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眠れない夜

ブクマ評価感謝です。



 「……クソ、生意気」


 それは、一体どの程度なのだろうか。


 俺は一人、エスイックに言われた言葉を思い出しながら、暗みがかった廊下を歩いていた。


 いつもは沢山いるメイドさんも今日は珍しく誰もいない。


 きっと、もうすぐやってくるという獣王様やその他の人たちを出迎える用意でもしているのだろう。


 「……むぅ」


 やはり、今の時点であれこれと考えても仕方がない。


 実際に会ってから、そういうことは考えたほうが良さそうだ。


 俺は、誰もいない廊下を一人歩き続けた。 





 「あ、ご、ご主人様」


 「ん、ニア?」


 何故か俺の部屋から出てきたのは、気まずそうな顔を浮かべるニア。


 「何か用があった?」


 「い、いや何でも……?」


 「…………」


 あからさまに視線を隠すニアに、目を細める。


 「ん、それ、何?」


 「…………はい?」


 俺の視線はニアの腰の後ろに回された両手に向けられている。


 こちらからその全てが見えるわけではないが、何やら白いものが見え隠れしている。


 「だから、その白いやつって……」


 「…………えっ?」


 「それ……枕か?」


 ニアに近づいたとき、白いものの正体に何やら見覚えがあるような気がする。


 そう、それは枕だった。


 「そ、そんなわけないじゃないですかー」


 と言いつつも、ニアは後ずさりを始めていて、少しでも俺から離れようとしている。


 「…………あ」


 俺はニアの後ろのほう(、、、、、)へと視線を向けながら頓狂な声をあげてみる。


 「んっ?」


 案の定というべきか、ニアは何の疑問を抱くことなく、俺の視線を追う(、、、、、、、)


 「……?何もない、け、ど……あ」


 どうやらそこまでしてようやく俺の狙いに気付いたらしい。


 ニアの手にはやはり、枕が握られていた。


 「……こ、これは違うのよ?」


 「何が違うんだ?」


 ニアの今までの行動から考えてみると、きっとこの枕は普段俺が使っているものなのだろう。


 「……ご、ごめんなさい!」


 さすがに誤魔化しきれないと思ったのだろう。


 ニアは目に涙を浮かべながら、素直に謝ってきた。


 「……はぁ」


 俺は少しだけ目線の下にある頭をなでる。


 「っ」


 もしこんなところを誰かに見られてしまったりしたら、まるで俺が泣かせたみたいになってしまう。


 それは勘弁だ。


 だから俺は、ニアが少しでも早く泣き止んでくれるように、その頭をなで続けた。


 こっそりと、獣耳を撫でていたのは内緒だ。





 「あ、そういえばニア」


 「なにー?」


 すっかり調子を取り戻したニアが、俺のベッドに転がりながら返事をしてくる。


 「なんか、獣王様がこの城に来るらしいよ」


 「ふーん…………えっ!?」


 どうやらやはりニアにとっては衝撃的な一言だったのだろう。


 内容を理解するだけでも、相当な時間を要していた。


 「じ、獣王様!?」


 「あぁ、何でも人間と魔族と獣人で、同盟を結ぶらしいんだよね」


 「えええ!?」


 さらに、同盟のことを伝えると、驚きすぎてベッドから転げ落ちてしまった。


 「そ、それホント!?」


 「あ、あぁ」


 かと思えばいきなり詰め寄ってくるニアに俺は戸惑う。


 「そ、その同盟が結び終わったら、わ、私ってもうこのお城からもでていいの!?」


 「………えっと、そうなるかな」


 確かにニアにとって今もっとも重要なのはそれなのかもしれない。


 俺と一緒に城まで帰ってきてからは、他の皆が色々と外に遊びに行ってる中でずっと留守番していたニア。


 やはり、俺たちが気付けていなかっただけで、ニアは色々と我慢していたのだ。


 「一緒に外に行けるようになったら、どこか一緒に出掛けようか」


 「うん!」


 俺はニアの頭を撫でながら、絶対に同盟が成功したあとの未来を考えていた。






 「えっと、それで何で俺の枕を?」


 ニアはベッドの上で俺の枕に頭を押し当てている。


 それをベッドの横に立って見下ろしている最中だ。


 「は、発情期で、我慢できなくて……」


 「……あー」


 それを言われると俺にはどうすることもできない。


 事実ここ数日はリリィと共に、街まで自宅の掃除をするため、城を離れていたのだ。


 だからニアがどういう状態だったかも知らないし、それをダメだということも出来ない。


 「……はぁ」


 俺は、諦めのため息を吐いた。


 「っ……だめ、だった?」


 それを呆れからのため息だと勘違いしてしまったのか、ニアは枕から顔を離して俺を見上げてくる。


 「……いいよ」


 それをわざわざ指摘することもない。


 ただ、受け入れてあげればいいのだから。


 「じゃあ今日一緒に寝てもいいっ?」


 「…………はぁ」


 これは、諦めのため息。


 きっと今日は眠れない夜になりそうだ。

 

 

新作は、カクヨムに移行させていただきましたm(__)m」

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