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圧倒的ガチャ運で異世界を成り上がる!  作者: ケンノジ


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55/114

55話

やや日常な回です。

 目的地へむかう途中、森に呑みこまれた村がひとつ見えた。


「この村から逃げてきた者の話では、一晩のうちにあのような状態になっていたそうだ」


 村の家は例外なく壁にツルが這っている。

 他の家は、大樹が貫通して屋根から突き出ていたり、地面が割れてそこから太い根がのぞいたりしている。


「噂では聞いていましたけれど、実際見てみると酷いものです……」

「クイナ、知ってたのか?」

「はい。一週間ほど前でしょうか。自警団の詰所で耳にしました」


 自然の猛威ってのは、人間がどうこう出来るもんじゃないんだな、と改めて思った。

 原因知らねーかな、と思ってリーファを見ると、おれの考えていることがわかったらしく、静かに首を振った。


 森林化しているのは、村だけじゃなくそこらへん一帯だった。


 森の入口に到着する。


「このあたりもつい先日まで普通の大地だったそうなのだが、もう森になっている」

「結構深刻なのね……」


 森が広がれば棲みつく魔物の数も自然と増えていくだろう。

 確かに、これはなるべく早くどうにかしないと。


 森に入り、例のごとくリーファマップに従い道を進む。


「どうしてそうあっさりと道がわかるのだ」

「えへへ……内緒」


 すげー嬉しそうな顔をするリーファ。

 その隣で、シルヴィの足取りはどんどん重くなっている。


 おれたちは、ザガの森調査における活動拠点を作ることにした。

 毎回往復していたら奥になんて行けやしない。そのための食糧と水だ。


 革製の水筒をみんなに渡す。シルヴィの分はなかったから、おれの分を渡した。


「これは君のだろう。受け取れない」

「いいから、いいから。疲れただろ、シルヴィ。おれはそうでもないし気にしなくていいぞ?」

「つ、疲れてなどいない」

「意地張んなよ」

「むう……すまない」


 小声でそう言って水筒を受け取るシルヴィ。


 プレートアーマーとしゃべるのはなんかシュールだな。

 さすがに飲むときはヘルムを取って飲むらしい。


「しかし、拠点を作るとは言うが、どうするのだ?」


 小鳥みたいにシルヴィは不思議そうに首をかしげる。

 今いるここは、拓けた土地でも何でもない森のど真ん中だ。


「どうするって、こうする」


 魔焔剣を抜き、【灰燼】を発動させる。

 剣を横に薙ぐとズバンッと十数本の木が一気に倒れた。


「は、はい――っ?」


 きょとんとするシルヴィに構わずおれは剣を振るう。

 木を切り倒し続けると、すぐに360度拓けた平地が出来あがる。


 うん、視界良好。

 これなら魔物が付近にきてもすぐにわかる。


「壁作るか。ひーちゃん手伝ってくれるか?」

「はいなの」


 切った木の運搬をドラゴンひーちゃんに手伝ってもらい、四方に積み上げる。

 おれの身長よりも高い外壁が即出来た。


「え、壁? か。壁?? えっ? もう?? えっ、ドラゴン? 今ドラゴンが……。あの、ドラゴンが……え、夢??」


 目を白黒させたり、きょとんとしたり驚きっぱなしのシルヴィ。


 シルヴィには構わず、邪魔な切り株は極小の【黒焔】で燃やして消し炭にする。

 すぐに平地が出来あがった。


「ご主人様、魔法のむだづかいなの」

「まあ、そう言うなって。これで結構快適に過ごせると思うぞ?」


 外壁の内側は、ちょうど教室一個分くらいの広さがある。


 シルヴィは、おれたちを指差してリーファとクイナを見る。

 二人はどこか遠い目をしていた。


「わたし、ジンタのすることに驚くの、もうやめたの……」

「わたくしも……ジンタ様が何をしても『そういうものなんだな』と思うことにしています……」

「シルヴィ、驚きすぎると身がもたないわよ?」

「ええ、本当にそうですよ、シルヴィさん」


「おーし、余った木材で風呂作るかー」


「「「作れるんだっ!?!?」」」


 全員目ん玉飛び出そうなほど驚いてた。

