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圧倒的ガチャ運で異世界を成り上がる!  作者: ケンノジ


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25話

「ジンタって……思っていた以上に強いのね……。ベヒモス倒したから強いのはわかってたんだけど……」

「え、ええ……想像を絶するレベルでした。実際に目にするのでは、違いますね……」


 どうやら二人は、百聞は一見にしかずってのを体験したらしい。


「もっと強いやついっぱいいると思うけど」


 いや、いるのか? それはまだわからないけど。

 あ、永晶石回収しておかねーと。


「これでクエスト達成の20個のゴブリンの永晶石は揃ったな」


 リーファがそろそろとゴブリンの死骸に近づく。

 鎖帷子に顔を近づけて、何かを確認して言った。


「ドリッドのロゴが入っている。これ、結構良い物よ?」


 バルサ産の鉄で出来た良品で、ドリッドって町で作られ運ばれた可能性があるらしい。

 町の名前とかいっぱい出されるとさっぱり頭に入らない。

 世界史苦手だったからな。横文字の長い名前や地名は苦手なんだ……。


 クイナが小さく息をついた。


「……わたくし、戦闘に必要なのでしょうか……自信なくなってきました……。ジンタ様を支えるつもりでいたのですけれど……。これではただの足手まといです……」


「私だって……。これじゃ治癒も何も要らないもの……」


 なんかヘコんでる!?


「いてもいなくても一緒だし……」

「そうですね……」


「待て待て待てぇえ! 先頭で危ないことするのは、男の仕事じゃんか。だから、二人には危険なことさせたくないと思って!」


「ジンタ様……そこまでわたくしのことを想ってくださって……。感激です……。このクイナ、一生あなたについて行きます!」


「ジンタ……。大切に想ってくれてるのは、あの、ちょっと嬉しいかも……」


 戦闘はそうかもしれないけど、おれ一人じゃわからないことだって出てくるはず。

 やっぱみんな必要だ。


「小剣や鎖帷子を装備しているってことは、物資運送中の荷車や商人を襲って奪った装備かもしれないってことだよな?」

「うん、きっとそう。ゴブリンに装備を作る技術なんてないし」


「……それなら、盗品を奥のどこかに隠し持っている、という可能性もありますね」


 グシャグシャ、と音がすると思って後ろを見ると、ひーちゃんがゴブリンを食っていた。

 しかも器用に鎖帷子を取って食べている。


「……」

「がう?」

「ううん。何でもない……」


 リーファもクイナも気づいてない様子。

 ひーちゃんの口周りの血とか、ちょっとエグいからこのことは黙っておこう。


 お腹すいてたのかな。


「一応、クエスト達成分の永晶石は集まった。でも、ここにいるゴブリンを放置しちまうと、きっとまた誰かが襲われる」


 リーファもクイナも、おれが何を言いたいのかわかったらしく、うなずいている。


「だから、このねぐらを潰そうと思う」


「うん。私も賛成」

「はい、そうしましょう。微力ながらお力添えいたします」

「がうがう」


 方針も決まり、おれたちは奥へ進むことにした。

 

 結構な広さがあるけど、この部屋は何をする場所なんだろ?

 よくよく見てみると、荷車やボロボロの荷袋が捨てられている。


 ここで奪った物を奥に運んでいたのか……?


