ちょっとおかしいみたいなんです
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「つまり君がリリィを匿っていた、ということだね?」
「……はい」
「それをパルフェクトにバレてしまって、城を追い出されてしまった、と」
「そうですのじゃ」
魔王様からの確認に、俺たちはそのとおりだと頷く。
俺はここまでにひとまず、俺が正式な使者としてきたこと、そしてそれから城を追い出されるまでの経緯を話していた。
「……ふむ、まずアネスト君のほうだが、やはりリリィを匿っていたのはまずかったかもしれない。できれば先にそれをパルフェクトにでも伝えて欲しかったな」
「……」
あまりの正論に俺は黙るほかない。
横に立っているパルフェクト姫がドヤ顔でこちらを見ているのが腹立つけど、それも仕方ないのだろう。
「パルフェクトは―――論外だ」
「え……」
てっきり自分がリリィを見つけたことを褒められるとでも思っていたのか、いきなりの論外発言に目を丸くしている。
「正式な使者としてきているアネスト君を、勝手に返してしまうなどもってのほかだ。間違えて魔族の国に連れてきたアネスト君の連れを返してしまえばそれで終わり、だなんてあるはずがないだろう」
「……ぅ」
魔王様の言葉に、パルフェクト姫が肩を縮ませる。
どうやら自分もそこまでは考えていなかったらしい。
「アネスト君がこうやってもう一度城に来てくれたから良かったものの、もしアネスト君がこのことを人間の国の王にでも伝えていたら私たち魔族の印象が悪くなることは避けられなかっただろうな」
「ご、ごめんなさいなのじゃ……」
確かに魔王様のいうこともごもっともなのかもしれないが、俺としては別にそこまでするつもりはなかったのだけれど……
「……ん、そういえばどうしてアネスト君はもう一度この城へ?」
そこでようやくそこに気がついたのか、魔王様がパルフェクト姫に向けていた視線をこちらに向けながら質問してくる。
俺はようやくそこで、自分が言いたいことが言える、と思った。
「リ、リリィを、連れて帰るためです」
「……リリィは自分の意思でここに残ったんじゃなかったのかい?」
俺の言葉に、魔王様は不思議そうに首をかしげながら、パルフェクト姫に確かめる。
「そ、そうですのじゃっ!」
すかさずパルフェクト姫が肯定する。
「……と言っているが、アネスト君はどうするつもりなんだね?」
俺はその問いに思わず言葉が詰まってしまう。
「……」
本当は、少しだけ強引になっても連れて帰りたい、とも言いたいのだが、そんなことを言っても無駄なだけだろう。
「まぁひとまず、リリィを呼んできたほうがいいかな?」
そんな俺に対し魔王様がそう言ってくれた。
どうやらリリィをここに連れてきてくれるというのだ。
「そっちのほうが、色々と話せるだろう?私も一度はリリィが本当の気持ち、とやらをきいてみたいしね」
「あ、ありがとうございますっ!」
俺は思わず魔王様に頭を下げる。
けどこれは、リリィの本心を自分で聞いてそれから判断してみろ、ということなのかもしれない。
それでも俺にとってはまたとない機会だ。
「……」
そんな中、パルフェクト姫だけが不自然に黙り込んでいる。
「どうしたんだいパルフェクト?リリィを呼んできてほしいんだけど」
魔王様もそう思ったらしく、パルフェクト姫に声をかけている。
「リ、リリィをなのじゃ……?」
本当にどうしたのか、何やらリリィを呼びに行きたくなさそうにしていた。
「ち、ちょっとリリィは今風邪なのじゃっ!」
「……え?」
リリィが風邪……?
「あ、それ俺が治せます」
それならば大丈夫だ。なんたって俺は回復魔法が使えるのだから。
「ほう、君は回復魔法を使えるのかね?」
「はい、一応ですけど使えます」
俺が回復魔法を使えるとは思っていなかったのか、魔王様は感心しているようだ。
「そういえば、リリィが人間の国に連れて行かれた時に何やら飲まされてしまったらしいのだが、もしかしてそれもアネスト君が?」
「あ、多分。はい」
確かに俺が最初にリリィとあったとき、ベッドで横になっていた。
恐らくはそれのことだろう。
「う、うそじゃ!人間の回復魔法は魔族には効きにくいのだから、無理に決まっておる!」
そんなとき、先まで黙り込んでいたことが嘘かのように、大声をだしながらそんなことを言ってきた。
「え、そうなんですか?」
俺は全くそんなことは知らなかったのだが……。
「あぁ、確かにそうだったな」
魔王様はパルフェクト姫の言葉にうなずいてしまった。
しかしそんなことを言われても俺は確かにリリィを治療している。
そこで俺は一つの理由に思い至った。
「実は俺の回復魔法、ちょっとおかしいみたいなんです」
多分これが原因なはずだ。
パルフェクト姫曰く、魔族には効きにくい、らしい。
けれどきっと俺の回復魔法がそれを上回ったために、リリィを治療できたのだろう。
「おかしい、とは……?」
魔王様が何やら期待するような目で俺を見てきている。
これは一度やってみせた方が早いだろうな、と俺は魔王様を見ながらそう思う。
だから俺は魔王様に一つ、頼み事をすることにした。
「魔王様、俺の腕を切り落としてみてください―――」




