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聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。  作者: きなこ軍曹/半透めい
第三章 俺の回復魔法がどう見ても聖女の劣化版な件について。
101/181

相変わらずの木の棒

ブクマ評価感謝です。

設定を抜けば、これで100話到達です!

昨日の時点で祝100をしてくださった読者様方も

有難うございましたっ!!

これからも頑張らせていただきます!!


 「じゃあ、俺ちょっと周りのゴブリン倒してくるわー」


 「気をつけて行ってくるのよ?」


 「分かってるって」


 俺は心配そうに声を掛けてくるアウラに、手を振りながら返すと、再び歩き出した。





 どうしてこんなことをしているかと聞かれれば、ゴブリンが多く集まってきているせいで、馬車が動けなくなっているからである。


 「それにしても結構いるなぁ……」


 俺は目の前に群がるゴブリンを、ざっと目で数えてみると少なくとも五十匹くらいはいるみたいだ。


 「……はぁ」


 予想していた以上の数に思わずため息をついてしまうが、ゴブリンたちをどうにかしなければいけないのもまた事実。


 俺はもう一度目の前のゴブリンたちを見て、二度目のため息をつくと同時に、使い慣れたナイフを片手に駆け出したのだった。




 「……っ……」


 やはり数が数なだけに偶に攻撃を喰らってしまうこともあるが、これまた何時もの如く特に痛くもないので、軽く治療を済ませると、ゴブリンとの戦闘を再開する。


 「…………」


 俺はしばらくの間、淡々とゴブリンとの戦闘を続けていて一つだけ思うことがあった。


 それは、同じことをし続けているせいで、だんだんと戦闘が作業になっているのではないか、ということだ。


 ゴブリンたちには申し訳ないのだが、正直飽きてきてしまった。


 なんでもこのゴブリンの大群を放置していたら、馬車の進行が遅れてしまうということだけなく、近くの小さな村々を襲ってしまう可能性があるらしく、今回こうやって俺が戦っているのだが、これが如何せんつまらない。


 「んー……」


 挙げ句の果てには戦闘中であるというのによそ見をしてしまうまでになっている。


 ゴブリンとは言え、仮にもこうやって命を奪っているのだから、もっと真面目にやらなければいけないということは分かっているのだが、それでもこうずっと単純作業のようなものが続いていれば仕方ない、と思う。


 「……どうしようか」


 俺は何か今の状態を抜け出せるものがないものかと思い、辺りを見回す。


 「……あ」


 見回し始めてから間もなく、俺の視界に一本の木の棒が入った。


 「……よっと」


 ちょうどその時に迫ってきていたゴブリンの腕を軽くナイフでなぞり切り落とすと、俺は一度戦闘から抜け出し、その木の棒が落ちているところまで向かう。


 「……」


 その間にももちろんゴブリンは俺へと迫ってきているが、俺は気にせず、ゆっくりと自分の腕を木の棒へと伸ばす。


 『ブギャァァッッ!!』


 ちょうど俺の手が木の棒に触れるか触れないかというところで、俺の耳にゴブリンの叫び声が聞こえる。


 「……フッ……!」


 俺は叫び声のした後ろの方へと、振り返りざまに木の棒を振った。


 『グ、グガギャギャァァッッ!!』


 瞬間、あたりに響いたのはゴブリンの断末魔。


 「…………はぁ、やっぱり斬れる、よな……」


 俺は相変わらずの木の棒の切れ味に驚きつつ、どんどんと襲いかかってくるゴブリンに意識を向けたのだった―――。



―――――――――――――――――――――――――――――――



 「こ、国王様、これが今回の報告書です」


 「うむ」


 私は、部下の男から何時ものように報告書を受け取った。


 ただいつもと違ってその男が少し緊張していたような気がするのは、この報告書が原因なのだろうか。


 「で、では失礼します」


 部下の男は、私に一度頭を下げると、そのまま部屋を出て行ってしまった。


 私は手元にある報告書を見る。


 そして何時ものようにその報告書を一瞥していると、その中に興味深い報告書を見つけた。


 『都から街を結ぶ路において、ゴブリンの大量な斬殺死体が発見される。その数は五十以上にも及んでおり、何らかの事態が起こったと推測できる。


 また、その斬殺死体の切断部分がかの『屠殺魔女』と酷似している。しかし以前の事例とは異なり、ゴブリンの討伐部位である耳が全て切り取られていた。


 これがこの道を通りかかった一介の冒険者か、それとも『屠殺魔女』なのか。


 もし後者であった場合、知性を持ち、かつ冒険者として人間に紛れている可能性もありえる。


 不測の事態に備え、十分に警戒体制をとるべきである』


 報告書にはこのように書かれていた。


 「はぁ……」


 私はその報告書を机の上におくと、人知れず、甘い溜息を零したのだった――。


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