 その奥に続く通路らしき道がある。

 もちろんちゃんとした通路じゃなくて、ゴブリンたちが踏み固めているからそう見えるだけの道だ。


 ただ、それが左、右の二つあった。


「左がしばらく行ったあと行き止まりになっていて、右はここみたいな広間に出るわ。さすがに何があるのかまではわからないけど」


「どっちみち潰すんだし、まずは左から行こう」


 最初は左の通路に入ることにして、おれを先頭に道を歩く。

 木の背が高いせいで、空もずいぶんと小さく見える。


 まだお昼頃だっていうのに、ずいぶんと暗く感じる。


 ギャギャ――、ギャギャ――、


 小さくゴブリンの鳴き声が聞こえ、おれたちは足を止めた。

 その声が徐々に大きくなり、足音も聞こえてきた。


 剣に鎖帷子の多数のゴブリン(エリート)が現れた。


「「「「ギャギャギャ――ッ!」」」」


 あいつだ、あいつらだ、みたいにおれたちを指差し、こっちにむかって走ってくる。


「い、いいいいい、い、いっぱい出たぁああああ!?」

「リ、リリリリ、リーファしゃん、おお、おち、おち落ち着いてくだしゃいっ」


 十数体ほどのデカゴブリンが出たせいで二人ともテンパっている。


「うん、二人ともとりあえず落ち着こうな?」


【灰燼】を発動させた魔焔剣を横に一閃。


 ズバン、と真っ二つになるゴブリンたち。


 呆気ないなぁ……。


「リーファさん、あの程度でパニックになるなんて情けないですよ?」

「クイナも人のこと言えないでしょっ」


 クイナはどうやら遠距離じゃないとテンパってしまうらしい。

 まあ、魔法メインの攻撃なんだから仕方ない。


 さらにゴブリンが出てくる。

 木々の隙間から、枝の上から、茂みから――。

 ゴブリン祭りかっていうくらい出てくる。


 やっぱ、ここねぐらなんだ。


 前方と左右の敵はおれが倒し、後方から湧いたゴブリンはクイナとひーちゃんが倒す。


 ひーちゃんやクイナが傷を負ったそばから、リーファも治癒魔法で回復させていっていた。


「粗方片付いた、かな?」


 動くゴブリンはいなくなり、新手も出現しなくなった。


「はぁぁぁ、どうにかなったわね」

「リーファ、MP消費には……」

「わかってる。気をつけてるから」


 クイナが首をかしげる。


「えむぴい、とは何でしょう?」


 あ、そっか。普通の人はステータスとか見えないんだもんな。


「ええっと、魔法使うときに消費するアレな」

「あぁ。魔力のことですね。そのことを、えむぴいと呼んでいるのですか」


 リーファに限らず、おれもクイナもそこそこMPは使っている。

 多少は節約しながら戦ったほうがいいかもしれない。


「がるー」


 ひーちゃんがきちんと永晶石をくわえて、まとめておれのところへもってきてくれた。


「お。ありがとう」


 よしよし、と撫でておく。

 拾い損ねがあるのかもしれないけど、全部で14個あった。


 おれたちは静かになった森を奥へ進む。


「ゴブリン、出てこなくなったな」

「いいわよ、出てこなくたって……」


 行き止まりかと思ったそこは、小さな部屋のようになっていた。

 けどそこには、鎖帷子の入った木箱や、束にされた剣が転がっている。

 泥のついた衣服や、割れた食器が他の木箱に入っていた。


「盗品だな」


「うん間違いなくそう。さっき出てきた奴はここを守っていたんじゃないかしら?」

「きっとそうでしょう。あの多さにも納得がいきます」


 奥まった場所にひとつだけ木箱があった。

 中をのぞくと、パインゴやリンゴ、ブドウなどが出てきた。


「がるぅっ! がるぅっ!」


 パインゴが視界に入ったらしいひーちゃんのテンションはMAXだ!


「はい、ひーちゃん」


 ひとつ手にとって、口元へ持っていくと「がるぅ~」と嬉しそうに食べた。

 シャクシャクと食べてご満悦そうなひーちゃん。


「おれたちもちょっと休憩しよう」

「そうしましょう」

「賛成」


 木箱の果物は、潰れていたり腐りかけの物があったけど、食べられそうな物をクイナとリーファにも渡した。


 おれが腰を下ろそうとすると、ひーちゃんが伏せをする。


「ん? 背中借りていいの?」

「がるがる」

「? オーケーってことでいいのかな」


 おれが腰を下ろすと、隣にリーファ、反対にクイナが座った。


「ガルガル!」

「ちょ、ちょっと怒らないでよ。借りるだけじゃない」

「そうですよ、ひーちゃんさん」


「「ひーちゃんさん!?」」


 そう呼ぶんだ。


 ドラゴンの背中の上で、おれたちはシャクシャクとパインゴを食べる。


 疲れたところに甘みと酸味が効く……美味い。


「盗品、新しかったり古かったりするから、奪ったあとここに持ち帰るっていうのを繰り返していたのかもね」


「盗ってどうするつもりだったのでしょう? 見たところ、無差別に奪っているように見えますが」


「ゴブリン語は話せないからなあ……襲って奪って、ここで中を確認して、使えそうなら使って、使い方がわからないなら、放置ってところじゃないか?」


「そうかも。元々知能は低いし」


「てなると、どうしてそんなことしたんだろうな? 下っ端ゴブは小剣だけ装備して、エリートゴブは鎖帷子も装備してた。誰か、指示出しているやつがいたりして?」


「それは、ここを調べればわかるんじゃないの?」

「かもな」


「ジンタ様、次はどうします?」


 おれは小さく切り取られた空を見上げる。

 日が暮れるまでに、まだ時間はある。


「この通路はここで行き止まりっぽいから、今度は別の道を行こう」


 おれの言葉に、リーファとクイナはうなずいた。



次回は1/11 17時頃更新です!

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