綺麗なお姉さんしかいない。
ブクマ評価感謝です。
長くなりそうだったので途中で切りました><
キリが悪いので次回更新分と一気見することをオススメします。
「じゃあ俺はこれで」
俺はエスイックにそう言い残し、部屋の扉を通り抜ける。
先ほどの「ゴブリン」についての問いに対し、心当たりがあった俺は、特に何の気なしに「多分俺だと思う」と肯定したが、それを聞いたエスイックは何やら感慨深そうに頷いただけだった。
「……緊張した……」
俺の手に握られているトルエの手から、トルエの緊張が若干和らいだことが窺える。
トルエは元とは言え、貴族だった身だから、一般人の俺とはエスイックに感じるものが違うのだろう。
俺たちは部屋の外で待機していたらしいメイドさんに連れられて、王城から外に出たのだった。
「うーん、これからどうするか……」
俺は今、ブロセルと共にこれからの予定について考えていた。
「俺はひとまず武闘大会が始まるあたりまでは探すの手伝うよ」
「それは助かる」
しかし、そうは言ってもどこを探すかを絞らなければ、手のつけようがない。
「やっぱり、ギルドが一番いいか?」
俺は少し考えた末に、そう呟いた。
街にもギルドがあるように、もちろん都にだってギルドはある。
恐らくそこにはたくさんの冒険者なんかもいるはず。
そして人を探すには、ひとまずは人が多いところで探したほうが効率もいいだろう。
「たしかにそうだな」
俺の言葉にブロセルが同意したことで、俺たちの最初の予定が決まった。
「で、でっかいな……」
俺たちは今、都にあるギルドの目の前にまでやってきているが、やはり街と都は違うのか、まず外観の大きさが違う。
街でさえ大きいと思っていた俺にとってはもう驚くこと以外には何もできない。
というか今まで都に何回か来ているのにどうしてこのギルドに気がつかなかったのかが不思議だ。
「……こ、こんにちはー」
俺は少し遠慮がちにギルドの扉を開けた。
後ろにはトルエ、そしてそのまた後ろにブロセルという順でギルドに入るが、もちろんブロセルの頭には獣耳がバレないよう、バンダナを巻いている。
「……」
ギルド内からはそんな俺たちに対し不躾な視線が向けられるが、こういう時は絡まれる前に早く受付に向かったほうが良いかもしれない。
「……ぁ」
しかしここで一つ問題が発生する。
―――――受付に綺麗なお姉さんしかいない。
俺はその緊急事態に思わず戸惑ってしまう。
「あれ、ネストじゃねぇかい?」
「……え?」
ふとその時、隣から声をかけられる。
咄嗟のことでてっきり誰かに絡まれたのかと思い身構えたがよく見てみると、なんと以前『冒険者教室』でお世話になったデュード先生がそこに立っていた。
「あ、先生お久しぶりです」
俺は慌てて頭を下げて挨拶を済ませる。
「おいおい、もう冒険者教室は終わったんだから『先生』はやめてくれ」
「そ、そうですか?」
ではこれからはお言葉に甘えてデュードさんとでも呼ばせてもらおう。
「ん、それでネストはこんなところで何を……?」
デュードさんが俺の後ろの方に目をやりながら俺に聞いてくる。
トルエは『冒険者教室』で会っているはずだから、デュードさんが見ているのは必然的にブロセルになるはずだ。
「……デュードさんは『獣人』って苦手ですか?」
そこで俺は、そのことを確認するために小声でそう聞いてみた。
冒険者として名高いデュードさんならば、顔が広いだろうし人探しもだいぶ簡単になるかもしれないが、獣人に対して苦手意識があるならば、無理にお願いはできない。
「いや?俺は別に普通だが、それがどうした?」
しかし運がいい事にデュードさんから帰って来た答えは特に気にしない、ということだった。
その言葉を聞いた俺は、思い切ってデュードさんを頼ることにした。
「……実は今、とある獣人を探してまして、その獣人っていうのがこの人の妹なんです」
俺は視線でブロセルを示しながらそう説明する。
獣人の妹がいる、ということは特殊な事情でもない限り、その人も獣人ということは明らか。
デュードさんもそのことを察したのか、目を細めてブロセルのバンダナで隠された頭を見ている。
「できればデュードさんに探すのを手伝ってほしいんですが、どうですか……?」
「それは別に構わないが……」
俺はブロセルの妹探しを手伝ってくれるというデュードさんの言葉にホッと胸をなで下ろす。
「どこあたりを探すとかは決めているのか?」
そんな俺にデュードさんが聞いてくる。
「……できれば人が多いところ、ですかね」
俺は少し悩んだ末にそう呟く。
元はといえばギルドにやってきたのも人が多くて手がかりか何かがあるかもしれないと思ったからで、やはり探すなら人が多いところがいいはずだ。
「うーん……人が多いところ、ねぇ……」
俺のその言葉に、デュードさんは顎に手をやりながら考え込んでいる。
「……あ」
しばらく考えこんだ末に、デュードさんは何かを思いついたような声をあげた。
「何か良い所でもありましたか?」
思わず聞かずにはいられなかった俺は、すぐさま聞いてみる。
「う、うー……ん」
しかしデュードさんはどこか答えるのを渋っており、中々教えてくれない。
「お願いします」
俺は教えてもらえるようにデュードさんに頭を下げる。
「はぁ、仕方ない、か………」
そしてようやくデュードさんは教えてくれる気になったらしく、今まで答えるのを渋っていた言葉を口にしだした。
「いいか?人がたくさん集まる場所、それはな――――――」
「……は、はい」
俺は思わずごくり、と唾を飲み込んだ。
「――――――『奴隷競り』の会場だ」
その言葉に、少しだけ空気が冷えたような気がした。




