表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
167/181

あ、美味しい。

ギリギリ28日セーフ。

ブクマ評価ありがとうございます!!

「それにしてもヴァイスはどうしてこんなことを……?」


 とりあえず、大会で勝ち残った漆黒の救世主はヴァイスである可能性は高い。


 それは戦いのときの動き方なんかもそうだが、大会の通過組として漆黒の救世主に用意されていた部屋には誰もいなかったのだ。


 荷物も含めて全て、である。


 聞くところによると今朝がたまでは普通に黒マントを着て生活していたらしいので、大方、黒マントを着たままの生活が面倒になったのだろう。


 それで城の外に出たタイミングが偶然俺と一緒だったとしか考えようがない。


 まぁでも、あの時どうしていきなり攻撃をしかけてきたのかはよく分からないが……。


 初め俺はヴァイスの気配には全く気付いていなかった。


 攻撃されていなかったらそのままやり過ごすことだって出来ただろう。


 それなのにわざわざ攻撃をしかけてきたかと思うと、急にどこかへと行ってしまった。


 一体どういう思惑だったのだろうか。


 そしてどうして、漆黒の救世主に化けてまで武闘大会を勝ち進んだのだろうか。


「……」


 思い当たる節としては、ここには今三種族の王がいる。


 国王、魔王、獣王。


 その三人がいるこのタイミングでというのは、どうにも引っかかる。


 前回は国王様が一人で街にやってきていたから危機に陥ったものの、今回はたくさんの護衛がついている。


 そしてそれは他の二人の王様も同じだろう。


 さらに魔王様と獣王様はかなりの手練れと聞く。


 ヴァイスで太刀打ちできるかどうか聞かれれば、恐らく無理だろう。


 では一体何を狙っているのか、分からない。


「…………俺か?」


 適当にそんなことを言ってみるが、さすがにそれはないだろうと俺は頭を振る。


 しかしさっぱり分からない。


 これはどうするべきなのだろうか。


「国王様たちには伝えないほうが良いよな……?」


 俺は今日ヴァイスに会ったことを誰にも言ってない。


 治療してもらった聖女にも、ゴブリンにやられたなどと言って誤魔化しておいた。


 まぁその結果しばらく外出禁止です! と怒られたのだが……。


 どちらにせよ、今このことを誰かに伝えるのはまだ早い。


 そんなことを言って混乱を招くのはあまり良い手ではないだろう。


 まだ今の段階では、ヴァイスが本当に漆黒の救世主であるかも、可能性の中での話でしかないのだ。


 せっかくの三つの種族がこうして平和にやっている中で、問題は起こしたくない。


「……やっぱり黙っているか」


 結局そうすることに決めた俺は、まだ少しだけ痛む治療の跡をさすりながら部屋へ戻った。




「ほらネストさん、今日は大人しくしていてもらいますからね!」


 俺は今、ルナに引っ張られながら城の中を回っている。


 因みに護衛に行くのも許してもらえなかったので、渋々休みを貰った。


「はーい」


 俺の手を引いてずんずんと進むルナは異様にテンションが高い気がする。


 一体何をするつもりなのだろうか。


 しばらくすると一つの部屋の前まで連れてこられる。


 ルナに連れられてその部屋に入ると、何の部屋なのかは明らかだった。


 そこはキッチンだ。


 綺麗に整頓されたその部屋は、恐らく城で出される料理を作っているところなのだろうと容易に想像できる。


「それにしてもたくさんあるなぁ」


 見えるだけでも何十本と包丁や、その他の料理器具がある。


 中には初めて見るものまであり、どんな風に使うのか分からないものもあるほどだ。


「……それで、今日はここで何を?」


 突然こんなところに連れてきて、何をするつもりなのだろうか。


 まさか一緒に料理をするでもあるまいし。


「一緒に料理の練習をしようと思いまして!」


 そのまさかだった。


「お父様がそれ以外で包丁を持つのは許してくれなくて……」


 確かに以前俺はルナに料理を教えたことがあるが、まさか今更もう一度一緒に料理をする羽目になるとは。


 さてはルナ、危ないことはさせないというのは口実で、一緒に料理の練習をする機会を窺っていたな……!?


 しかしここまで来たらなんとやらだ。


 ルナが以前よりも美味しい料理を作れるように、頑張ってみるか。


 俺はひとしきり材料の揃った厨房を見渡しながら、食材を選んでいく。


 今回作るのは肉野菜炒めだ。


 これなら、ルナにとってもそこまで難しくはない。


 そして味付け次第で色々な応用もきくので便利だ。


 俺は早速ルナと一緒に、料理に取り掛かった。




 因みに、ルナが一人で作り上げた肉野菜炒めを国王様へ持っていくと、これから一人でもキッチンを使ってもいいという許可がおりた。


 これで次からは別に俺と一緒じゃなくていいはずだ。


 しかし、喜びながらルナにそう伝えると、どういうわけか不機嫌になり色々文句を言いながらどこかへ行ってしまった。


 一体どうしたというのだろうか。


 俺は自分で作った肉野菜炒めを頬張りながら、首を傾げた。


 あ、美味しい。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