 遠い目モードをやめたリーファとクイナも食いついてる。


 そんな大層なもんじゃないけど、地面を切って窪みを作る。

 そこに板状に切った木をはめ込んで、本当に簡単だけど即席の風呂ができた。


「わたし、森で長期滞在って覚悟してたから、実はお風呂、諦めていたの……」

「わたくしもです、リーファさん」


 リーファとクイナは手を取り合って喜んでいる。


 シルヴィに至っては魂が抜けたみたいにぼーっとこっちを見ている。


「えっ、お風呂? ええぇ……」


 そのままぺたん、と尻もちをついてしまった。


 湯を入れるのは後にして、寝床である簡易キャンプをアイボから出して組み立てる。

 うーん、こんなに広いんならキャンプ一人一個にすれば良かったな。


 持ってきたやつは四人用。

 ……てことは、美少女3人と美幼女の中におれ一人?


 ほう、なるほど。それはそれは……ほうほう……。


 気づくと、じぃっとひーちゃんが半目でおれを見ていた。


「ど、どうしたひーちゃん」

「ご主人様が、えっちな顔をしていたの…………えっちなこと、ボクにだけなら許すの」

「捕まるわ」


「もちろんドラゴン体のほうなの」

「どうやるんだよ。教わったらそれはそれでちょっとしたカルチャーショック受けそうだな」


 クイナとリーファ、あとシルヴィは周囲の様子を見に行ったので、今はキャンプにはいない。

 おれはドラゴンひーちゃんに乗って風呂用の水を近くの小川まで行って汲んできた。


「ひーちゃん、ブレス!」

「がるぁあっ!」


 ボホォオオゥ!


 水を張った簡易風呂にむかって火炎が放たれる。


 直撃すると蒸発するから、水面をなでる程度にブレスを吐いてもらう。


 水からすぐに蒸気が吹き出し、熱々のお湯になった。


 ぴかり、と体が光ってひーちゃんが人化する。

 ぷくっとほっぺを膨らませていた。


「ご主人様の指示だからしたけど、ブレスはこういうことに使うものじゃないの」

「よしよし、ひーちゃんはおれの言うことをちゃんと聞く良い子だなぁ」


 ほっぺをむにむに触りながら、頭をなでてあげる。


「がぅぅぅ……ほめられてしまったの……。ご主人様だいすきなのー」


 ひしっ、とおれに抱きついてくるひーちゃん。

 うむうむ、()いやつよのぉ。


 そんなことをしていると、リーファたちが帰ってきて声をあげた。


「あー! お風呂沸いてるっ!」

「あら。とても良い感じですね」


「二人とも落ち着くんだ。……カザミが、ハレンチなことをする可能性を考慮しなければ……」

「そ、そうだったわ……ジンタに、その、見られちゃうかも……」


「何を気にしているのです。リーファさんの体つきなんて、四捨五入すればゼロなのに」


「勝手にゼロにしないでっ。ちゃんと1でも2でも存在してるんだからっ」


「がう……ボク、ご主人様と一緒に入りたいの……」

「ダーメ!」


 リーファにずるずると連行されていくひーちゃん。

 結局みんなと一緒に入ることになったみたいだ。


 みんなが外でキャッキャ言いながら風呂に入る中、おれはキャンプの中でごろんと横になった。


 なんとなく疎外感があってちょっとだけ寂しい。


 風呂に不具合とかあったら困るだろうし、少し様子を見てみるか。


「風呂壊れたらマズイしなー湯加減も大事だしなー、……風見仁太、行きます――!」


「行きます、とは言うがカザミ、どこへ行く気なのだ?」


 キャンプから外へ一歩踏み出すと、そこには怖い顔をする騎士さんが立っていた。

 右腕に腕章をつけている。


『滅殺・破廉恥』


 鼻先に槍をつきつけられた。

 や、殺られる――!


「いえ何でもないです、おれの本能がこんなにハレンチなわけがない」

「うむ。では、皆があがるまで大人しくしているのだぞ?」

「ういっす……」


 見張ってたんですか、そうですかそうですか……。

 回れ右して中に戻るおれ。


 意外と疲れていたらしく、おれはみんなが風呂に入っている間に寝ていたようだ。

 目が覚めたときにはもう朝で、みんな起きていた。


 夜のお楽しみイベントなんて、やっぱ二次元だけですね!



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