番外編1
番外編、というか日常系の短編です。
今後もちまちまやっていきますー
魔神を倒し、湖畔の自宅に戻ったジンタたち――。
魔神を倒して、世界は平和になった。
平和になった、ていうか、世界の脅威になる前に倒したから、平和になったって言うのは違うのかもしれないけど。
リーファが窓から顔を出し、俺を呼んだ。
「ジンター? 釣れたー?」
家のそばにある湖で、おれは今日も釣りをしていた。
平和になったはいいが、やることがなくなっちまった。
これでもう一〇日もこんな調子だ。
「釣れねえ。この前釣り過ぎたんだよきっと」
生態系を壊すんじゃないかってレベルの爆釣だったからな。
「ガチャはすごいのに、釣りは大したことないのね」
「うるせえよ。釣りは運任せってわけでもないだろ」
竿やその他道具をしまい、家に帰る。
今日は、クイナがひーちゃんに連れ添って町で買い物をしている。
なので、家にはおれとリーファしかいなかった。
穏やかな昼下がり。
リビングのソファに座ると、リーファが隣にやってきた。
「マジ半端ねえ釣り道具を買おう。そしたら爆釣なのに」
「そのマジ半端ねえ釣り道具が見つかればいいわね」
ふふ、と小さく笑うリーファ。
きょろきょろ、とあたりを見回して、おれの肩に頭をのせた。
肩書の上では、リーファはもう女神じゃない。
それどころか、自分の存在を剣に作り変えている。
おれは、ずっと言わなきゃって思ってた。
「リーファ……あのとき、ありがとな」
「あのとき? 思い当たる節が多すぎて何のことを言ってるんだか……」
そんなにあるのかよ、とおれは笑った。
「おまえの上司の神様と戦ったとき……魔焔剣が折れただろ。そのとき、剣になってくれただろ」
普通に考えればありえない。
女神がわざわざ自分の力を使って剣になるなんて。しかももう女神に戻れないのに。
「そんなこと?」
「そんなことって……」
「いいのよ、別に。神様としての力や女神っていう肩書に未練はなかったから」
「本人がそう言うなら、まあいいか」
ちょっとおれ自身、心配でもあった。
もしかすると後悔してるんじゃないかって。
「迷いはなかったわ。だって一番大事なのは……ジンタと一緒にいることだったから」
顔を伏せたまま、リーファが手を絡ませてきた。
その横顔をじっと見ると、ようやく目が合った。
リーファがおれの首に両腕を回し、顔を近づける。
リーファの青い目の中に、おれが反射して映っていた。
「わたしだって、あのとき嬉しかった。天界に帰ろうとするわたしを追いかけてくれて。おまえの味方だって言ってくれて」
「……言ったっけ?」
「言ったわよっ」
ふふふ、と照れ交じりに笑うおれたち。
華奢な体を抱きしめると、リーファの甘い匂いが鼻先で弾けた。
ぎゅっとリーファもおれを抱きしめた。
すでに顔が火照っているリーファに、ゆっくりとキスをした。
「ジンタ……顔赤い」
「おまえもな」
ふふ、とまたおれたちは笑い合った。




