など、わたくし一人で十分です」


 クイナが弓を構え、風を凝縮した長い魔法の矢を放つ。

 一本の矢が枝分かれし、それぞれ飛んでいく。


「この程度――ッ」


 クイナの矢は、かわされたり剣で叩き落とされたりして、届くことはなかった。

 距離があるから、むこうも対処しやすいんだろう。


「あうっ……そんなぁ……ジンタしゃまぁ……」

「そんなにヘコまないの」


「クイナの矢が当たらないなんてなかなかやるわね、あいつら。ひーちゃん、同時に行くわよ――!」

「がるがる!」


 リーファの足元に魔法陣が広がる。

 ひーちゃんの口の中に火炎が溜まっていく。


「【神光(ハロ)】――」

「ガルゥアァアアアアア――ッ!」


 一直線に伸びる真っ白な光線と真っ赤なドラゴンブレス。


「結集――ッ! 魔法障壁展開だ、ンの野郎ッ――!」


 盗賊五騎が固まると半透明のシールドが展開。

 ガィン、とリーファの光線を弾いた。

 放射され続けたブレスも盗賊たちの魔法障壁に阻まれた。


「あぁっ、防がれた……」

「がるう……」


 五人が固まってスキルを使えば、格上の攻撃も防げたりするんだ。


「おい! リーファ見ろよ! 防御魔法! あいつら、防御魔法でブレスもハロも防いだぞ! すげえ! おれの防げんのかな!?」

「何でテンション上がってんのよ。こっちは防がれてショック受けてるのに……」


「いや、初めて見るし防御魔法。もしおれのが防がれたら、『これがダメならこいつでどうだって!』ていう展開になるだろ!?」

「何それ嬉しいことなの!? テンション上がることなの!?」


 おれはMPを少しだけ消費させ、剣を振り【黒焔】を放つ。

 真っ黒な炎弾が飛んでいく。


「この程度の魔法ッ!」


【黒焔】が直撃すると、バリバリンと何かが砕ける音がした。


「俺達の多重魔法障壁に防げないワケが――フギャぁあああああああああああああああああああああああああ!?」


 ドォオン。でかい音とともに、盗賊も馬も例外なく吹き飛んだ。


「………………」

「ジンタ、現実なんてこんなもんよ」


 人間って、あんなに高く空に舞い上がれるんだ……。


「リーファ、聞いてくれ。セーブしたんだぞ、これでも。――防御してもらえるように!」

「何で防いで欲しいのよ……」


 次はこれだ、これで決める! って、言いたかっただけです、はい……。

 ぷすぷす、と焦げている盗賊たちをおれは指差した。


「ようし、とっ捕まえて屈強なゲイに売ろうぜ? あいつら、一応魔法使いだからきっと高く売れる」

「ジンタ様、いけませんよ?」

「そうよ! 主旨変わってるじゃない」


「ちゃんとおネギをお尻に挿して、きちんと消毒してからでないと――」

「そこじゃないわよっ!」


「でないと売れないのか?」

「ええ、おそらく」

「品質の問題じゃないからっ!」


「もしかすると、盗賊を捕まえて奴隷商人に売るってのは、一石二鳥かもしれないな」

「まあ。名案。おネギをまずは揃えませんと」

「新しい商売考えないでっ!」


 フーフー、とリーファは肩で息をしている。

 おれとクイナは顔を見合わせくすっと笑った。


 ぴかり、とひーちゃんが人化する。


「ご主人様、さっきおっきな犬に乗った人がきて、黒こげをひろっていったの」


 あ、ほんとだ。せっかく売ろうと思ったのに。

 けど、撃退は成功だ。


「ジンタがここにいるってわかったら、もう来ないかもしれないわよね」

「それはあり得る話です」


 町に戻ろうかとクルッと振りかえると、どうやら、町の人たちがさっきの戦闘を見ていたらしい。


 簡素な壁のむこうから、わぁっと歓声があがった。


「カザミさんっ! あんたスゲェじゃねえか!」

「五人まとめて一撃とか、マジかよ!」

「さすが凄腕は違う!」


 いやいや、どうもです……。


「ジンタ様が照れてます、ふふ、かわいい」

「ほっといてくれ」

「歓声に応えないの?」


 応えるっていっても、何すりゃいいんだよ……?

 ちょっと考えて、剣を突きあげると、またわぁっと大きな歓声が響いた。


「ボクのご主人様は、ヒーローなの」

「当たり前です、わたくしのジンタ様なのですから」

「クイナのじゃないでしょ。も、もちろん、わ、わたしのでも、ないから……」


 おれが誉められてるのに、なんかみんなも嬉しそうだった。

 この後、ちょっとした祝勝会が開かれ、飯だの酒だのを町のみんなが沢山振る舞ってくれた。



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