お脱ぎになっていただきます
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「やっぱ、でっかいなぁ……!」
俺は目の前に広がる巨大な城を見ながら、そう呟いた。
以前にも一度だけ城には来たことがあったのだが、そのときはドタバタしていたので城の全貌を見ることはできなかったのだ。
しかし、こうやって自分の意思で脚を運んでみると、その城の大きさ、というものが嫌でも分かる。
「そうかしら、普通お城っていったらこれくらいだと思うけれど……」
元王族であるアウラからしてみればこれくらいの建物は、確かに普通なのかもしれないが、一庶民である俺からしてみればちょっと大きさの桁が違う気がする。
「リリィのおうちといっしょくらいだぁー!」
……いやいや、どう贔屓目で見ても、俺の家なんかとは比べ物にならないだろ。
リリィの発言に少々うれしさを感じながら、俺たちは門番の人たちに、城の中に連れられていった。
「では、採寸しますのでお召し物をお脱ぎになっていただきます」
「……え?」
城の中へ入れた俺たちは、女性陣と男性陣、といっても男は俺しかいないのだが、その二つに分けられ、それぞれ別の部屋へと入ることになった。
部屋の中にはメイドさんという使用人の方たちがいたのだが、なんとその人たちが俺の服をどんどんと脱がしていっている。
恥ずかしさを感じるまもなく、下着以外の服を脱がされてしまった俺は、どんどんと採寸されていく自分の身体をただ呆然とみること以外、出来ることがなかった。
「終わりましたので、今から服を用意いたします。もうしばしお待ちください」
程なくして、メイドさんの内の一番偉そうな人が俺の前までやってきてそう教えてくれる。
「……り、了解です」
俺はメイドさんが用意してくれた、椅子に座り込み、先ほどまでの恥ずかしい出来事を一瞬でも早く忘れ去れるように、ひたすらに別のことばかりを考えていた。
「アウラ様たちはこちらです」
私たちは今、ネストとは違う部屋に連れてこられていた。
この人たちは私とトルエが奴隷である、ということを知らないのか、懇切丁寧に対応してくれる。
「……それにしても、そのお召し物は大変皆様方に、お似合いで美しく御座いますね」
私よりも明らかに年上そうなメイドが私たちの服を見ながらそう言ってきた。
「ネストが買ってきてくれたのーっ!!」
その言葉にいち早く、リリィが嬉しそうに服を見せびらかしながら応える。
「ネストさん、というのは一緒に城へと来られた殿方のことですよね?大変素晴らしい感性をお持ちなのでしょうね……」
「そう言ってくださると、ネストも喜ぶと思います」
かくいう私も、ネストが買ってきてくれたこの服は、贔屓目でなくとも、かなり私たち一人一人にとても合う一品だと思っていたので、そう言ってくれるのは素直に嬉しい。
ネストには恥ずかしくてつい、ひどいことを言っちゃった。
しかし、以前に冒険者の人たちから言われたのだが、男が奴隷を買って手を出さないのは、その奴隷のことを好きではないのではないか、と教えてもらった。
トルエはまだ年が十分でないから仕方ないにしても、年も同じくらいの私に手を出さないのは、ネストが本当に私のことが嫌いなのかもしれない、と思っていた矢先に、いきなりそんなお土産をくれたので、そうやってついひどいことを言うのも仕方ない、と思う……。
だけど、結局その夜も久しぶりに同じ部屋で泊まったのに、私には特に興味もないようにして、そのまま眠ってしまった。
私はそれが悔しくて、そして悲しくて、けどそれを誰にも気づかれたくなかったから、布団を顔に押し当てたまま眠った。
ふと、夜中に目が覚めてしまい、手を出されないのなら、自分からいってでも、と寝ぼけたままの頭でそう考えて、ネストのベッドに潜り込もうとしたのだが。そこには既に、トルエがネストの腕に抱かれて眠っているではないか。
その夜は、その二人を引き離すだけで終わってしまったのだが、結局どうしてそんなことになっていたのかは聞けずじまいで今も気になっている。
このパーティーが終わったら、あの夜のことを、聞いてみよう――。
私はメイドに採寸をされながら、そう思った。




