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圧倒的ガチャ運で異世界を成り上がる!  作者: ケンノジ


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53/114

53話

 おれが冒険者ギルドへやってくると、受付のアナヤさんが会釈した。


「こんにちは、カザミ様」

「あぁ、アナヤさん。どうもです」


 さっそくカウンターの席に着く。

 今回冒険者ギルドにやってきたのは、一通のとある手紙がおれの家に届いたからだ。

 差出人は冒険者ギルド。内容は、クエスト絡みで連絡したいことがあるんだとか。


「カザミ様、聞きましたよ。ラウル・ハードハートを倒したんですって?」

「あー。そういやこの前そんなことがありましたね」


 アナヤさんいわく、それが割と噂になっているんだとか。


「ふふ、ずいぶんと簡単なおっしゃりようですね。すごいことなのですけれど」


 道理で最近おれを見てひそひそ話す人が多いのか。

 いつぞやガチャ屋が作った人相書きのせいで顔バレしてるからな……。


 今度から人相書き見つけたら剥がしておこう。


「はじめてその話を聞いたときは、まさかとは思いましたけれど、妙に納得してしました」


 にこにこ、と楽しそうにアナヤさんは言う。


 ちやほやしてくれるのは嬉しいんだけど、本題本題。


「ところで、クエストのことで連絡事項があるって手紙が届いたんですけど、何のことです?」

「ああ、そうでした。カザミ様に、冒険者ギルド本部より指名クエストがきております」


 アナヤさんは、いつもよりも上等なクエスト票を取りだして広げた。


――――――――――――――――――

 クエストランク【A】『森林化調査と森の掃討戦』

 成功条件:村の森林化原因調査とザガの森にいる魔物を可能な限り掃討

 条件:冒険者ギルド指名のユニオン、冒険者

 依頼主:アルガスト王国

 報酬:ユニオン:300万リン 個人70万リン

    エリクサリー×5(HP・MP・異常状態の全回復)

    活動評価により勲章

――――――――――――――――――


「おれに、これを? 依頼主が国なのか……」

「はい。……詳細は裏にございます」


 森に一番近いザガの町にまずむかうことや、森の情報が裏面に載っている。

 森の場所、全体の地図、出現することが予想される魔物とおおよその数。


「可能な限りってありますけど、数は決まっていないんですね。総数約二千ですか」

「王国から検分官として騎士の方たちがお見えになられるようで、言ってしまえばその方々の判断次第でもあります。活動評価も同じく」


「勲章って、何か役に立つんです?」

「今回の掃討戦に参加し活躍した、という証ですので、名誉としての報酬です」


 なるほど。勲章なんてものに興味はないけど、今後リーファがいない非常事態に備えてエリクサリーは持っておきたい。


「何でおれなんかに、こんな高ランククエストが……?」


「ベヒモス撃破の噂に続いて、Sランク冒険者【朱甲】の撃破――これが冒険者ギルド本部長の耳に入ったようです。カザミ様だけなんですよ? 今回個人で指名されているのは」


 はあ、そりゃ光栄というか、なんというか。


「ちなみに、仲間って連れていけますか?」

「そうですね……連れていってはいけない、とは記載されておりませんので、問題ないかと思います。ただ、魔物も凶暴化しているとの情報もありますし、厳しい環境下でのクエストとなります。報酬も出ませんので、それはご留意くださいませ」


 ザガの森なんて言われても全然ピンとこないけど、一般的に相当キツい森なのか。

 みんなを危ない目に遭わせたくないし、今回はおれ一人のほうがいいのかもしれない。


 断る理由も特になかったので、正式にクエストを受けることを伝えて、おれは馬車で家に帰った。


「ご主人様、おかえりなさいなの」

「うん、ただいま」


 ぱたぱた廊下を走ってくるひーちゃんがおれに飛びついた。

 すると、すぐにクイナとリーファが顔を出す。


「ジンタ様、お帰りなさいませ。……冒険者ギルドからのお手紙は一体何だったのです?」


 リーファも訊きたいことは同じらしく、こっちをじっと見てくる。


「ああ……まあ、ちょっとしたクエストの話」

「ジンタだけに?」


 リーファは不思議そうに首をかしげているけど、クイナは不安そうに眉尻を下げている。


 クエスト内容を説明したら、絶対についていくって言いそうだ。

 それに、ひーちゃんなしでザガの町にむかうのなら、すぐ出発しないといけない。


「その件で、おれ、ちょっと家を空けることになるから、留守を頼む」

「え? どうしてそんな急に――」


「ボクも一緒にいくの」

「今回はおれだけなんだ」


「ジンタ様、ザガの森のことではないのですか? 詰所で少し話を耳にしました。選ばれたユニオンが大規模クエストに参加する、と。……正式な手紙が冒険者ギルドから送られてくることなど、そう多くありません。だから、もしかすると、と思っていました。ジンタ様は先日【朱甲】に勝ちましたし、声がかかっても何の不思議もありません」


「何だよ、バレてたのか」


 おれがバツ悪そうに頭をかくと、クイナが小さく笑った。


「はっきりわかっていたわけではないのですけれど、オンナの勘、というやつです」

「クイナ、ひーちゃん、わたしたちも準備しましょ?」

「待て待て。これは指名クエストで、おれにしか報酬は発生しないんだぞ? それに、結構危ないって話だ。環境もキツい。だから、今回はおれ一人で行く」


「わたし、やっぱり……足手まといだった?」

「がう……」


「そうじゃない。でも危険は多いし、みんなに報酬は出ない。……これでも結構堪えたんだ、リーファがさらわれたとき。心配したし、このまま居なくなってもう会えなくなるってのは嫌だったから。それはもう繰り返したくない」


「それはわたくしも同じです。心配しました。でもそれがジンタ様だとしたら、わたくしはその数千倍は心配します。夜も眠れません。御身にもし何かがあれば、わたくし、即座に死ねる自信があります」


 クイナの目がマジだった。


「クイナのあいが重いの……」

「おっ、重くありませんっ」


 するすると器用によじ登ってきたひーちゃんは、ひしっとおれの首にしがみついた。


「ボクはご主人様のことがすきだから、ずっと一緒にいたいの。それだけなの」


「この前ジンタ言ってくれたじゃない? 『仲間なんだから』って。私たちのことを心配してくれるのは……嬉しい。どんなにジンタが強くても、私たちも同じで心配するし、ええっと……だから、何であれジンタの力になりたいの」


「……わかった、わかったよ。おれの負けだ。……行こう、みんなで!」



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